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あの人に死を  作者: 月見うどん
第3章 おっさん覚醒する
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71.二人で散歩

 アンソニーの器を創るにあたって、彼の記憶を読み出すことにした。

 俺の中で眠っている状態なので特に苦労することもない、彼自身が記憶している若かれし頃の姿を再現する。

 人種は違うのだが、俺の体内のコピーで問題ないだろう。なんたってアンソニーは男だ、お豊の時ほどの影響はないはず。

 人体の内側と外側、中身と皮の構成は完了した。あとは投影して固定化するだけだ。


「今の俺と従者たちの状態を分かり易く例えると、こんな感じだろう。

 まず俺自身をOSと例える。人間の肉体というハードウエアから、果てしなく高性能な神というハードウエアにOSを載せ替えた状態」

「OSというとそこにあるパソコンに例えたのですね」

「まあ、そういうことだ。そうすると従者は、アプリケーション若しくは仮想OSということになる」

「仮想OSというのがよく分かりませんが、アプリケーションということはソフトウエアですね」

「俺のリソースを利用して動作しているのが従者システムだろう。

 そして俺の動力源はパソコンで例えるなら電気にあたるのが、あらゆる存在の思念なりその残滓である。

 要するに、非常に高性能な上に物凄くエコなコンピュータということだな」

「省エネなんですね」


 しかし現状は高性能すぎるスペックを使いきれておらず、動力源たる思念や残滓も十分に取り込めてすらいないので無駄が多い。本来の性能から考えるとポンコツとしか例えようがない。


「それで、従者の器は出来るのですか?」

「概ね構成は終わっているよ、ただ二人きりの生活というのも悪くないからな」

「今はまだ二人でも問題なく生活できますし、もう少し眠っておいてもらいましょう」

 ソフィーがそれで良いというのであれば、俺は別に構わない。

 アンソニーに家事全般を仕込むのは、お豊にでも任せるとしよう。本来は交代で勤務させるのが理想なのだが、二、三か月ほど被せて監督させるとするかね。


「俺も一応家事全般は出来るし、ソフィーの問題となるのは料理くらいなもんだ。もうしばらくは二人で生活するとしようか」

「お買い物が多少手間ではありますが、旦那様と二人きりというのは魅力的ですからね」

「肉体に入った時の俺の稼働時間はとても短いから、普段はやはりこの状態の方が好ましいな」

「それではお料理を教えてくださるという話は、どうなるのですか?」

「週一か週二程度で構わないだろう? 実践で教えなくても口は出せるからな」

「むう、仕方ありませんね」

 実際には、肉体があった方が慣れでやり易いというだけ。別に肉体が無くても料理は可能なのだが、それはソフィーに教えていない。知られれば毎日飯を作らされかねないから。

 少しずつではあるが、俺も自身の出来ることを理解しつつある。肉体が無くてもある程度はなんとでもなるのだ、ただ傍目から観ると異様だろうがね。


「少し外をお散歩しませんか?」

「ん、まあいいぞ」

 俺はフヨフヨなのだが、二人揃って城の外へ向かって歩き出す。

 エントランスを通り抜けると、そこはもう城の外、前庭へと至る。

「ウサオちゃんは幸せですね、こんなに広いお庭を独占しているのですから」

「もうヨボヨボの爺だから、余生を過ごすのには丁度いい」

 ウサオはもう走り回ってもすぐに疲れて眠ってしまう、大の字に腹を出して眠る姿はとても草食動物に見えない。


「旦那様は以前、向こうの方に行かれてましたね」

「結局辿り着けなかったよ、しかも帰り道まで大変だった」

「何をしようと?」

「この世界の端はどうなっているのかと、興味を抱いてね」

 いずれ人間の足で歩いて見に行こうと思っている。

「行ってみましょう」

「ちょっと昇るぞ」

 ソフィーを支えて上昇する、落とすことの無いように細心の注意を払う。

「ここまで上がっても果てが見えないのだぞ、辿り着けんよ」

「なんでこんなに広くしたのです?」

 とりあえず降りる。

「光合成による酸素の供給量が分からなかったから、安全マージンをみただけだ」

「ここの酸素は旦那様が創り出しているのではなかったのですね」

 当初、そのことに思い至らなかったというのが本当のところだ。それでも緑があった方が落ち着くので結果オーライだな。


「それでは門の方に向かいましょう」

「自分で創っておいてなんだが、無駄に長いな」

「そうですか? お城の大きさを考えれば、十分立派ではないですか」

「そう言ってくれると助かるよ」

 変り映えのしない門へと至る道を進む。

 足元の芝にはケンタッキーブルーグラスを植えた、丈が長く柔らかいが伸び放題となっている。適当に刈り込んだりしているが、気が付くと元気よく伸びている。


「この子が大きくなったら、ここで遊びまわるのでしょうね」

「まあ、そうだろうな」

「お友達を連れてくるかもしれませんよ?」

「ここは駄目だろう、下の家で我慢してもらおうか」

 ここに普通の人間を招くわけにはいかないよ。

「私が外国のお姫様だと謂えば大丈夫ですよ」

「大丈夫じゃないだろ、どうやって連れてくる気だよ」

「転移扉で来れば良いではないですか?」

「その時点でダメダメだろ」

 ソフィーはやはりどこかズレている。

 何にせよ、随分と気の早いことだ。まだ生まれてもいない、それ以前に腹が膨らんですらいないというのに。


「やっと着きました。この門はどうしてこう重厚なのですか?」

 先程までの話はどこへ行ったのか? 話題を切り替えてきた。

「趣味だな」

 大きくて頑丈そうな門というものを創ってみたかっただけ。

 それにこの門には仕掛けがある、俺が許可しないものはこの門を通ることは出来ない。

 門が外界との境界である以上、神の侵入ですら拒絶する。転移扉にも同じ仕組みを施してある。

 今現在、許可しているのはアーリマンと叡智のおっさんだけ、臨時で円四郎もだな。当然だが、俺やここで暮らす者には許可の必要はない。

「日本の男性はそういったものが好きなのですよね?」

「日本人に限らないんじゃないかな、アンソニーを呼んだ時にでも訊いてみよう」

 巨大人型ロボットなら、国とか関係なく喜ばれそうだものな。

 アンソニーは時代が違うから、理解してくれないかもしれない。もしそうなら動画で洗脳するしかない。


「では、そろそろ帰りましょう。散歩には丁度良い距離ですね」

「そうか? 結構な距離だと思うけど」

 来た道をそのまま引き返す、視界にドーンと城が映る。門から城を眺めつつ歩くというのはアリだな。

読んでくれて、ありがとうございます。

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