D-22:彼らが道に迷った理由
D-22:彼らが道に迷った理由
アリアを連れ家を出てから一時間。
「お兄ちゃん、ここどこ?」
迷子の迷子のFさんです。
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ことは一時間前に遡る。
サトウ・エンは店の窓を拭いていた。
『窓だけはいつも綺麗にしろ。窓が曇れば、店の信頼も曇る。』
これが先代からの教えである。
「♪フンフンフフン♪ふぁーにちゃー♪サトウふぁーにちゃー♪」
いつか流行らせたいと思うテーマソングを口ずさみながら、入念に窓を拭く。
「♪──あれ?Fだ。」
しかも、小さな女の子を連れてキョロキョロと周りの様子を伺っている。
まさか──!
エンは慌てて外に出て、最近出来たばかりの友人の非道を止めるべく、徒然町中に響き渡るくらいの大声でこう叫んだ。
「F、やめろおおお!さすがに幼女に手を出すのはヤバいってっ!今からでも遅くはない!早くその子を正しい道に送り出すんだあああっ!」
うう、どうかわかってくれ……
徒然町が静寂に包まれる。
Fは肩をわなわなと震わせて、
「こ、の、──!」
先程のエンの声より大きな声で、真っ直ぐな右ストレートと共に、こう叫んだ。
「馬っ鹿野郎おおおおお!」
Fはそのまま、倒れたエンに馬乗りして、両手で交互に殴りながら、耳まで真っ赤にして荒い息で続ける。
「誰が、何に、何を、出したって?この、この、──ああ死ねぇええっ!」
も、やめて……オーバキル、オーバキルだからぁ!
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「なんだ、迷子をね。しかし、何で家の前でキョロキョロしてたんだ?」
殴られてパンダみたいな顔になったエンは、取り敢えずFが特殊な性癖を持っているわけではないということを確認し、現在の状況を聞いている。
「いや、テトラ区がどこにあるか分からなくてな。戻って聞くのもカッコ悪いだろ?」
なるほど。ここはフラッタ在住歴の長いこのオレが、先輩として優しく説明してやるしかあるまい。
「ここからテトラ区に行くには、まずメインストリートの方に進んで、右に曲がる。広場まで進んで、左に行けば、テトラ区に入れる。わかったか?」
「ええと、メインストリートはどっちだ?」
「あっち。」
エンは指を指して示す。
「それは指先が指している方に行けばいいのか?」
「そうだけど?」
「右、左だな?」
「右、左だ。」
ここまで、確認しなくとも、フラッタの形的に迷う人なんてそうそう居ないだろうが。
Fは、よし、と言って少女の手をとり、
「サンキュ!恩に着るぜ!」
と言って走っていった。
「いやぁ、良いことをした後は気分がいいな!」
いや、待てよ。Fが今走っていった方向って──
「おい、F!そっちはドラゴンロードだ!」
しかし、彼らには全く声が届いてないようで、真っ直ぐ進んで通りに出た後、二人は右に曲がった。
「あー……まぁ、いいか。」
考えたって仕方ない。
エンは全てを忘れて、また窓を磨くことにした。
こんにちは。ななるです。
エンさん再登場回です。
彼が出たと言うことは「あ、このシーンはそこまで重要じゃ無いんだな」と思ってもらって構いません。(嘘です。)
さて、次回。次回こそ!「遠くトークとおく」
次回があれば、またお会いしましょう!




