D-57:蝶と立ちブリッジ
D-57:蝶と立ちブリッジ
返還式は無事終わり、人々はステージから散っていった。
Fはひとり残った彼女に声をかけた。
「ベル、お前も来てたのか」
「あ、F!Fも来てたんだ──もうっ!こういうときこそ誘ってくれたら良かったのに」
「あ、──悪い………」
ポリポリと頬を書いて顔を背ける。
ベルはむー、と頬を膨らませた。
別に忘れていたわけではないのだ。ただ、この後リンナやクルックと合流することを考えると誘うわけにはいかなかった。
おいてけぼりのエンがFに小声で聞いた。
「おいおい誰だこの子!?すげぇ可愛いじゃん!お前、リンナを差し置いてまさかこの子と──」
「ふーーーーんっ!」
鮮やかな右ストレート。左頬に強烈な一撃を食らったエンは軽く2メートルはぶっ飛んだ。
舞い降りた一瞬の沈黙の中、響くはFの荒い息だけ。
「だから、お前はっ!もういい黙ってろ!」
なぜ殴られたかよくわからないエンだったが、取り敢えず立ち上がりベルに自己紹介した。こういう切り替えの早さが彼の商売人としての売りである。
「オレはエン。サトウ・エンだ。問題屋の隣で家具屋をやってる」
そういって笑って右手を差し出した。
ベルはその手を取り微笑み返した。
「私はベル。Fの友達なの。よろしく──きゃっ!」
急にベルはエンの手を振りほどき二歩下がった。
「おい、何かしたのか?」Fがエンを睨む。
「し、してねぇよ、何も!」誤解だ、と両手を振るエン。
「ち、違うの!別にあなたは何も悪くない。ちょっと手を握った時に寒気がしただけ………」
おそらくベルはエンをフォローしたつもりだったのだろうが、エンはその言葉を聞いて結構傷ついたようだ。手を握って寒気がしたなんて、普通に考えて辛い。
しかしベルは普通じゃなかった。
右手を左手で抑え震えている。息が荒い。顔は霊でも見たかのように青ざめている。一体全体どうしたと言うのだ。
「じゃ、じゃあ、私はこれで………またね」
そう言ってベルはそそくさと行ってしまった。
「そんなにオレの手が気持ち悪かったのかな」
「いや………どうだろう………」
否定はできない。
「ま、悪いやつじゃないから、またエンのとこにつれていくよ」
「おう。待ってるぜ──うやぁあっ!」
瞬間、エンはまさかの立ちブリッジ。
エンが何かを避けようと体を曲げたのだ。
それはヒラヒラと優雅に宙を舞う──蝶だ。
「ぐぎぎ………行ったか?」
先程の蝶はそのまま次の花を求めて通りすぎていった。
「行ったぞ」
へちゃあー、とエンがその場で崩れるように横になった。
何故か安堵の表情。
「いやあ、昔から蝶が苦手なんだ。見るだけでゾクッとするというか………とにかく、生理的にうけつけられない」
「蝶なんてフラッタだと冬以外はずっと翔んでるだろ?」
「そうだけど………無理なんだよなあ」
ほお、面白いことを聞いた。
今度驚かせてみよう。
エンはゆっくりと立ち上がり、背中をパンパンとはたいた。
こんにちは。ななるです。
この前のハロウィン回でエンさんが冬を喜んでいた理由がこれです。蝶。自分は見るのはいいんですけれど、近づかれると確かに怖いです。
ちなみに、ドッペルが冬を喜んでいたのはただ単純に冬が好きだからです。雪も好きだし、クリスマスやお正月など行事が多いことも好きだし、料理も暖かくておいしい。オマケに毛布はモフモフ!なんと素晴らしい季節なんでしょう!(作者も冬狂信者です)
次回があれば、またお会いしましょう!




