D-26:遠いいつかは誰の夢
D-26:遠いいつかは誰の夢
「テトラじゃない!テトラなら大丈夫!私に任せて?」
ベルは胸を張って拳を左胸に当てた。
「テトラは私の庭みたいなものよ!」
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……と、言ったベルの言葉は本当で、テトラ区内をすらすらと歩いていく。
「なぁ、ベルはテトラに住んでるのか?」
「そう。どうかした?」
ベルは周りをキョロキョロと見渡しながら話す。物珍しそうに、キラキラとした目で。
「じゃあ、アリアのこと見かけたことあったりしないのか?」
「ううん。初めて。ね、アリアちゃん?」
アリアもこっくりと頷く。
ベルはふんふんふーん、と鼻唄を歌いながら軽くスキップしながら迷わず進む。
しかし、やはりベルは目を輝かせながら、まるで旅先を歩いているかのように町を眺める。
なんなんだ、この違和感は。
「……えっと、ここがテトラ区本通り4だから……」
確かめるように呟く。
「あそこが三番ね!」
黄色い屋根の家。アリアはそこを指差して「オウチ!」と叫んだ。
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アリアの家の前。
「着いたぞ、もう迷子になるなよ。」
「うん!ありがとう、ベルお姉ちゃん、Fお兄ちゃん。」
まぁ、俺はただ遠回りさせただったが。
「本当にリンナお姉ちゃんの言った通りだった!」
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アリアはリンナのそばから離れようとしない。まだ、少し警戒しているようだ。
「大丈夫よ。」
リンナはそう言った後、アリアの耳元に顔を寄せ、何かを囁いた。
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問題屋を出る前の、あの時か。
「あいつ、何を言ったんだ?」
「えっとね、『とっても頼れるヤツだから、安心して』って。」
急に背中がむずむずしてきた。
仕方がないので少し顔をそらして「そうか。」と答えて頬を掻いた。
「……じゃあね、アリアちゃん!」
「うん、ありがとう!」
Fは少しだけアリアに手を振って、ベルとその場を去った。
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さっきベルと出会ったところに戻ってきた。
ベルはうーん、と両腕を伸ばして、のびをする。
「良いことをした後は気持ちがいいってこういうことを言うんだね。」
確かに、悪い気はしない。
「ねぇ、ひとつ聞いてもいい?」
「なんだ?」
ベルはぐっと顔をFに近づけて、少し挑戦的な笑みを浮かべてこう言った。
「Fにとってさ、リンナってどんな人?」
「はあ?」
何だいきなり。
「……ただの幼馴染みだな。いや、違う……なんと言うか、もっと……」
ベルは瞬きもせずにFを見る。
「ああ、そうだ。空気みたいなやつだな。」
えっ、と声をあげて、それからすぐにベルは笑いだした。
「ふふふ、何それ。人として見てないってこと?ふふふ、あははははっ!」
足をパタパタして、腹を押さえて笑うベル。
しかし、Fはそれをまるで気にしていないというように、ただ赤く染まりかけた空を真っ直ぐに見つめて、こう言った。
「そう、空気。当然のようにそこにいて、いることが当たり前に思ってしまう。だが、ふと独りになったとき、それがどれだけ恵まれていて、大切なのかわかってしまう。大事な大事な、俺の最初の、友人だ。」
迷いなく、真っ直ぐに言うFを見て、ベルは笑うのをやめた。
そして一瞬うつむいて、直ぐに空を見上げて、ふふ、と笑った。
「ねぇ、F。」
「なんだ。」
赤い空とベルの瞳の緑がコントラストを踊る。
「私も、いつか、ちゃんと友達になってもいい?」
どこか寂しげなその声が、この時は何を意味するかわからなかったが、Fは何も考えずにはっきりとこう答えた。
「何言ってんだよ、もう友達でいいだろう?」
ベルは驚いた顔を見せた後、直ぐに笑って「ありがとう。」と言った後、Fには聞こえなかったが確かにこう言った。
「…ゴメンね……。」
こんにちは。ななるです。
また少し遅くなりました。申し訳ありません!
次回からはまた新しくお話が変わります。もう少しエンさんが登場すると、思ってはいるんですが。
さて、次回。「急に夏が来てすでにバテてます」
次回があれば、またお会いしましょう!




