08 =色パズル・2= *解答編
「黒黄赤はベルギー、緑白赤でイタリア、緑白橙がアイルランド、つまり並びの法則は国名しりとり、だろ! いいから放せよホント!」
早口で叫ぶと、俺に巻き付いていた腕がすっと離れた。
俺はその場を飛びのき振り向きながら、ぜーはーと肩を上下させて息をする。
振り向いた先には、予想通りの人物が、先ほどの狼藉などまるで存在しなかったかのように、にこやかな表情で片手を上げていた。
「正解。久しぶりだな、倫吾」
金髪ではなく、黄色い髪。きつい釣り目。すっと通った鼻梁。浅黒い肌。引き締まった体躯を包む黄色いジャージの上下。そしてなぜか革靴。
この全身黄色の無駄に目立つデカい男こそ、先日黄色い封筒を送り付けてきた張本人だ。
名前を想普 烈と言う。
ふざけた見た目と態度の男だが、中身は異様なほど有能だ。
20代にしてすでに世界を股にかけるビジネスを展開している……らしい。詳細は教えてくれないし、ついでに言うと、あんまり聞きたくない。
あと重要な属性として、この男は変態である。
大事なことだからもう一回言っておこう。この男は、変態である!
「つーか、想普。お前なんでここにいるんだよ。部屋で待つか、もしくはせめて談話室にいろよ」
めったに帰ってこないのだが、こいつも一応、MK荘の住人である。
ゆえに、MK荘の面々は多かれ少なかれこいつの変態性の被害に合っており、なんかもうこいつの存在自体がMK荘のあるあるネタみたな扱いになっている。
ただどういうわけか、MK荘で主に餌食になってるの、俺なんだけど……。
「待とうかと思ったんだが、せっかくだから汗を流して真摯に働く倫吾くんを迎えに行こうかと思って」
「迎えに来た相手を後ろから締め上げんじゃねー! ……そういや、そもそもなんで俺のバイト先知ってんだ?」
教えた覚えないんだけど。
想普は神妙な顔つきで頷いた。
「まずな、暇だったんだ。静慈も葵も談話室から逃げちゃったし、心夢は実家だしリリーは残業だし」
「全滅じゃねーか」
一応こいつの名誉のために述べておくが、べつにMK荘の住人はこいつを嫌っているわけではない。
ただ、行動が果てしなくトラブルメーカーなのと、言動が果てしなく変態、かつ鬱陶しいため、適当にあしらうように相手をする流れが恒常化しているだけだ。
「暇すぎたからクロに電話してみたら、『この時間なら確かバイトのはず』って言って、お前のバイト先を教えてくれたんだ」
「あの野郎!」
腹黒男の爽やかな笑みが脳裏をよぎった。
ちくしょう、今度会ったら全力で締め上げてやる。笑いながらかわされる図しか浮かばねーけどな!
「……で? お前、今回は何の用で帰ってきたんだ」
聞くと、想普はカラフルな紙を差し出してきた。
受け取って眺めると、こんな一文が目に飛び込んでくる。
「……“パズル・レストラン インターステラ プレオープンのご案内”?」
想普が頷いた。
「ちょっとしたツテで誘われててな。お前、そういうの好きだろう? 行かないか?」
俺はその誘いに、思わず「行く」と返事を返してしまった。




