表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

優しいエリーザベトちゃん

「ほ~ら、驚いた」


 洋ちゃんが笑っている。


 確かに驚いたが、怖くはない。全く。それは知美ちゃんも同じみたいだ、彼女は僕の横でただただ口を開けてぽかんとしていた。


「あ、」知美ちゃんがやっと声を出した。「思い出した! エリーザベト・アマーリエ・オイゲーニエって、シシィのことよね! ハプスブルク家の美しい王妃!!」


 なるほどね、なんかドラキュラっていうのがいっそう怪しくなってきたわ……


「はい……私の父が王妃の大ファンなので……」


 いくら大ファンといっても、苗字まで同じにすることないだろ……どんだけ好きなんだよ、てかそんなのアリなのか?


「ねぇ、ベートーベンのお墓ってしらない? 私たち、そのお墓を探してるの」


 知美ちゃん、この子は今までお父さんとはぐれて泣いてたんだよ? 少しは気遣ってあげよ?


「知ってますよ! 私、生まれてからずっとこの墓場で育ってますから! 庭みたいなもんなんです」


 ん? じゃあお父さんは自然とここに帰ってくるんじゃないのか? もはやここはお前の家みたいなもんなんだろ?


「よし、じゃあ案内してくれ! そうすればお父さんも見つかるだろうから!」


 洋ちゃんは相変わらず張り切っている。自称ドラキュラをツアガイドにするなんて、なんて野郎だ。


「待ってればお父さん、帰ってくるんじゃ……」


 僕はそう言いかけた。


「分かりました! 案内しますよ、ベートーベンのお墓に!」


 まぁ、これで目標は全部達成するわけだが……


「着いてきてください!」


 さっきまで泣いていたのが嘘のよう、エリザベス姫は率先してエレベータの方へと向かっていった。白いワンピースね、一応ドラキュラなんだから黒を着ようよ……


「安心して、私のお父さんはちゃんとしたドラキュラの格好してるから!」


 読唇術か!? 一瞬ドキッとした。でもその言葉は洋ちゃんに向けられたものらしい。


 エレベータ内、改めて見てもこいつはただの女の子だ。写真を撮って無料新聞のHeute(ホイテ)に送りつけたとしてもまったく記事にしてくれないだろうな。


「どこの入り口から入ってきたんですか?」


 元来た道を戻りながらエリザベス様がお聞きになる。


「え、あそこの2番口からだけど」


 洋ちゃんが指さしながらすっからかんと答える。ドラキュラと一緒だからだろうか、来た時より暗いのに全く怖くない。


「そうですか、どうしてお見逃しになったんでしょうね。ベートーベンのお墓は……ここです!」


 右の方を指さすエリザベス女王。前を見れば入ってきた門が、右にはベートーベンのお墓が。


「洋二郎ぉお前、来るとき左側歩いててなんで気づかないんだよ!」


 怒るつもりはさらさらなかったが、つい口に出してしまった。


「おいおい、あんなの見てたとしても暗くてなんだか分かるわけねぇだろ」


 ごもっともです、前言を撤回させてください。


「真ん中がモーツァルト、奥左がベートーベンで右がシューベルトよ!」


 ひょいひょいと指さす皇后陛下。彼女曰く、モーツァルトの墓はウィーン郊外のザンクト・アルクス墓地にあるそうで、ここにあるのはただの記念碑だそうだ。


 誰が置いたか知らないが、ウィーンで一番有名なチョコレートであるモーツァルト・クーゲルが記念碑の上にぽつんとのっていた。洋ちゃんはそれを手に取り、あろうことか銀紙を剥き始めた。お願いだから食べるなよ!


 一方、知美ちゃんはベートーベンの墓の前に行き、何やら祈り始める。置いてきぼりにされた僕は、その約3秒後、大声を上げることになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ