D-71second:再選択
D-71second:再選択
ドッペルはトロイが完全に出ていったことを確認してから、二人に苦笑いで尋ねる。
「……で、どうしたの?そんなに難しい依頼だった?」
二人は顔を見合わせる。
「て、リンナ!また君、瞳の色が変わってるよ!?ほんのさっきまで青だったのに、本当に何があったのさ」
どうやらドッペルにはここから先の記憶はないらしい。つまり、時渡りをしたのはFとリンナだけ。
リンナが回答に困っていると、Fがゆっくりと口を開いた。
「いや、トロイさんの依頼がルワーユにお使いをするってやつでな。あまりに遠いからどうしようかと思っていたんだ」
瞳の話題はスルーして、さらに今のドッペルの時間軸に合わせて会話する。
Fのそんな決断にとりあえずリンナも乗っかることにした。
いやな未来なら受け入れなければいいだけ。きっとそうだ。
「ルワーユ!?いいじゃん、みんなで行こうよ!きっと旅行みたいで楽しいよ」
しらじらしいその態度に何か投げつけてやりたくなる。
きっとこいつはもうこの時にはすでに大体の事は予想していたに違いない。
Fとリンナはもう一度顔を見合わせた。今度はそこに迷いはない。二人は力強く頷きあった。
「「行かない」」
ドッペルはひどく驚いたようだった。そりゃそうだ。急に強く突き放されたのだから。
これが二人の”再選択”であるなんて気づきようがない。
「悪いが、一人で行ってきて来れないか。俺は店番があるし」
「私はそもそも問題屋じゃないしね」
取り繕うような二人の態度にドッペルはさらに首をひねりながら「わかった」と渋々頷いた。
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数日後、ドッペルはルワーユへと一人旅だった。
一度行った苦難多めの旅に送り出すというのに、何の不安もなかった。
いや、そもそもこいつは一人の方が安全なんじゃないか。
そんな言い訳を自分に聞かせながら、「いってらっしゃい」と。
どうしてもドッペルと目を合わせることはできなかった。
リンナはドッペルの見送りに来なかった。
というか、トロイが依頼をしに来た日以来会っていない。
俺と同じように多分家からあまり出ていないのだろう。
何かを考えては、無意識に拒否する。
その繰り返し。
何も考えたくないのに、あれやこれやと無駄に悩んでしまう。
せめて時間だけではなくて、記憶まで戻っていれば。
こんな苦しむことなんてなかっただろうな。
ドッペルがいなくなって静かな部屋の中、一人ソファに体を投げ出した。
軽く反発して、ゆっくりと沈んでゆく。
天井をぼうっと眺めて、またいつも通り。
何から考えたらいいのだろう。
……いや、何も考えたくない。
父さんは一体どんな気持ちで俺を育ててたんだろう。
……父さん、て呼ぶのも間違っているのか。
俺は一体全体何なんだろう。
……何でもない、ただの偽物。
「ああーーーー!!やめだやめだ。考えたって仕方ない」
ならどうする?
「……くそ」
俺は走って外に出た。
こんにちは!ななるです。
2020初投稿!
本当に次回があるか怪しくなってきましたが頑張ります!
さて、次回があれば、またお会いしましょう!