D-35:家出の終わり
D-35:家出の終わり
「お前可愛いなあ!」
……どうか神様、私の幼なじみがショタコンではありませんように!
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さて、聞くことは聞いておかないと。
「あなたのことを聞かせてくれる?あなたは誰で、何処から来たのか、とか」
これはチャンスよ!もしこの子がドッペルなら、やつの正体に繋がる何かを掴めるかもしれない。
「ボクは……わからない。名前も無いし、何処から来たのかもわからない」
少年は俯いて続けた。
「ボクが生まれたすぐ後に父さんも母さんも死んで、おばさんに引き取られて、いつも働いていたんだ。名前もつけてもらえなかった」
俯いてはいるが、別に悲しそうというわけではなかった。
ただ、淡々と事を述べているだけ。
「……だから、何もわからない」
少年は最後にそう付け加えて黙ってしまった。
この情報量では、この子がドッペルなのかどうか判断しようが無い。
服はドッペルのだけど、それだけで決めつけるには他の違和感が大きすぎる。
私がFの方を見ると、Fも私の方を見ていた。
『どうする?』と目で送ると、Fはうーん、と考えて、少年の方を向いてこう言った。
「名前が無いなら丁度いい!新しく名前をつけてやるよ。そうだな、えーと……“G”とか?」
“G”はさすがにちょっと……触角が長く、黒光りするアレを思い浮かべてしまう──ズキンっ。
胸の奥深くが鈍く騒ぐ。
急に手足を何かに絡みとられたかのようなか感覚。
動けない。体が私の意思で動かない。
意識がだんだん体内へと導かれる。
そうして、ほぼ一瞬で、全感覚とのリンクが切れた。
次の瞬間、私の口から私の意思ではない言葉が発せられた。
「──“かむい”です!その子の名前は、“かむい”です!」
叫ぶように唱えられた言葉。
最後の音の響きが完全に失われるのと同時に、私が私にストン、とはまった気がした。
動く、意思のままに体が。
一体何だったんだろう──はっ。
Fと少年がぽかんと私の方を見ている。
何か言い訳をしなければ。
しかし、私が言い訳をするよりも先に、Fは何かに納得したようで、
「かむい……うん。よし。お前は今日から“かむい”だ。よろしくな!」
と、少年の頭をわしゃわしゃしながら言った。
少年はまだよくわかっていないようで、ぼんやりとしていたが、本能的にというか何というか、取り敢えずコクッと頷いたのだった。
「さぁ、そうと決まれば外に行こう!俺と一緒に外で遊ぼう!」
赤い瞳をキラキラと輝かせて、Fがかむいに手をさしだす。
かむいは最初、Fの様子をうかがうようにFの手と顔を交互に見ていたが、やがて全てを理解したのか「うん!」と今日一番の明るい笑顔でその手をとった。
まぶしい……!なんだなんだ、この問題屋がこんなに眩しくなるなんて。
いや、──「待って!」
「どうした、リンナ?心配しなくたってお前も一緒に連れていくぞ?」
そうじゃなくて、
「遊びにいくのは問題無いけど、服よ、服。かむいの服、そのままじゃ動きにくいわ」
ぶかぶかのドッペルの服では走ってもすぐにこけてしまうだろう。
「だから先に買いに行かないと──」
「買ってきたっ!」
早っ!
ハァハァと息を切らすF。その手にはちゃんと服屋のロゴ入り紙袋が握られていた。
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その後は特に何事もなく一日が過ぎた。Fとかむいは本当の兄弟以上に打ち解けていたし、とても楽しそうだった。
私のなかで、もうかむいがドッペルかどうかなんて、いつの間にかどうでもよくなっていた。
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その日の晩。
かむいはソファで寝ることとなった。
ドッペルの部屋は空いていたが、勝手に使うのはやっぱり悪いだろう。
ソファに横になったかむいにFが布団をかける。
うとうとしながら、かむいが言った。
「ねぇ……あしたも……あそんで……くれ、る?」
その時、Fがどんな顔をしたのか私からは見えなかった。
「……はは……何言ってんだよ。“明日”だけじゃなくて、“これから毎日”、だろ?」
「うん。約束だよ?」かむいはゆっくりと小指を出す。
「ああ、約束だ」
Fも小指を出したが、二人の小指が絡むことはなかった。
かむいが力尽きて寝てしまったのだ。
Fが音をたてないように立ち上がって、言った。
「──さぁ、俺たちも寝よう、リンナ」
もしかしたら、この時すでにFにはわかっていたのかもしれない。
リビングの明かりを消すとき、Fは確かに泣いていた。
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朝が来た。
一目散に支度をして一階に駆け降りた。
「やぁ、リンナ。おはよう」
ドッペルだ。ドッペルが朝食を食べている。
「あっはは。何、口をパクパクさせているんだよ。幽霊でも見たの?」
ケラケラと笑うドッペルを見ていると何だか腹が立ってきた。
「だって、あんた──」
「リンナ」
台所にいるFに言葉を遮られた。
Fはまるで「言うな」とでも言うように首を振っている。
ドッペルはそれに気づかないようで、話を続けた。
「昨日は迷惑かけたね。起きてみたらびっくりだよ。一日中寝ていたんだって!?まぁ、そんなに時間があったらベッドまで運んでくれたら良かったのに。あっ、もう魔緘石は禁止だからね?」
ドッペルは一日中寝ていた、ということになっているらしい。
やはり、かむいはドッペルなのだろうか?
一方、Fはいつもと変わらない。いたって普通だ。
「リンナも早くこっち来て食べろよ」
そう言われたので、私も朝食をとることにした。
焼きたてトーストと目玉焼き。おいしい。
私は食べながら二人の様子を見ていた。
「F、俺がいない間にリンナと何してたの?」
「バァーカっ」
うん、いつも通りだ。
私は牛乳を一気に飲み干して、二人に言った。
「私、今日帰って、ちゃんとパパと仲直りしてくるわ」
今回の家出は、これで幕引きとしよう。
こんにちは。ななるです。
夏祭りの季節ですね。
皆さんはかき氷食べますか?個人的にはレモンとかブルーハワイ(青いの)とかが一番好きです。でも、年下の前だと少し格好つけて「抹茶で。」ていってしまうんですよね。普段決して食べないくせに。
と、友人に言ったら「抹茶の何処がかっこいいんだ」と真顔で聞かれました。確かに……
さて、次回。次回からちょっとした長編に入ります。
次回があれば、またお会いしましょう!




