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あの人に死を  作者: 月見うどん
第3章 おっさん覚醒する
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59.コーヒーと歴史

 ソフィーに泣かれた日以来、週一で肉体に戻るというサイクルは変更を余儀なくされ、今日も肉体へと戻っている。

 これはソフィーに半ば強制的にお願いされた結果でしかないのだが、実験をするのにも調度良いかと思ってもいる。

 要するに、子作り強化月間ということのようだ。暫くすれば、また週一のサイクルへと落ち着くだろう。

 俺はこんなものになってしまって以降、性欲は悟りを開いたかのように薄れている。肉体に残っている生存本能のようなものだけが頼りだ。

 確かに見た目は若いお嬢さんなので、ただのおっさんである俺にはご褒美みたいなものなのだが、如何せん体力と精力が持たない。

 今は、体力づくりの為に城の外周、林の中を歩いている。最初は走ろうかと考えたのだが、俺のこの体はあちこちボロボロなので歩いた方が無難なのだ。

 自分で創り出した環境ではあるのだが、奥に進み過ぎて城まで歩いて帰れる気がしない。一体どのくらいの広さがあるのか、確認しようと思ったのが運の尽きだった。

 光合成を行ってくれている大事な木の枝を折り杖代わりにして、休憩を挟みながらのんびり帰還中だ。

 実家の近所の山から、苗木を持ってきては木の成長を加速させ、取り木で増やしつつ再度加速させてと苦労した樹木たちなので大事な資産とでも云えるだろう。

 そんなことを考えている場合じゃない、早く帰らないとソフィーが心配してまた泣きだしたら大変なことになる。

 

 やっと林の隙間から城が見えてきた、とんでもない距離を歩いた気がする。フヨフヨ移動の感覚で進んだので、痛いしっぺ返しを食らったのだろう。

 ウサオが寄って来たので、抱っこしようと思ったら逃げやがった。こいつめ…。

 なんとかエントランスまで辿り着いた、全く誰だこんな無駄に広い庭つくったやつは。


「ただいま」

 誰も居ないので返事はないけど、一応な。

 気配を探るが、やはりこの体だとよくわからない処か全くわからない。

 歩き疲れ喉が渇いたので、水分補給の為にパントリーを目指す。とりあえず、冷たい何かを飲みたい。

 冷蔵庫が無いからな、お豊にダッシュで買い出しに行かせるのもな…。

 パントリーに着くと、二人揃ってお茶を飲んでいた。

「ただいま、俺も何かもらえる?」

「おかえりなさい」

「何が良いさね?」

「麦茶か、水」

「はいよ、水」

 ゴクゴクと一気に飲み干した。

「散歩は済んだのですか?」

「ちょっと奥まで行き過ぎて、戻ってくるのが辛かった」

 世界の端っこがどうなっているのか、肉眼で見たかったんだよね。辿り着けなかったけど。

「呼んでいただければ、付いて行きましたのに」

 四六時中一緒に居るというのも、気恥ずかしいと云うか、鬱陶しい。


「それより、お前たち何してたの?」

「勉強していたのさ」

 なんのことやら?

「色々、現代の常識を教えていたのです」

 こんな所でか、ここ広いけどキッチンなんだよ?

「じゃあ、ひとつお願いしようかな。コーヒー飲みたいんだけど」

「こーひー?」

「コーヒーですか?」

「出来れば、インスタントじゃないヤツを」

 お一人様用の開いてお湯注ぐやつでも構わないから!

「いや、インスタントでもいいから」

 最近のインスタントは出来がいいから耐えられる、お茶からでないカフェインを摂取したい!

「では、今から買ってきますね」

 物凄い催促した気がする、ソフィーお金持ちだから任せるとしよう。

 聞くところによると、かなりの資産家らしい。俺は逆玉の輿という訳だ。

 なので、変に気を遣わずに甘えられるところは甘えてしまうことにする。

 金を稼ごうと思えば、金属を創り出して売り捌けば良いのだろうが、非常に面倒くさい。そもそも大量に捌くには信用が必要だ。

 貴金属なんか以ての外だろう、非金属だって出元が不明なら引き取ってさえもらえないだろうしね。

 だからこれは、市場を混乱させないために致し方ない処置なのだ。断じて、ヒモなどではない。

 

 下らない言い訳を考えている間に、ソフィーは買い物を終えて帰って来た。

「インスタントですが構いませんね?」

「うん、十分だ。ありがとう、ソフィー」

 コーヒーカップではなく、マグになみなみとコーヒーを淹れて差し出してきた。

「旦那様はブラックですよね、私もなんですよ」

 自分の分もちゃんと淹れていたようだ。

 問題はお豊が興味深そうに見ていることだ。たっぷりのミルクと砂糖で誤魔化さないと無理だろ?

「豊には無理ですよ、やめておきなさい」

 ソフィーがバッサリ斬り捨てた。

「あたしも飲みたいさ」

「お豊、スプーン一杯分掬ってお湯を注ぐだけだ」

 無理だとは思うが、もしもということもある。大体、俺が創った器だしな。

 お豊は湯飲みにコーヒーを淹れた。

「…にがっ」

「ほら、言った通り。お砂糖を入れてみなさい」

 もしも、は起こらなかった。

「俺はそうでもないのだが、甘いものが欲しくなったりしないか?」

「心当たりがあるのですか?」

「スーパーの斜向かいにある和菓子屋の大福関係は旨いぞ、その他は並みだが」

「そういうのは、もっと早く教えて頂かないと困ります」

「爺さんがまだ現役ならの話でさ、久しく行ってないからどうだか分からなくてな」

「明日にでも豊を連れて買ってきます」

 餡子って外国人はあまり好まないと思うのだが、こいつに訊くのは愚問か?

「ソフィーって日本にどのくらい滞在していたの?」

「えーっと、六百年くらいですかね」

 ソフィーは指折り数えながら答えた。

 六百年! 西暦1,400年頃? 室町時代だと…。ヤバい咽た。

「それじゃあ、日本人より日本人らしくてもおかしくないよな」

 一財産築けても何もおかしくはないよな。

読んでくれて、ありがとうございます。

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