D-19:ウェアイズヒア?
D-19ウェアイズヒア?
Fとドッペルは一通りの近所への引っ越し挨拶を終え、「問題屋」に戻った。
「……お前、」
Fが新品のソファーに寄りかかりながら言う。
「一体全体、何をしたんだ?殆どみんなお前のこと怯えてんだろうが。」
あんなに過剰に反応するエンがビビりなのかと思っていたが、行く先々の相手の反応を見るに、どうやらうちのドッペルゲンガーが何かやらかした、としか考えようがない。
「あっはは。そんなに俺、危険じゃないよ?」
「安全なドッペルゲンガーがあってたまるか。」
そう、忘れてはいけない。こいつは俺のドッペルゲンガーなのだ。油断できない。
Fは更に深く寄りかかり、ソファーと一体化しようとする。
……凄い。リンナの所のにも引けを取らないぞ、コレ!
「気に入った?それもエンさんがくれたんだよ。」
『それも』?
「あと、そこの机と、俺の部屋の机も。本当にいい人だ!」
「……。」
一瞬、返そうかとも思ったが、ここまで素晴らしい物を手放すのは心苦しいので、エンには何か他のことで返すことにした。
それがご近所付き合いというものだ、多分。
「そうそう、F。」
「なんだ?」
「言われるがまま越してきたけど、ここフラッタのどの辺なんだろうね?割と中心てのはわかるけど。」
フラッタは広場を中心にした円村だ。中心に行けば行くほど栄えている。ここは裏路のようだが、それでもかなりの人が住んでいるようだから中心に近いのは間違いなさそうだが──
「知らない。」
「え?」
「俺も知らないんだ。元々、フラッタにはリンナの屋敷に遊びに行くとき通るだけだし、時々リンナに連れ出されたときも、ろくに町なんか見てないからな。全くわからない。」
ドッペルは口をもごもごさせて何か言いたげだが、やがて諦めたのか、大きく溜め息をついた。
「仕方ないだろうが。お前が勝手に引っ越しさせたんだ。そんなことでへこむな。」
「──そうだね。仕方ないよ。彼を呼ぼう。」
ドッペルは大きく息を吸い、次に発する言葉の準備をする。
──さぁ、ご一緒に。
「せかいせつめぇーさぁああんんっっつつ!」
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先程、F少年が言った通り、フラッタは円村である。
中央広場から東西南北に伸びた、四つの大きな道を柱に蜘蛛の巣のように広がっている。
東、ドラゴンロード。
西、テトラ区。
南、フラッタメインストリート。
北、タートネイク。
名義上、フラッタはフラッタ家によって治められていることになっているが、それは半分本当で半分嘘である。
フラッタ家の屋敷は中央広場からメインストリートを進んだ先にあり、彼らの力が直接届くのは、そのメインストリートのみ。
他は別勢力によって支配されているが、この話はまた、後日。
とにかく今は、『フラッタは微妙な勢力バランスによって成り立っている』ということだけ覚えていてほしい。
本題に入ろう。
F少年とドッペルが店を開いた場所はメインストリートとドラゴンロードを結ぶ町。
『徒然町』
人々は自由気ままに過ごし、暇をつぶす。それ故に、頑固な変わり者が多く、『変人の路地』と呼ばれたりする。
そして、メインストリートにもドラゴンロードにも染まらない、平凡を語る町唯一の非凡なる町だ。
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「──嫌な予感しかしねぇよ。」
こんにちは。ななるです。
もしかしたら気がついている方もいらっしゃるかもしれませんが、世界説明さんのCVはエンくんです。声だけ!
実際のエンくんとは何の関係も有りません。
さて、次回。「ヒロインとは何か。」
次回があれば、またお会いしましょう!