D-25:いつかのフラッタに
D-25:いつかのフラッタに
「……F、遅すぎるわ。」
リンナは窓の外を見て一人呟く。
「まさか、悪い女に言い寄られて……!」
「はい、ストップ。大丈夫だよ。あのFだよ?例えそうでも、言い寄られたことに気づかないよ。」
ドッペルが苦笑いをしながらリンナをなだめる。
「確かに……いや、それでも!」
強引な女たちに流れ流され、今頃はきっと……
「こーしちゃいられない、こーしちゃいられない……」
リンナは立ち上がって、高らかにこう宣言する。
「私も混ざってこなくちゃっ!」
「おい、待て。」
ドッペルはドアの方へ走ろうとするリンナの首根っこを掴んで、なんとかソファーに戻らせた。
「離して!離し──離せぇぇぇえ!」
「まあ、落ち着きなよ。そんなにFのことが気になるなら俺が見てやるからさ?」
「そんなこともできるの?」
「あっはは。まだ俺の魔法の技術をわかっていないようだね。かむ──じゃなかった──ドッペルさんは低級魔法なら全て使えるんだからね!」
低級……凄いのだろうか?
ドッペルは空中にモニターのようなものを出し、それを眺める。リンナの方からは見えないが、ドッペルにはちゃんと街の様子が見えているようだ。
「ええと……あ、いた。ここはテトラ区とタートネイクの間だね。」
「場所も分かるの?」
「分かるよ。この前、一人でフラッタを一周してきたんだけど、その時に至るところにコレを設置してきたんだ。」
と言いながら、空中に目を模した紋様を出した。
「何コレ?」
「監視用魔方陣。カメラみたいなものだよ。というか、カメラの中の魔方陣そのものだね。」
そんなものを町中に……とんでもない変態野郎だわ。
「話をもとに戻すと、どこの魔方陣が写しているかを調べることによって場所がわかるって訳さ。凄いでしょ?」
凄い変態野郎だわ。
「ええと……あ、いや、ん?」
もちろん、そこにはベルの姿も写っている。
「どうしたの?私にも見せなさいよ。」
「く、来るな!」
「え?」
ドッペルがこんな風に強い口調で何か言うのは珍しい。
びっくりしたリンナは一瞬固まってしまった。
「あ、いや、ええと……あっはは。どうやら調子が悪いようだ。どうもよく見えないな。」
「もう何よ。やっぱり見に行くしかないわね!」
「待って!」
今行ったら絶対、修羅場だ。
「今度は何なの?」
「それより、俺の質問に答えてよ。」
ドッペルは空中のモニターを閉じ、リンナに正面から向き合った。
「……ま、いいわ。何?」
「フラッタの勢力バランスについて、君の知り得る情報を全て教えてほしい。」
「何で?何か企んでいるの?」
「あっはは。さあね。」
さあね、て……
「……まぁ、どうせあんたを止められるわけないもんね。いいわ。教えてあげる。」
─────────────
東、ドラゴンロード。
西、テトラ区。
南、フラッタメインストリート。
北、タートネイク。
フラッタがこの四つの大通りから成り立っていることはもう知ってるわね?
昔は、ドラゴンロードをFの一族の道場、テトラ区をテトラスロット家、メインストリートをフラッタ家、タートネイクは農村でそこに住む人たちが自治していたわ。
しかし、道場の消滅、テトラスロット家のタートネイク侵略により、大きく状況が変わったわ。
ドラゴンロードは実質無法地帯、変化のないフラッタ家とは対照的に次々と勢力を拡大し続けるテトラスロット家。今、ゆっくりと拮抗していたフラッタのパワーバランスが崩れ出してきている。
─────────────
「──こんな感じね。何か質問ある?」
じゃあ、と言ってドッペルが右手をあげながら質問する。
「テトラスロット家は何でそんなに力を持っているの?」
「彼らは魔法の一族なの。その高い魔法技術を使って、魔導具の祖といわれている魔法具を売っているわ。今や、魔導具は生活必需品。その需要は計り知れない。フラッタ一の資産家、それがテトラスロット家よ。」
具体的にはそこまで魔導具と魔法具にそこまで差はない。
「ふむ。なら、もうひとつ。フラッタ家とテトラスロット家は仲良くしないの?」
「私はまだそこまで詳しくはないのだけど、パパが言うには思想が違うみたい。フラッタ家はこの町を平和で穏やかなままにしたいのだけど、テトラスロット家は他の町と対抗すべく、軍事力を上げたいみたい。でも、ルワーユの許可なく軍事力を上げるなんてことは、一市民のやっていいことじゃないから、フラッタを乗っ取ろうとしているようね。」
「へぇ、軍事力を……」
リンナは、はぁ、と大袈裟にため息をついて、やれやれと首を振りながら
「戦争なんて何の意味もないのに。」
と悲しそうに呟く。
ドッペルはクスッと笑う。
「『意味は無くとも、いつかは剣をとらねばならない。それを世界が望むなら。』」
「え?」
どうしてかしら。何処かで聞いたことがある。
「『グレイスピアの童話』、君も読んだことがあるだろう?──いや、読み聞かされたのかな──それの一文だよ。」
瞬間、ズキンと頭を何かに抉られたかのような痛みがした。
「──さて、質問はおしまい。答えてくれてありがとう。Fはまだ帰らないと思うけど、まだ待つつもりかい?」
ドッペルは笑顔で聞いてきているが、何故だろう、感情を感じられない。
「──いや、もう帰るわ。Fにお礼を言っといて。」
リンナはゆっくりと立ち上がってドアの方へゆらゆらと向かう。
リンナ自身にも、どうして自分がこんなに動揺しているのかわからなかった。
こんにちは。ななるです。
暑いと思っているのにまだ長袖を着ています。きっと暑さで頭がやられたのでしょう。皆さんはしっかり暑さ対策をしてから、長袖をきてください(錯乱)
さて、次回。「略し方が思い付かないけど、もう『うちドッ』でいいかなぁ」
次回があれば、またお会いしましょう!




