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D-33:魔緘石



D-33:魔緘石(マイスタイト)



 ホカホカ炊きたての白米。一粒一粒が宝石のように輝いている。その隣には、ゆるりと白い湯気をあげ、静かに、しかし確かな存在感を持つ味噌汁。今日のは小松菜入りだ。


そしてメインディッシュ──GYOZA!!どこかの地方では餃子を米と一緒には食べないと聞いたことがあるが、そんなことは知らない。最っ高の組み合わせを誰に邪魔させるものですか!!


さて──


「いっただっきまぁ───」


「待て。何で当然のようにここにいるんだよ、リンナ?」


時刻は午後7時。

晩ごはんの時間に私は問題屋のリビングで堂々と座っていた。


─────────────


「んーっ!おいしーっ!さっすがFね!この味噌汁のセンチメンタルかつ家庭的な味、美味!」


“センチメンタル”の意味は知らないけれど。


「あっはは。リンナがいると騒がしいね」


普段リンナが昼ごはんを食べに来ることはよくあることだから、食器等は困らない。


問題は“夜に来た”ことであり、そういうときは大抵──


「はぁ、またドルトンさんと喧嘩したのか……」


「ギクッ」


「喧嘩と言うよりは、一方的にリンナがドルトンさんに怒ってたみたいだね」


「何で知ってんのよ!」


ドッペルがニヤリと笑って、例の監視用魔方陣(覗き道具)のモニターを出す。「暇潰しに見てた」


この変態魔法使いめっ!


リンナへの追及は尚も続く。


「今度は何を怒ってたんだよ。『太ったな』とか言われたのか?」


「言われてないわよ!」

確かに肉付きが気になり出したけれども。


はぁ……とため息をつき、リンナは意を決する。


「……そうよ。私が一方的に怒って出てきたの。──だって!パパったら、いい見合い話がある、て言うのよ!私を政治用の道具だとでも思ってるのかしら。──自分の恋愛くらい、自分でどうにかするんだから……」


湿っぽくなった空気を変えようとFが冗談を言ったのだが、これが不味かった。


「へぇ。で、その見合い相手というのは、どこのジャングルのゴリラなんだ?」


瞬間、光の速さでリンナがFに飛び掛かる。

袈裟固(けさがため)逆十字絞(ぎゃくじゅうじじめ)腕緘(うでがらみ)……とテンポよく技を決めていく。


「イデデデデデ……ギブっ……ギブだからあっ!」


「あっはは。リンナがいると本当に賑やかだな」


────────────


騒がしい夕食が終わり……


「──で、今日は泊まっていくのか?」


「え、いいの!?」


「いいの?ってお前、そんだけ荷物を持ってきておいて白々しいな」


一週間分の荷物は余裕に入りそうなスーツケース持参のリンナである。


「まぁ、いいから──ドッペル、二階のお前の部屋の隣─ああそうだ、あの部屋、リンナに貸すからな?」


「はーい」とドッペルは適当に返事をする。


ドッペルは今、テレビに夢中だ。


「何を見てるんだ?」


ドッペルが無言で、音量をあげる。


『──見てください!これが今回の探窟で見つかった魔緘石(マイスタイト)です!総勢72人という過去最大規模で挑んだ今回の探窟はこれだけでも大成功と言えるでしょう。発見されたのは“海”内部のレギリア付近。直径3メートル以上、重さ──』


「いよいよ本気か……」


ドッペルがボソッと呟いたのはFには聞こえなかったようで


魔緘石(マイスタイト)て何だ?」


「あんた、そんなことも知らないの?魔緘石っていうのはね──」


「『ヒトに神を忘れさせた原因。全ての元凶。そして──この世界(最も大きい嘘)の燃料』」


感情の無い、無機質な声。

その二つの青い瞳はどこか遠くを見つめたまま、声だけを漏らす。


「──でも、そんなことすらも皆知らない。

知らないうちに使っている。


最初はただの()()()()()()()石だった。


しかしある時、それは別の方法で使われ出した。


魔道具に入れ始めたんだ。実際間違ってはいなかった。そのままでは扱いにくい魔力を安定させ、誰でも使いやすくすることに成功したんだ。


このテレビだって、電話だってそうだ。元々は“魔法具”だの“魔道具”だのとしか呼ばれなかったのに、今では新しく名前がつくものがどんどん増えている。どんどんヒトの生活にこびりついていく。


それの果てが何かを知らないで。





…………なぁんてさっ!判ったかい?要するに、『魔力を吸いとる石』であり、『魔力を安定させるために魔道具に使われる石』なのさ」


急にいつものようなおどけた様子に戻ったドッペル。


一体なんだったんだ?


「ふふふ……私、良いことを思いついたわ!」


と言いながら、リンナがドッペルに近づく。


「ドッペル、後ろを向いて」


こう?と素直に従った次の瞬間──ガシッ。


「ひゃあっ……!な、何を……んあっ、ちょっ、くぅ……」


リンナがドッペルの首を掴み、そしてドッペルがフニャリとその場に崩れ落ちていく。


リンナの掴んでいる方の手が光った。


「リ、リンナ、いったいなにょお……」


ドッペルは『何を』と言いたかったのだろう、力が入らないのか、うまくしゃべれないらしい。


「ふふふ……ジャーン!見てコレっ」


と言って、リンナは自分の手を指さす。いや、正確には指につけている指輪を指さしていた。


「何年か前にパパに誕生日プレゼントとしてもらったの。大きくなったらつけなさいって。」


「それがどうしたんだ?」


「コレ、魔緘石でできてるの!だから魔力を吸いとるなら、人からも吸いとれるはず、と思ってね。どうよ、ドッペル!日頃のお返しよ」


ドッペルは言い返す気力も残ってないようで、むむむ……と唸っただけだ。


「しかし、ドッペル。“無限の魔力”なら吸いとられても平気なんじゃないのか?」


『限度があるよ』


おっ、テレパシーだ。


『ある程度は一瞬で回復するから問題無いけど、体が耐えられないほどの魔法を放ったり、何かの影響で魔力がほぼゼロに近くなったとき、回復に時間がかかるんだ。特に魔緘石は耐性が無いから、こうなる。普通の魔道具なら内部やギミックに魔緘石が使われていて、触れても問題無いけど、リンナの指輪はおそらく高濃度の魔緘石がそのまま指輪に加工されているから、むしろ石そのものよりもたちが悪い。……ああ、ダメだ。この会話方法も疲れる。F、どうか俺をベッドまで運んでください。』


なんだ、俺の指輪じゃダメなのか。つまんねぇの。


Fとリンナが顔を見合わせる。


──よし。


「──ぬああああっ!やめっ、やめてっ……もう無理、……むぅあっ……」


「知るか!これに懲りてもう少し普段の行動に気を付けるんだなぁ!──よし、リンナ。もう一回。」


「ラジャー!」


「いやあああああっ」




その後、ドッペルが気絶するまで続けられたという。

こんにちは。ななるです。


今回はちょっと長めになりました。てへへ。


「神様の箱庭」連載開始しました!

是非そちらの方も読んでいただけたら幸いです!


さて、次回。「ハコニワは書いてるときに癒される」

次回があれば、またお会いしましょう!

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