D-51:笑い方
D-51:笑い方
取り敢えずフラッタメインストリートに出よう。
そう思ってFが左に足を進め出したとき──ガチャリ。
「おお、F!どこかいくのか?」
タイミング良くエンが出てきた。
「ああ。リンナに呼ばれて広場を観にな。」
「だったら一緒に行こうぜ?オレも折角の祭りだから外に出ようと思ってたんだ。──ところでF、お前そっちから行くんだな。ドラゴンロードを通るよりもメインストリートの方が賑やかなのに」
ん?
「まあ、いいか。別に何か行きたいところがある訳じゃないしな。行こーぜ、F」
「そ、そうだなッ!ドラゴンロードの方が人少なくて通りやすいしなッ!」
道を間違えていたことは黙っておくことにしよう。
──────────────
ドラゴンロードに出る直前、エンが急に立ち止まった。
「どうした。忘れ物か?」
「いや、知らないのか?バルスチアさん、急にいなくなっちゃったんだぜ?」
「ああ……」
そこはバルスチア・ジュエリーの前だった。
黒い建物だけが、寂しく残されている。
これはクレアが教えてくれたのだが、予定ではバルスチアはフラッタ家に捕らえられるはずだったらしい。そのため誰も逃がさないように一階にドッペルが魔法の罠を仕掛けていたはずなのだが、後から確認したところなんの痕跡も残っていなかった。飛び交った銃弾の痕も、割れたガラスも、商品の宝石も、集められていた美術品も、全部。彼女や黒服たちがどこに行ったのか、今となっては調べようがない。
ただ、一つだけ残っていたものがあった。
『次の宵を待て──怪盗アレク』
そう書かれた黒いカードが三階に置いてあったのだ。
誰が置いたのか、それも分からない。
ちなみにあの夜、結構な数の銃声が鳴り響いたはずだが、徒然町民並びにドラゴンロードの住民には何も聞こえなかったらしい。クレアも聞こえなかったという。一方、二階で待機していたリンナが聞こえていたことを考えると、建物に仕掛けがあったか、ドッペルが何かやってたかだが──そんなことはもうどうでもいいか。
エンは興味が無くなったのか「行こーぜ」と言って歩き出した。
「そういえば、エン。折角の祭りなのにリリィと一緒じゃなくてもいいのか?」
「う、おまっ──そりゃあ、オレだってリリィと行きたいよ。でも、駄目だ」
?
「あいつは外に出たがらないんだ。特にこういう日はな」
諦めたように笑うエンを見て、これ以上は触れてはいけないことなのだろう、と察した。
「──それよりよお、Fくぅん?」
「なんだ、気持ち悪い声だして」
「気持ち悪い言うな!──お前はどうなんだよ。返還式終わったらリンナとデートか?」
ニマニマ笑ってやがる。顔がうるさい。
「デートじゃねぇし、俺とリンナはそういう関係じゃねえよ。──今はそれどころじゃねえし……」
「破局!?」
「だからそうじゃねえってば!」
くそ、次は叩き切ってやる。
Fは大きくため息をついた。なんだか既に疲れてしまった。
「……なあ。お前とリリィはいつ頃知り合ったんだ?」
「おっ。オレとリリィの運命の出会いについて知りたいのか?仕方ないなあ──」
「やっぱいい」
なんか面倒くさそうな上に、妄想が入ってそう。
エンはFの様子を察してか、ペラペラとよく回る口を止めていつもよりも物静かなトーンで話し出した。
「まあ、何があったか知らねぇけどさ。幼馴染みだからってお互いのことなんでも知ってるなんて考えるもんじゃねえよ。どんなに親しくても秘密にしなきゃいけないことなんていっぱいあるんだからな」
「……何でそんな話になる?」
「別に。ただ、お前のその顔は誰かのことを悩んでいるようにしか見えなかったからな」
そうか。そんなに分かりやすかったか。
「お前はあるのか?秘密」
「そりゃあ、ある。お前にもリリィにも言えない秘密だ」
「ハハッ、なんだよ、それ」
胸を張って秘密があることを宣言する馬鹿は、どこを探しても多分こいつぐらいだろう。
なんだか悩むのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
「お前の秘密なんて、どうせ下らないだろ?」
「いいや?聞いたらビックリするぜ?」
ああ、もう少しで広場につく。
俺は今日はどうやってリンナと笑おうか、そればかりを考えていた。
こんにちは。ななるです。
だんだん秋っぽくなってきました。
秋刀魚美味しい!
秋といえば読書の秋!ということでバンバン投稿していきたいと思います!思ってます、ええ……多分……。
次回があれば、またお会いしましょう!




