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大学生探偵・東雲倫吾のパズル帳  作者: 黒川 結
第2章 「大学生探偵とパズル・レストラン」
32/67

07 =スペシャルメニュー= *解答編

 俺は本を棚に戻し、二人に向き直った。

「最初に言ってたよな。“ここは全てがパズルのための場所”と」

「ああ、その通りだ」

「左様ですな。そう申しました」

「なら、これも“パズルのため”の品物のはずだ」

 言いながら、俺はメニューを掲げて示す。

「多分、この訳の分からないメニュー名が暗号になってるんだ。でもこれだけじゃ解けない。暗号を解くカギが要る」

「なら、カギはどこにあるんだ?」

 想普がにやにや笑いながら俺の推論にちょっかいをかけてきた。解答知ってて言ってるだろ、とちょっとムカついたけど、なるべく気にしないようにしながら続きを喋る。

「“全てがパズルのため”。なら、ここの店名――“インターステラ”。きっと、これも何か関係しているはず。ちなみに、そこの辞書では“星間”になっていた」

 俺は席に戻り、メニューを開いた。

「それを踏まえて見てみると、このメニューには星に関する単語がやたら多い。なら、“星間”――星にまつわる単語に挟まれた文字を抜き出したら、何かになるんじゃないか?

 例えば、星マークに囲まれた“ル”とか、TERRA――地球と太陽に挟まれた“せ”とかだな」

「“ルせ”じゃ何も分からないぞ、倫吾?」

「ああ。だからもちろんそれだけじゃない。スターは言うまでもないけど、エトワールやステラも、確かそれぞれイタリア語、フランス語で星の意味だ。

 それに天秤、獅子、ヘビ使いは星座の名前だし、マーキュリーは水星、プレアデスは星団の名前だ。

 そして、それらに挟まれた文字を抜き出して上から順に並べると――」

「赤、の、ベ、ル、な、ら、せ……赤のベル鳴らせ、か?」

 俺の言葉を引き継ぐように想普が言うと、老紳士はカウンターの奥へ引っ込んだ。かと思うと、すぐに小さな木箱を携えて戻ってくる。

 中を見ると、カラフルなハンドベルが詰まっていた。「音を鳴らすと部屋中にバレるから、スペシャル問題の解答は奥でやってもらう予定だったんだ」と想普が言う。

「どうぞ、東雲様」

 少し寂し気な表情で、老紳士が木箱を差し出す。

 それに対し、俺は首を横に振った。

「――と、いうのが、想定されてた引っ掛けだったんじゃないか?」

 二人が虚を突かれたように、一瞬固まった。

 よし、この反応からするとこっちで正解みたいだ。

「『天文情報1996』」

 タイトルを読み上げながら本を取り出し、先ほど見た内容をもう一度確認すべく、ぺらぺらと捲った。

「最初はなんでこんな古い本がって思ったけど……この本には、小惑星の命名権とか、何かに(ちな)んだ命名とかが特集されてる。例えば、有名なSF小説『海底二万マイル』の、ネモ船長や潜水艦ノーチラス号から名前を取った小惑星とか、な。

 それを踏まえて見ると、“ノーチラス”と“ネモ”の二つ――つまり、二つの星に挟まれた“と青”がある」

 繋げて読むと――“赤と青のベル鳴らせ”。

 俺は老紳士の持つ木箱から赤と青のハンドベルを取り出し、チリンと鳴らした。

 老紳士は木箱をカウンターに置くと、深々と頭を下げた。

「お見事です」

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