D-60:クルック・マイストロール
D-60:クルック・マイストロール
「あっ!来たわ!クルック兄、こっちよ!」
リンナが大きく手を振る。それに気がついて男は真っ直ぐにこっちに走ってきた。
「いやぁ、待たせちゃったね」
1m90㎝くらいある高身長。短く整えられた茶髪。開いているのか閉じているのかわからないくらいの糸目に古風な丸眼鏡。
元道場生のクルック・マイストロール。
道場内ではFの次に若かったが、持ち前のセンスとたくさんの努力によりそれなりに強かった。まあ、Fやその父のEには全く手も足も出なかったが。
彼がルワーユへ出たのは今から二年前、彼が21歳の時である。ルワーユの騎士になることを夢見ていた彼は、この通り夢を果たし、その上スピード出世で第二部隊の副隊長まで任されている。もし現代日本であればこのようなことは必ず裏で金の力が絡んでいるはずだが、勿論彼に限ってそんなことはなかった。
「もう向こうは大丈夫なのか?」
「うん。今、部下たちは宿舎で休んでいるよ。──それにしてもF、大きくなったねぇ」
「………お前がそう言っても説得力がない」
そう言ってFは2m級の巨体を見上げる。
「リンナもずいぶんべっぴんさんになったね。そろそろ縁談の時期かな?」
「もうっ!クルック兄ったらあ!冗談やめてよね」
ドゴオッ、と音をたてて、リンナの拳がベンチに穴を開ける。
Fもクルックも青ざめた顔で「ハハハ………」と笑った。
「………さて、行こっか。そろそろいかないと夜になってしまう」
「ああ………」
冷たい風がリンナの栗色の髪をあおいだ。三人の足取りはとてもゆっくり。
今日はクルックがフラッタに帰ってきたをきっかけに三人で墓参りをすることになっていた。死んだEや他の道場生たちの墓参り。前から予定はしていたが、どこでいつ集まるかは未定だった。それを含めて、朝、リンナがFに電話を掛けたのだ。
歩きながらクルックが言う。
「そういえばね、僕ら騎士団がフラッタに入ろうとしたときに、フラッタ全体を囲む大きな魔導障壁が張られていたんだ。そのせいで遅刻しちゃったんだけど………何か知らない?」
………。
「し、知らないなあ。な、な!リンナ?」
「わ、私も知らないわ!そんなすごいの張れる魔法使いなんてフラッタにいるのかしら?」
絶対、ドッペルだ。何を考えているのやら。
リンナがこそこそとFに耳打ちした。
「ドッペル、結局どうなの?」
「俺が家出る前もちっちゃいままだった。一応、家から出るなと置き手紙を残したし、多分大丈夫だ」
「ドッペル?それは誰?」
二人のこそこそ話もすぐ横の大男には無駄だったようで、ただのおしゃべりに参加するような気軽さでクルックが話に入ってきた。
仕方がないので、Fとリンナは簡単にドッペルについて話した。とはいえ、あまり話せることはない。見た目はFとそっくりだが、目の色が青いこと。魔法が達者なこと。覗きが趣味であること。「あっはは」や「クスッ」が目立つこと。等々。
一応、自称ドッペルゲンガーであることや魔力を吸いすぎると縮むことは伏せておいた。
「へぇ、面白そうな子だなあ。しかし驚いた。本当にFにそっくりなの?」
「ええ、後ろ姿だけだと判断出来ないわ」
クルックはますます興味深いというように頷き、声を大にして話す。
「世間は狭いとはよく言うけれど、これ程とはね。ほら、世の中には同じ顔の人が三人いるって言うでしょ?僕もね、Fとそっくりな人を知っているよ」
え?
「というか、その人、僕の上司なんだ。僕ら第二部隊を率いるゲンゲル隊長。話を聞く限り、そのドッペルくんよりも隊長の方がFにそっくりだよ。隊長は目の色もFと同じだから」
何か冷たいものが、すっ、と抜けていった。
何だかとんでもないことを聞いたような気がしたのだ。
Fは最も初めのドッペルゲンガー騒ぎのことを思い出した。
いつもふざけているドッペルがやけに真剣だったあの時のこと。確かあの時、ドッペルはそいつのことを敵と表現したのだ。
まさか、そいつが──?
「ハハハ、そんなに怯えることじゃないよ。確かに変わった人だけれど、一応は隊長を勤めているんだ。部下からは『ちっさい隊長』と親しまれているんだから。どうせ当分はフラッタにいることになるだろうから、すぐ会えるよ」
わかっている、わかってはいる。
別にそいつが悪いやつと決まったわけではないということを。
しかし、何だ?この胸騒ぎは。
得たいの知れない何かが蠢いている、そんな気がしてならない………
こんにちは。ななるです。
もう12月になりました。
とてもテンションが上がっております!
このシーズンは行事が楽しいですから、うきうきです!
そして、『うちドッ』もいつのまにか60話。
ご愛読ありがとうございます!
これからも張り切って頑張ります!
次回があれば、またお会いしましょう!




