D-12:がらがらがっしゃん
D-12:がらがらがっしゃん
綺麗に並べられた商品。暗い店内。
「雑貨屋、かな?」
狂騒と叫騒が混じる中、ドッペルは一人、一際静かな店に入った。
ドアには鍵が掛かっていたが、文字通り、すり抜けて入った。
「魔法結界まで張ってないと、悪い魔法使いが不法侵入しちゃいますよーっと。」
ま、結界を張ったところで俺には効果はないけど。
始めの第一歩を踏み込んだところで、足元から、からんっと音がした。
暖簾が床に転がっている。
「何故?」
整った商品棚、暗い店内、床の暖簾……
「店を開ける直前にどこかに行ったとか?」
でもどこに?
店内から外を見る。
ガラス張りのドアが自身の姿をうっすらと映した。
「もしかして──」
─────────────
「うるせぇぇぇぇええええええっ」
本日二度目の静寂が町に訪れた。
聞こえるのはリンナの荒い息づかいのみ。
町が再びざわつき始めるよりも先に、リンナがこう言い放った。
「いいこと?よく聞きなさい。赤狼退治にFを呼んだのは私達フラッタ家よ。文句があるなら、私に言いなさい。」
そして、二階の窓から顔を出している男を指さし、
「それから、そこのあんた!Fは誰も殺してなんかいないわ。その事は私が証人になっているはずよ。根も葉もないことをまだ言うつもりなら、このリンナ・C・フラッタを侮辱したと見るから覚悟しなさい。」
もう誰も、何も言わなかった。
少し間をおいて、ドルトンが優しい声で呼び掛ける。
「そう言うことだ。みんな騒がしてしまってすまない。赤狼は私達に任せて欲しい。君達は安心して部屋で待機をしておい──」
「駄目だっ!駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!そいつを今すぐ殺せ!今すぐだ!赤狼も呪いっ子もすぐに殺せ!見ろ!あんなんが町に来たから祝福の力が弱くなっている!」
そう言って、出てきたのはお爺さん。瞳の色は黄色。
「わしは若い頃、このフラッタに来て祝福を受けてずっと黒い瞳だった……なのに!見ろ、この目を!あいつのせいだ!あの呪いっ子が来たからこんなことになったんだ!殺せ!さっさと殺してしまえ!」
その声をトリガーに閉まっていた様々な店から人が出てきて、口々に叫ぶ。
「「そうだ!殺せ!俺の祝福もあいつに汚された!」」
「「私もよ!赦せない、赦せない!殺してしまえ!」」
彼らの瞳は皆、黒ではなかった。
一体全体何が起こっているんだ?
Fにはさっぱり検討もつかない。
黒い瞳の者も、そうでない者も、声を1つに叫ぶ。
「「殺せ!殺せ!呪いをはらえ!」」
再び石を投げる者も現れた。今度は赤狼だけでなく、Fに、そしてリンナとドルトンにも投げる人もいた。
「「このフラッタの恥知らずが!」」
「「ちゃんと民を守れ!」」
「やめろ!リンナとドルトンさんは関係無い!手を出すな!」
もはや誰にもFの声は届かない。
一体俺達が何をしたっていうんだ。
Fは知っていた。たとえ自分が祝福を受けない身だとしても、守ってくれる人がいることを。リンナやドルトン、フラッタの屋敷の人だけじゃなく、そんな人がこの町にもいることを。
でも、それはあまりに少数であるということも知っていた。
知っていた、はずなのに。
「何の呪いなんだよ……」
Fは力を抜き、その場に崩れるようにしゃがんだ。石の雨も、汚れた叫びも、だんだんと遠退いていく。
「──呪いなんかじゃないよ。」
鈴の音のように、穏やかな声だった。
眩い閃光が辺り一帯を照らす。同時に、けたましい破砕音が轟いた。雷が落ちたような、そんな音。
「呪いなんかじゃないよ。絶対。」
目が馴れてきたとき、自分が何処にいるのかわからなくなった。
「だからさ、少し静かにしてくれよ。煩くて堪らない。」
その場にある、全ての硝子が割れていた。等しく塵になって地面に多数の山を作った。
塵なのに風が吹いても動かない。まるで時が止まっているよう。
全く音が聞こえなくなった。
「──そう。それでいい。やればできるじゃん。」
ドッペルが一人、クスッと笑った。
こんにちは。ななるです。
この小説は、一話ごとのタイトルの壊滅的な作者による、《がらがらがっしゃん》です。
え?聞こえない?
仕方ない、もう一度言いますね。
この《がらがらがっしゃん》の壊滅的な《ぽんぽここっぽん》な感じ《ぴゅい》す。
さて、次回。「前回適当なこと言ってすみません回」。
次回があれば、またお会いしましょう!