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イッツ肝試しタイム

「さすがにちょっと怖いわね」


 知美ちゃんの握る手が強くなるのを感じた。まぁ、無理もない。神聖な場所とはいえ、夜中で真っ暗な上に、誰もいないのは正直、薄気味悪いとしか言いようがない。


「裏口なんだ……こういうのはこういうところに……」


 洋ちゃんはランタンで横の壁を照らしていき、数秒のうちに電気のスイッチを発見、あたりはたちまち明るくなった。友よ、お前は今までどんなことをしてきたのだ?


「もう手をつなぐ必要はないな」


 洋ちゃんはそう言って知美の手を離し、ランタンの電気を消す。僕は知美ちゃんの手を離さなかった。一瞬知美ちゃんは僕の方を見たが、僕はそれでも離さなかったので、手をつないだまま探索することを無言で承諾したようだった。僕が怖いんだよ!


「おい! エレベーターがあるぜ」


 まったく、本当に行動力のあるやつだ。まぁ、この階にはなにもないみたいだしな。僕らはそのエレベータに乗った。


「ん~、地下と地上階と1階、2階……ここは地上階のはずだから、とりあえず一番上に行ってみる?」


 お、知美ちゃん、けっこう元気になってるな。


「え? 地下行ってみようぜ、地下! なんかあるかもしれねぇじゃん?」


「断じて断る!! 教会の地下ほど怖いものはない!!」


 僕はとっさに叫んでいた。しかし、そうでもしないとこいつは無理やり地下のボタンを押しそうだからな。地下なんて御免だ!


 ウィーンのシンボル・シュテファン寺院の地下には何があると思う? カタコンベだよ、カタコンベ! ペストで亡くなった人の骨が並んでるの! あのトラウマを直すのに丸1週間はかかったんだからな、絶対御免だ! しかもこんな子供3人で!? 絶対呪われる!


「じゃあ、地下で♪」


 こいつ……笑顔で地下の階を押しやがった!! ドアは閉まっていたから、もうどうしようもできない。


 ああ、終わった。僕の人生はここで終わるんだ。ああ、知美ちゃん、キミの手だけが僕に生きる気力を与えてくれてるんだ……


「つ、着いたね...」


 ほ~ら、知美ちゃんも怖がってるじゃないか。大の大人だって、ここから出るのを躊躇うはずだ! 11歳の僕らが怖がって何が悪い!


「なに突っ立ってんだよ、ほら、行くぞ!」


 まさしく直立不動で突っ立っている僕らを洋ちゃんはエレベータから押し出す……なんでこんなことになってるんだ……僕はどこで間違えたんだ?


「ねぇ、何か聞こえない?」


 一抹の不安が脳裏をよぎる。確かに何か聞こえた。聞こえてしまった!


 しかもこれは……人の泣き声じゃないか?


「まさか……」


 声にならない声を押し出す。


「ドラキュラだ!!」


 洋ちゃんが駆けだした。おいおい、もし本当にドラキュラだったら血を吸われるんだぞ? 死ぬんだぞ? ……あれ、それともドラキュラになるんだったっけ?


「お~い! トモぉ! 知美ぃ!! 来てみろよ!!」


 また大きな声を出して……とにかく死んでないのが確認できたから僕はこのまま帰りたいのだが……


 知美ちゃんが僕の腕を引っ張る。はいはい、気になるんですね、分かりました。どこまでもあなたに着いていき……見てない、見てない、お墓なんて見てない、お墓なんてみてない……


 ん? なんだ、綺麗じゃないか。


 地下の中央は天井から電気の光が漏れてまさしくトリニティー!と言った感じだった。なんだ、トリニティーって……


「その子……誰?」


 洋ちゃんの隣には黒い服を着た僕らと同じ背丈の女の子が座っていた。どうやら怖がる相手ではなさそうだ……


 いや、どう考えても怖がるべきだろ。こんな時間に墓地に侵入する子どもなんて僕ら以外にいてほしくない。


「こいつさ、父さんとはぐれちまったみたいなんだ」


 洋ちゃんが立ち上がって言った。


「ほら、自己紹介してこいつら驚かしてやれよ」


 女の子が立ちあがりこっちを見る。青白い顔に八重歯が一際目立つ。


「あ、あの……こんばんは。ドラキュラのエリーザベト・アマーリエ・オイゲーニエです」


 おどおどと話す姿はどこかかわいらしかった。いや、今はそんなことを言ってる場合じゃない。

 なんだって? ドラキュラ?


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