D-56:祭りの名
D-56:祭りの名
10時ちょっと前。
「大変長らくお待たせいたしました。準備が整いましたので、ステージ中央にご注目ください」
ニカがそう言うと、真っ赤なドレス姿のリンナがゆっくりとステージに現れた。と同時に、聴衆がどよめいた。
華々しい深紅のドレスは、よくリンナに似合っていた。
滅多にないドレス姿のリンナに聴衆がどよめいた──訳ではない。
エンも俺に聞いてきた。
「おい、何でリンナの左目が青くなってんだよ!?」
そう。彼女の左の青い瞳。それを見て人々はどよめいているのだ。
「何でリンナ様が?」
「え、え?リンナちゃんどうして?」
フラッタでは大きなこと。まだ瞳の色を気にする人は少なくない。
おそらくあの時、ブルーハイヒールに触れたことが大きく関係していると思うが、それをここで説明するわけにもいかない。
仕方がないから「イメチェン」とだけ答えておいた。
しかし、周りのざわめきはおさめようがない。
リンナもそれに気がついているようで苦い顔をしていた。
すると──
「まあっ!!なんて素敵なのっ!私も次はブルーのカラーレンズ使おっと!」
妙に明るい、よく響く声が聴衆側から聞こえてきた。
声の主は、金のツインテールに緑の双眼──「ベル!?」
ベルの声のおかげか人々も反応を少しずつ変えていった。
「確かに……瞳の色なんて結局呪いじゃなかったものね。私も色をつけてみようかしら」
「リンナ様がするならワシも!」
「リンナちゃん、流石ファッションリーダー!」
ステージのリンナも安堵の表情で式を続けた。
マイクに向かって話す。
「──このブルーハイヒールは、およそ200年前にルワーユとフラッタの強い結び付きの証として、ルワーユ王からフラッタ家に寄贈されたものです。近年、ルワーユの研究によりブルーハイヒール内に秘められた力があるのではないかと推測されています。それを調べるため一度石を王に返還し、王はフラッタに彼ら白狼騎士団第二部隊を派遣して下さいました。白狼騎士団はフラッタ全土の警備、並びに皆さんの安全を約束してくれます。さあ、彼らに盛大な拍手をっ!」
流石リンナだ。堂々としている。まあ、少し言葉が似合わなくて変だけど。
そのままリンナは白い手袋をしたままブルーハイヒールを、既にステージにのぼっていた白狼騎士団第二部隊隊長──ではなく、副隊長のクルックに手渡した。
クルックはそれを部下に預け、聴衆に軽く会釈をし、マイクに声を通した。
「えー、第二部隊副隊長のクルック・マイストロールです。隊長のゲンゲルは只今急な用事により席を外しております故、代わりに僕が──」
「おいクルック!何かしこまってんだよ!」
「似合わないぞ!」
「お帰りなさい!立派になったねぇ!」
民衆が自由に叫ぶ。
ステージ上のお堅い空気は一気にほどけ、彼の部下たちにも笑みが見えた。
そう、忘れてはならない。
あくまでも今日の祭りは「クルックおかえりな祭」なのだということを。
こんにちは。ななるです。
今年もアレの季節が来ましたね……
どさくさに紛れて自分も感想欲しさに応募してみました。
今回はどんなのが賞に入るでしょうか?
(勿論、他人事)
次回があれば、またお会いしましょう!




