D-18:サトウ家具屋
D-18:サトウ家具屋
「そう!フラッタ中心街の『問題屋』だよ!」
なんということだ。まさかドッペルゲンガーに家を変えられたあげく、仕事まで決められてしまうとは。
いや、まだだ。まだ、反対すれば──
「そうそう、Fもはやく周りの人に挨拶してきてよ。もう俺済ましたから。」
「え。」
「『こんにちは、今日から開店の問題屋のドッペルです~。これ、詰まらないものですがどうぞ~。この前はお騒がせしてすいません~。』て。みんな笑顔で歓迎してくれたよ。なんていい人たちなんだ!」
『この前はお騒がせして』?
まさか……
Fはダッシュで部屋を出る。が、やはり知らない家、知らない間取り。
ドアを見つけて、勢いよく飛び出たがそこはトイレだった。
「F、外に出るならこっちだよ?」
ドッペルの手招きする方へ進む。
ドアを開けて外へ。
「な……!」
ここ、この前の赤狼騒ぎの通りじゃねぇか!
よりによって何ていうところに。
しかも──
「普通、てめえが吹っ飛ばした家の隣に店構えるか?」
家の右隣の家はFが魔法で吹き飛ばした二つの家のうちの一つだ。
『サトウ家具屋』と看板がある。
「あぁ、サトウさん?話してみたけど全然気にしてないってさ。元通りになってるし。いやあ、時魔法成功しててよかった。」
「いやいやいや、気まずいだろ。いろいろ。あんなにドンチャンしたんだぞ?」
特にお前が。
「え、でも引っ越しイトコン(引っ越しそば的なもの)持ってたらみんな喜んでたし、サトウさんなんか歓迎祝いにソファーと机までくれたよ?」
みんな怯えてんだよ。
特にお前を。
「どちらにせよ、もう問題屋開く、ってみんなに言っちゃったから今さら閉じるとか無しだよ。ほら、Fも挨拶挨拶。」
そう言いながら、ドッペルはサトウ家具屋の扉を叩く。
「おーい、サトウさん?俺だよ、ドッペ──」
ガチャ。
「へいっ御待ちっ!」
わずかコンマ三秒。
どんだけ過敏に反応してんだ。
「どどどどどどど、ドッペルさんっ。いや、ドッペル様!一体何のご用でござらんですらんざらん。」
もはや焦りすぎて何を言っているのやら。
出てきた男は二十代前半、いや、もっと若いかもしれない。歳は俺とそんなに変わらないだろう。短めの暗い茶髪に黒の瞳(まぁ、この町で他の色はあり得ないが)、身長は少し俺より高い。前掛けエプロンには『SATO FURNITURE』と縫われている。
「サトウさん、さっきも言ったけど敬語は辞めよう?そんな年変わらないし、もっと仲良くしたいしさ?」
「はははははいいいっ。きヲつけます。」
ダメだな、完全に怯えてる。と言うか、ドッペルもそれを少し楽しんでいるようで、クスクス笑っている。
全く。
「どけ、ドッペル。俺の挨拶だろうが。」
「ええっ!F、一人で挨拶できるの?」
耐えろ、俺。無視だ無視。
「はじめまして──つーかこの前会ったけど──隣に越してきた、Fだ。この前はドッペルが迷惑をかけて悪かった、すまない。あんなことがあって受け入れにくいと思うが、どうか仲良くしてくれると嬉しい。よろしくな。」
こんなもんだろう。
ん?相手の反応がない。
サトウは口をポカンと開けたまま静止している。
ついでにドッペルも。
「おい、どうしたんだよ?何か変なことでも言ったか?」
「ま、まともな人だ……!」
?
「うわああああんっっ!よかったあ、よかったあ。」
何だ何だ?泣き出したぞ?
「──こっちこそヨロシクな!この前のことは……その、アレだ。オレもさんざん酷いこと言ったし、チャラだ。お互い仲良くしようぜ、F!」
いきなりの豹変っぷりに驚いたが、どうやら悪いヤツではないようだ。
「オレの名前はサトウ・エン。ここ、サトウ家具屋の三代目だ。『エン』て呼んでくれ!」
「おう!エン、ヨロシクな!」
「ねぇねぇ。俺も『エン』て呼んでいいかい?」
「どどどどどどど、どうぞ!勝手に読んでいただいて結構でやがれでごぜいやす。」
あぁ、どうやらドッペルの一件がトラウマになっているようだ。
可哀想に。
「こんな引っ越し挨拶、後何件続けるんだ……」
そう言いながらも、新しい生活への期待を隠しきれないFであった。
…………勝手にまとめるんじゃねぇ!( ;゜皿゜)ノシ
こんにちは。ななるです。
エンくん初登場回です。(大嘘)
ここからはまた、最初のペースに戻り、まったり進んでいきます。あなたも是非、フラッタに遊びに来てください!
さて、次回。「エン、死す。」
次回があれば、またお会いしましょう!