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D-1:フラッタの赤い瞳の少年


D-1:フラッタの赤い瞳の少年


 フラッタの町。この町を知っている者はそう多くはないだろう。

 何しろ王都ルワーユからはとんでもなく遠く、その上、周りは深い森に覆われている。また特に逸している注目すべきものなんてないから、誰の記憶にも残らない。


 「平凡」。フラッタを象徴する言葉である。


 そんなフラッタの西の森。そこに入って五分も歩けばある道場にたどり着く。いつもは少年一人いるだけなのだが、どうやら今日は客が来ているようだ。夕暮れ時。庭で少年が稽古をしている中、横から少女が話しかける。


「ねえ、いつまで引きこもりを続けるつもり?あんたなら道場再建させたって問題ないじゃない、F。」


 Fと呼ばれた黒い髪に赤い瞳の少年。物語はまず、彼の視点で展開する。


─────────────


「俺が何をしてても問題ないだろ?」


息をするように答える。このやり取りは何度となく行われているのだ。それよりも、今は稽古用の木刀を振ることに精神を集中させる。


「問題大アリ、大問題よ。フラッタ時期領主の私としては、仮にも公認道場のここの処分を下さないといけないんだから。」


リンナ・C・フラッタ。この辺りを治めるフラッタ家の一人娘であり、俺の幼馴染。四代目師範である俺の父「E」と現領主が仲が良く、その関係でリンナもよく昔からここに遊びに来ていた。


「どっちにせよ、ちゃんと考えてよね。みんな心配してるんだから。」


心配、か。オレンジに染まりゆく周りの景色には目もくれず、Fは一心不乱に木刀を振り続ける。


 リンナは自らの長い栗色の髪を見せつけるかのようにこちらに背を向け歩き出した。


不意に振り返ってこんなことを言う。


「そういえば、F。あんたこの前町に出たんだってね。みんな驚いてたわ。次来るときは私の屋敷にもよりなさいよ。」


 ピクッ、と引っかかるように止まるF。じゃあね、とリンナは手を振ってそのまま行ってしまった。


──町に?俺が?ありえないだろう。俺はここのところ数ヶ月は森に引きこもりっぱなしだし、もし出かける用事があったとしても、フラッタの町にだけは絶対に行かない。ちょっと遠いが隣町のリュークに行った方がましだ。


 「あー、もう。」


バサッと力を抜いてその場に仰向けに寝転がる。木刀がカランと音を立ててその辺に転がった。地面の冷たさが心地よい。耳に入るのは自然のノイズのみ。あたり一帯は完全にオレンジに包まれていたが、遠くの方ではちゃっかりと夜がその存在を示している。


 きっと誰が見ても同じものが見える。絵の具を使って絵を描けばほぼ同じ色合いで作品が完成する。


 だとしたら、本当に俺の瞳は赤いのだろうか?


 目を閉じる。


 忘れたくても繰り返される赤の惨劇。もう半年以上たっているのに、それは俺の網膜から離れない。見知った顔、見知った背中。至る所にある赤い模様。それが花なのか彼らの血なのか、もはや考える必要もない。俺の瞳は赤い。


 うんざりして目を開けた。


 夜がすでにオレンジを飲み込みかけていた。ほんの一瞬の黄昏。俺もお前も悪くなんかないさ。


 今日もリンナを正面から見ることはできなかった。でもきっと俺は悪くない。

                             

                             

  ───あいつらの瞳が黒いのが悪い。 

初めまして!ななるです。

ご視聴ありがとうございました!


気の利いた挨拶なんて思いつきませんが、一言だけ。

「好物はカントリーマ●アムです。」

え、隠れてない?何のことだか。


さて、次回「F死す」!


次回があったらまたお会いしましょう!


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