D-58:ファーストコンタクト
D-58:ファーストコンタクト
急がなくちゃ。
リンナは群がる人をかき分けて走っていた。
先程のドレスは脱ぎ、いつもの短いパンツと軽いジャケットに着替えた。
目はそのまま、というかどうしようもない。
かんなは呼べば出てくる程度で他人から見えないというのだから気にする必要もないだろう。
結構抜け出すのに時間がかかってしまった。
早くFに合流しないと。
「きゃあっ」
曲がり角で人と衝突してしまった。
「ご、ごめんなさい。大丈夫?」
ぶつかったその人は金のツインテールに緑の瞳、白いワンピースが幼い姿によく似合う──例の彼女だった。
「あ、あなたは──!」
「まあ、偶然!リンナさんですよね!」
彼女はリンナだと気づいたとたんに目を輝かせた。
「え、ええ。そうだけど?」
「私、ベルっていいます。16歳です!Fとは友達で………私、あなたの大ファンなんです!」
といって、凄い勢いでベルはリンナの手を両手で握った。
圧が凄い………
「さっきのスピーチ聞いてました!もう本当に素晴らしくて………大ファンです!!」
突然のことにリンナの脳は処理しきれない。
「そうだ!今お暇ですか?もしよかったら一緒にカフェに行きましょう!色々とお話ししたいですし──」
「ま、待って!その………気持ちは嬉しいのだけど、ごめんなさい。今Fを探しているの。だからカフェはまた今度ね」
「そうですか………それなら仕方ないですね。Fならさっきあっちの方で会いました。まだいると思います」
と言って、ベルは“あっちの方”を指差した。
「ありがとう。じゃあね」
リンナはベルの指さした方に進もうとしたが、一旦止まって、もう一度ベルに向き直った。
「ねぇ、連絡先を交換しましょ?私もあなたと色々話してみたくて」
「え?」と言ってベルは目を見開いて「いいんですか?」と嬉しそうに聞いた。
「もちろん。それから私のことは“リンナ”でいいわ。堅苦しい敬語も使わなくていい。同い年でしょ?友達でいいじゃない」
そうして、ベルと連絡先を交換したリンナは真っ直ぐにFのもとへと向かった。
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広場にて。
「──変だな。ここで待っとけばリンナとクルックが出てくると思っていたんだが」
Fは空っぽになったステージを見て言う。
エンは大きく欠伸をしながら、
「多分裏口から出たんだろ。関係者以外立ち入り禁止って札があった」
なるほど。
「さて、オレはそろそろ帰ろうかな。──お前はリンナと二人でデートだろ?」
「いや、クルックを入れて三人だ」
Fがそう答えると、エンは訝しげな表情でFを見る。
「な、なんだ?変なことを言ったか?」
「ふーん、そうか………いや、今回は殴らないんだな、と思っただけだ」
どういうことだ?エンは少しにやついている。
「ま、いいや。じゃあな、F。終わったらクルック兄さんに『あまやどり』に来るように言っといてくれ」
「わかった──は?クルック兄さん?」
いや、まさか。クルックに弟がいたなんて聞いたことがない。
「おい、エン!どういうことだ?」
聞こえないのか、エンは振り向かずそのまま行ってしまった。
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広場、西のはずれ。人気のない暗い木陰。
「──はい。リンナ・C・フラッタとの接触、指示通り終えました。特に問題はありません」
『………』
電話から漏れる、相手の低い低い声。
「………はい。計画に支障はありません。お任せください」
相手の凍えるような冷たい声は最後に確かにこう言った。
「──抜かるなよ、リングベル。」
こんにちは。ななるです。
オム編もそろそろ半分を越えます。
今回では初めてリンナとベルが出会いましたね!
初のヒロイン鉢合わせでしたが、なにやら不穏な感じ………今の時点で読者の皆様はどちらがお好みなのでしょうか?(そもそもヒロインとして認知されているのでしょうか………)
では、次回があれば、またお会いしましょう!




