D-41:バルスチア・ジュエリーにて ③
D-41:バルスチア・ジュエリーにて ③
三階。ワープゾーンを抜けてそのドアを開けたとき、俺は言葉を失って立ち止まり、ドッペルは「プフっ」とふきだした。
窓一つ無い、黒い壁に囲まれた部屋。その真ん中にポツンと一つだけショーケースが置いてあった。
「シンプル イズ ベストだね──ふふっ」
何が面白いのか、ドッペルは腹を抱えて笑いだした。
コルネは静かに説明を始めた。
「ここは普段、社長のコレクションルームとしてまるで展覧会のように絵や彫刻などの美術品や珍しい宝石などが並べられています。ですが、ここ数日は怪盗に他のものまで盗まれないように“青い牙”だけを残しそれ以外は保管室に隠しております。ですから、こんなシュールな──ふふっ──失礼。こんな形となっています」
ああ、駄目だ。こいつもドッペルと同じだ。
「是非近くに行って“青い牙”をご覧になって下さい。この前初めて見たときは感動しました。今まで沢山の種類の宝石を見てきましたが、あれほど美しいものは他に見たことがありません」
へぇ、そんなに。
俺とドッペルは勧められるがまま、そのショーケースの元まで進んだ。
やはりサファイアではなかった。
写真で見た通り、ところどころが七色に輝いている。
その青はサファイアより“青い”。
昔一度リンナにサファイアを見せてもらったことがあるが、こちらの方が明らかに“青い”。
言葉を並べれば並べるほどわからなくなるが、これが放つこの色はそれこそ本能的に“very blue”と感じさせてくる。
生き物の概念に直接刻み込んでくるような存在感。
妙に静かだと思ってドッペルを見るともう笑っていなかった。
それどころか何を考えているのか全くわからない、完全なる無表情だった。
「どうした?」と聞くと、ドッペルは我に帰ったのかハッとして、そのあと笑顔で「ん?」と逆に聞き返してきた。
「……お前、それで誤魔化せると思うなよ」
前と同じ手はくわない。
そう言うとドッペルはそろー、と目をゆっくりとそらし、
「コルネさん、このショーケースはどれくらい頑丈?」
逃げやがった。
「社長曰く、『私が乗っても壊れなかった』と」
ホオー、頑丈ソーダナー。
「案内はここで終わり?」
「いえ、最後に三階の保管室が。よろしければ進みますが」
よろしい。
──────────────
注意しないと気付かないくらい、そのドアは周りと同化していた。
入ると前に一つ、右に一つ、合計二つのドアが出現。
「前のドアは四階へ通じるワープゾーンへの扉です。保管室はこちら」
三階保管室はたいして二階と変わらなかった。
敢えて言うなら、少し狭いことと絵などの美術品があったことくらい。
正直、どうでもいい。
三階から一階に戻るとき、ふと気になったので聞いてみた。
「ここはさっき俺たちが上がってくるときに使ったワープゾーンだが、もう一つ無いのか?四階へ通じるの以外で」
一階、二階と違い一般人のためのワープゾーンは一つしか用意されていない。
「はい。三階には二階に通じるワープゾーンがありません。上がってくるときは一階からでも二階からでも必ずこのワープゾーンへ出ますが、このワープゾーンに再び乗ると一階に着くのみです」
ふーむ、ちょっと不便だ。
かといってどうしようもないので黙っておく。
─────────────
一階。入り口にて。
「では案内はすべて終わりました。私たち従業員は例の日は社長の御達しでお休みを頂いているので、後は頼みますよ。必ず、怪盗をひっつかまえて下さいね!」
コルネは俺の手をとりブンブンと上下に振る。
圧が凄い。
バルスチア・ジュエリーを後にした俺たちはそのまま家に帰った。
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約束の日。
前の日もアレクについてドッペルと手分けして調べたが手がかりなし。
仕方がないので朝からバルスチア・ジュエリー三階で張り込むことにした。
さて、どうなることやら。
こんにちは。ななるです。
いろいろ言ってきましたが、結局文字通り“長編”になりそうです……
さて、次回。怪盗アレクの正体。
次回があれば、またお会いしましょう!




