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友達とのお昼休み

 さて、自己及び町の紹介はこれくらいにして、そろそろ本題に入っていこうと思う。ちなみに今は夏、最高気温は40度を越し、僕はヨーロッパにいながら日本の暑さとさほど変わらない地獄を味わっていた。


 家に帰っても冷房がないのは正直しんどい。平成生まれの日本人なら冷房のある生活しか知らないだろうから、熱帯夜で眠れないなんてことはないんじゃないかな。僕は毎日格闘してるけどね。


 ウィーンの日本人学校に通ってる友だちも同じ。ここに通ってるのはけっこうお金持ちの子ばかりみたいだけど、クーラーを持ってる子なんていなかった。もちろん学校にクーラーがついてるはずもなく、僕らは日本から取り寄せた扇子をぱたぱたしながら授業を受けなければならなかった。日の当たる窓際の生徒たちは、暑さのせいで頭から湯気を出していた。


「っよ! と~も!」


 昼休みになると、この学校に来て初めてできた友だち岩谷洋二郎が声をかけてきた。この子はウィーン歴三年目、お父さんが国連に勤めてるとかですごく金持ち。


 僕はお金持ちには自動的に頭が下がってしまう意気地なしなのだけど、この子はその息子というだけで別に気おくれせずに話せる。洋ちゃんは本当に元気な子で、この子の近くにいるとなんだか僕まで元気をもらえる気がする。


 ただし、運が良いというわけではない。ウィーン国立歌劇場の前で財布を盗まれているし、カフェのトイレに行ってるうちにカバンが消え、つまり盗まれ、学校に持ってきたアイポッドタッチは先週先生に取り上げられていた。それでもこの子は元気なのだ。


 よく小さなことでくよくよしてる僕の背中を叩いてくれる。


「一緒に食べよ、洋ちゃん、トモちゃん」


 長谷川知美ちゃん。僕と一緒の時期にここへ転校してきた日本人だ。両親の都合でウィーンにやってきたのも僕と同じらしく、すぐに友だちになった。僕たち3人はとっても仲が良くて、何をするのも一緒だった。


 掃除当番、調理実習、お昼は一緒に食べてたし、同じ家庭教師の先生の元で算数と国語、つまり日本語を習っていた。家庭教師の先生は優しい大学生のお姉ちゃんでウィーンには交換留学で来てるとか。そしてやっぱり音楽には縁があって、トランペットを吹いている。


「聞いたか? 中央墓地にでるお化けの噂」


 つかの間の沈黙を洋ちゃんが破る。


「お化け? ここはヨーロッパよ? ゾンビとかだったらわかるけど……お化けはないわね」


 流石頭脳明晰成績トップの知美ちゃん。お見事、その通り!


 ここは霊だの魂だの信じないヨーロッパ人の住む国だ。火葬しないんだから出るのはゾンビのはず。


「そぉ~だ! そうそう、お化けじゃない! ドラキュラだった! あの中央墓地、ドラキュラが出るんだってよ!」


 妖精やドワーフ、サンタクロースからエイリアンまで、あらかたの未確認生命体の存在は信じてきた僕だが、ここまで取ってつけたように言われては、疑わざるを得ない。


 ちなみに中央墓地とは、さっき言ったベートーベンやシューベルト、ヨハン・シュトラウスが眠る栄誉ある墓場。ドラキュラなんかに出てきてもらってたまるか!


「お前たち、信じてないだろ」


「見間違えじゃないの? ドラキュラみたいな格好してるヨーロッパ人なんていっぱいいるし」


 同感です。そんなのただの噂だよ、う・わ・さ。心の中で僕は舌を出していた。


「まぁ、当然の反応だよな! だからさ、今日、俺たちで調べに行かないか?」


 相変わらず洋ちゃんはアクティブでポジティブだった。てゆうか、後先を考えていない。でも、僕と正反対の性格だから僕は彼が好きなんだと思う。


 たぶん、それはあっちもそうで、正反対だからこそお互いに惹かれあってるところもあるんだろうけどね。こんなクラスのリーダー的男子が僕と友だちでいてくれるのは少し嬉しい。


「集合は夜9時。中央墓地入口ナンバー2で!」


「え、なに? ナンバー2って」


 ナイス質問、僕も気になった。てゆうか、洋ちゃん勝手に決め過ぎ! 待てよ、これがリーダーシップという物なのか。


「おいおい、岩谷も知らないのかよ……しょうがねぇな」


 洋ちゃんがプラスチックの箸をこっちに向け、カチカチ鳴らす。


「いいか、中央墓地はウィーンの中央にないとはいえ、ウィーン最大の墓地なんだぞ? 中に移動用のバスが通ってるほど巨大なんだ。それで入り口もたくさんあるわけ。だから、その中でも中央入口って呼ばれる2番口にしようって言ってるのさ」


「そこから入ればベートーベンのお墓も見れるの?」


 知美ちゃんはベートーベンのファンだ。なんでも、知美ちゃんも小学校入学前からピアノを習っていて、先生がベートーベンを心底愛していたんだそう。それで弟子の知美ちゃんも彼のファンになったという具合だ。僕は『エリーゼのために』しか弾けないけど、知り合ったばかりのころはよくその話で盛り上がった。ありがとう、ベートーベン。


「見れるとも! モーツァルトだって、シューベルトだって、ヨハン・シュトラウスだっているぜ!」


「あれ? モーツァルトは違うところに眠ってるって聞いたけど...」


「え~っと、確か……まぁ細かいことは気にするな! どうせ今日、確かめられるんだからな!」


 そんなこんなで集合時間と場所が決まったわけだけど、う~ん、お墓ってそんな夜遅くまでやってるのか? てゆうか、そこまでどうやって行けばいいんだろ……


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