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大学生探偵・東雲倫吾のパズル帳  作者: 黒川 結
第1章 「大学生探偵の日常」
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07 =消えた活動費= *出題編

 メディアインパクト研究会。通称、MI研究会。

 俺がとある事情により、所属することになってしまっているサークルだ。

 傍若無人な会長が空き教室を占領して、(メディア)(インパクト)室と勝手に呼んで活動拠点としている。

 そしてその部屋は、俺にとっては大変不本意ながら、こう呼ばれることもある。

 ――探偵事務所、と。


 その日、俺がMI室の扉を開けると、4名の人物が席に座っていた。

 そのうちの一人は、我らがMI研究会の会長。

 残りの三人は、知らない顔だ。全員女性。

 俺は扉を閉めた。

 そして回れ右をすると、帰宅のために廊下を歩き出した。

「待て待て待て!」

 乱暴な音と共に扉が開き、中から転がり出るような勢いで会長が俺を追いかけてきた。

 思わずダッシュで逃げかけたが、初動が遅かった。がしっと腕を捕まれ、逃亡を阻止される。

「お前に客だ、探偵! ほおーら大好きな謎だぞー」

「呼んでねえしトラブル求めてねえしそもそも俺探偵じゃねーですし!」

「い、い、か、ら! 大体お前、助けを求めて来た人を無下にする気か?」

「うぐっ……」

 会長は俺の気質をよく知っている。そして俺自身も、自覚はしている。

 俺は、わりと、お人よしだ。

 “助けを求めて来た”なんて聞かされたら、もうなんかよっぽどの事がないと断れない。

「……き、聞くだけ。聞くだけなら」

「よっしゃ」

 ああ、踊らされている。

 俺はずるずると会長に引きずられながら、大きなため息を吐いた。


 そして部屋に連れ戻され、改めて来客3人の顔を見た。俺と同年代くらいの女性3人だ。

 ……3人の間にぎすぎすした空気が漂っていて怖い。

 ま、探偵もどきの学生に頼ってる時点で、この3人の間でなにかしら変なトラブルが起きてるんだろうけどさ。

「えっと……どうも、東雲です」

 とりあえず名乗っておこう。

「……大宮よ」

 と、ロングヘアのきつい顔の女性。

「く、倉野です……」

 次にボブカットのおどおどした女性。

「高橋っすー」

 最後に、ボリューミーな巻き髪の冷めた表情の女性。

 名前だけの自己紹介が終わると、会長が口を開いた。

「簡単に説明するとだな、ついさっき、彼女たちのサークルの活動費が消えたそうだ。で、この3人が容疑者」

「なんでこの3人なんですか?」

「今日の2時ごろ、サークル長と会計が活動用の備品を買うため、封筒から5千円抜いた。その時点では高橋さんが部屋にいた。

 10分ほど経って、高橋さんが帰ろうとしたとき、大宮さんが入れ違いで入ってきた。

 さらに10分後、大宮さんが帰ろうとしたら、ちょうど倉野さんが来た。倉野さんはそのままサークル長が帰ってくるまで部屋にいた。

 んで、2時半ごろにサークル長と会計が帰ってきて、お釣りを戻そうとしたら封筒がなくなってて盗難発覚。

 今日出入りした全員を呼び出して荷物や服の下、あと部屋中を確認したけど、封筒はいまだ行方不明のまま。

 大体の流れはこんな感じだな」

「そのサークル長はここには居ないんですか?」

 俺はきょろきょろと狭い部屋を見回して聞いた。相談ってならサークルの責任者がここに居そうなものだけど。

「どうしても抜けられないバイトが、ってことでうちに話が回ってきたんだよ。容疑者は絞り込んだから解決してくれって」

 厄介ごとが華麗に押し付けられている……。

「それ以外の人が出入りした可能性は?」

「大学の警備に頼み込んで、廊下の監視カメラの映像を見せてもらったが、今日出入りしたのはその3人とサークル長、会計だけだ。

 ちなみに窓は錆びてて1ミリも開かない、つーか動かない」

 どうなんだその窓は。換気としての意味すらねえじゃん。

「金庫の鍵は?」

「部屋に置きっぱなし。サークル内の人間なら場所は知ってたらしい」

 だいたいの状況は分かった。

 出入りできたのはドアからだけ、かつ、犯行が可能な時刻に出入りしたのはこの3人だけ、ということだ。

 どうしたものかと考えていると、まず大宮さんがイライラした様子で口火を切った。

「……っていうか、アンタじゃないの、高橋。この中でそういうことしそうなのってアンタくらいでしょう」

「はあ? あたしそういうことしねーし、つーかあたしが犯人って証拠ないじゃん。ねえそう思うでしょ、倉ちゃん?」

「え、えっと……決めつけるのはよくないと思います……」

 倉野さんのあたりさわりのないセリフに、大宮さんがきつい口調で問いかける。

「ちょっと倉野さん、あなた高橋の肩持つの?」

「いえ、肩を持つとかじゃなくって、その」

 ふるふると否定に首を振る倉野さんを見て、大宮さんはふんと鼻を鳴らした。

「だいたい高橋は、活動費入れてたのと同じ柄の封筒を持ってたでしょ」

「え? そうなんですか?」

 大宮さんが睨みつけながら言う言葉に、倉野さんが目を見開く。

「荷物検査の時に見えたのよ、ファイルの間に隠そうったってそうはいかないわ。活動費抜いて、封筒を自分のに紛れ込ませれば分からなくなると思ったんだろうけど」

 そう言われた高橋さんは、面倒くさそうな表情で髪を指でいじり始めた。

「それ、今日の昼ん時に長塚先輩に封筒ない? って聞かれたから渡しただけだし。あたしがあげた封筒なんだから、同じ封筒持ってるに決まってるっしょ」

「不自然でしょ、どうしたら新しい封筒が必要になるの? 元々はちゃんと違う封筒に入ってたのに」

「あーもーネチネチうっせーな! 使ってた茶封筒が破れたんだっつーの!」

 喧騒を横に、俺は横に座る会長に小声で問う。

「長塚って誰です?」

「バイト抜けれなかったサークル長」

 納得して頷き、3人の言葉に再度耳を傾けた。

「そ、それに……居るのを見られてるのに、盗んだりしないんじゃないかな、って思うんですけど」

「やけに高橋を庇うわね、倉野さん。ひょっとしてあなたが犯人?」

「そ、そんなわけありません! 金庫なんて触ってもないです! だいたい、わたし、そんな長時間いたわけじゃないですし……」

 大宮さんの睨みが高橋さんから倉野さんへ移り、倉野さんが慌てて否定する。

「それを言うなら私だってすぐ帰ったわ。長時間いたっていうなら……ほら、やっぱり高橋じゃないの」

「ちょ、ちょっと。確かにあたしは昼からずーっといたけど、2時ん時、長塚先輩が金庫開けた時はまだ封筒はあったっしょ?」

「それでも、10分もあればカギ開けて封筒取り出すくらい出来るじゃない」

「えっ、でも、それを言い出したら、全員、それくらいは時間あったんじゃあ……」

「ちょっと倉野さん、あなた誰の味方なの!?」

「いえ、あの……」

「あ、あー、えっと、すいません、ちょっといいですかー?」

 俺は呼びかけ、会話を中断させると、ぽりぽりと頬をかいた。

「えーと……とりあえず、あんた、嘘ついてるだろ?」

 そう言って、俺はとある人物を指さした。


 さて、嘘をついているのは誰?

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