D-70second:ロード
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「引き受けてくれるかな?」
曇りない笑顔のトロイカらは何も読み取ることができない。
さっきまでグランなんちゃらとかいう名前のルワーユのとある屋敷にいたはずなのに、今居るここはよく見慣れた問題屋。
リンナは周りをきょろきょろと見まわしたが、特に変なところはない。
それどころか……時間が戻っている?
トロイが以来に来たのは確か数日前。
彼の依頼が今回のルワーユ旅行の発端となったのだ。
隣にいるFもまたひどく動揺しているようで、同じようにキョロキョロとあたりを見渡している。
そしてリンナと顔を見合わせると、さらに驚いた様子で「おまえ、目――!」とだけ告げる。
目?
リンナは手鏡を取り出すと自身の左瞳を見て声を失う。
青色だった一目はいつものカラーレンズの色、黒に戻っていた。
思い当たることと言えばただひとつ。
世界が歪んだあのときに落ちた、一滴の青雫。
あれが今の状況に何かしら影響を与えているに違いない。
戸惑う二人にトロイも気がついたようで、「どうかしたかな?」と首をかしげる。
どうも何も……二人は迷っていた。
時が巻き戻ったのはもう受け入れるしかない。それをトロイに説明する必要もないことも理解していた。
ただ、ここでこの依頼を受けてしまえば、また同じことが起こるだろう。
いや、何か起こったわけではないが……知りたくなかったことをもう一度受け止めなければならない。
要するに、心の準備ができないのだ。
二人が黙っていると、チリンと軽くドアベルが鳴った。
「ただいまー!いやあ、楽勝楽勝!びっくりすることに妄想ではなく本当にストーカーがいてね。きっともう出会いなんてないだろうからってそのまま付き合いはじめてハッピーエンドさ。いやーめでたいめでたい……ん?どうしたの?」
帰ってくるなり騒がしい黒髪青瞳。
静かにうつむくリンナとFを見て首をかしげ、客のトロイを見てまた首をかしげた。
「おや、トロイさん。二人が何かしたの?」
「いやいや何も。ワシが少し難しいお願いをしてしまったようでの」
そこでドッぺルはトロイが何をしに来たのか察したようだ。
そもそも今思えばトロイに招待をあかさず問題屋を勧めたのはドッぺルなのだから当然のこと。
「……ああ、そのご依頼なら俺が受けるよ。どんな依頼だってこのドッぺルさんにかかれば簡単簡単!大船に乗ったつもりでいてよ──後で詳しいことは二人から聞くから、取り敢えず今日のところは帰ってもらってもいい?」
「?……うむ、そうさせてもらおうかの。ではまた」
そう言ってトロイはゆっくりと腰をあげると問題屋を出ていった。
こんにちは。
second入りましたー!!
二人はどんな選択をとるのか、コウゴキタイ!
次回がありましたら、またお会いしましょう!