D-15:スクナメルジャ
D-15:スクナメルジャ
「キュォオオォオオオオオンっっっっ!」
目が慣れてきた。
リンナもFも湖の上に浮かぶそれを見て絶句する。
ドッペルがクスッと笑った。
「スクナメルジャ。それが黒被りの正体さ。」
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日が大きく西に傾き、茜が町を飲み込もうとしている。
ここ、東の森にも茜の時間がやって来た。メル湖も半分がオレンジに染まっている。
この時間が来るたび、あの赤い空を見るたび、嫌になるほど悩んだ。どうして俺だけ違うのか。どうしてこんなに嫌われないといけないのか。どうしてあの日──俺だけ死ななかったのか。
きっとそれに答えはない。ずっと前、いや、最初からわかってたんだ。でも考えずにはいられない、何か理由がないかと探さずにはいられない。どんなに恨んでも仕方無いのに、目の前のこいつを睨まずにはいられない。
Fは静かに剣を構えた。
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メル湖には子供の頃から何度も遊びに来ていた。
パパとも来たことがあるし、Fとも来たことがある。
でも、こんなやつは見たことがない。見た、という人に会ったこともない。
「キュォオオォオオオオオンっっっっ」
スクナメルジャが三人を見据える。
リンナには心なしか怒っているように見えた。
スクナメルジャの周りの球体が妖しく紫に光る。その紫光は空気に溶けるように霧に変わった。
「綺麗……」
とても幻想的な世界。
茜のバックに青い巨体、黄色い不思議な模様、紫の霧。
『……がれ…………がるんだ……!』
右前にいるはずのドッペルの声がすぐ後ろから聞こえる。
『下がれ。リンナ、君は下がるんだ!』
「何言ってんのよ!私も──」
『しっ!静かに。Fに気づかれないように──あの事を知られたら困るだろう?』
はっ、となってリンナはドッペルを見た。スクナメルジャを見たままだ。
なら、どうすればいいのよ……あ。
『何のために下がらないといけないのよ!』
リンナは一生懸命念じてみた。すると、
『あ、一応言っておくけど、君が何をしてもこっちに何かを伝えることは出来ないよ。念じてみてもね?』
知ってるわよ、そんなの!ただ、もしかしたらと思っただけなんだから。てか、最後の言葉、絶対聞こえてたでしょ!あいつ、今度絶対●す。
リンナは向けようの無い怒りを抑え、一旦下がることにした。
Fは真っ直ぐ剣を構えたまま動かない。こっちには気づいていないようだ。
リンナは去り際にドッペルを睨み付けた。
『Fを死なせるんじゃないわよ。』
ドッペルはこっちに気づいたようで、ウインクしてこう告げた。
『分かってるよ。』
あいつやっぱり聞こえてるでしょ!
本当にムカつく!
リンナは身を隠せるところまで隠れた。
『そうそう、赤狼にご注目。』
どういうこと?
リンナはドッペルの方を見たが、もうこちらを向いていなかった。
全く。
納得がいかないけど、言うことを聞くしかないリンナだった。
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「F、よく聞くんだ。」
ドッペルが話しかけてきた。
「感情に任せてアレを殺してはいけないよ。追い詰めて、もうダメだと思わせるんだ。」
「わかった。」
「キュォオオォオオオオオンっっっっ」
スクナメルジャが大きく宙を仰いだ。暴風が吹き荒れる。
「来るよ。」
ドッペルはクスッと笑った。
こんにちは。ななるです。
本日は二話連続投稿です!
書き溜めなんて知りません!
書いたら出します!出しちゃいます!
さて、次回。「数分後」
次回があれば、またお会いしましょう!