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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
西方領域攻防編
80/174

方向性

「騎馬騎士本部が動かないのは、証拠隠滅の為である」

「なにそのスキャンダル? 初めて聞いたんだけど」


 驚く俺と何の話か分かっていないアムニットとミシュベルとは別に、リッツハークとフィーノは知っていたのかそれほど驚くことは無かった。

 あれ? 「こいつ、恐ろしいほどの情報網を持っているぞ?」ってのをやりたかったけど、これじゃあ恥さらしじゃないか。


「カタン砦に行った兵は皆無事に到着し、また定期連絡も行われていたそうだ」

「それっていつの話?」

「最後に伝令が来たのは3日前だそうだ」

「あぁ、なるほどね……」


 俺がカタン砦に突入したのは一昨日の事だ。行き違いと言ってしまえば簡単だが、その前にあの砦の兵士達の疲労度を見ればそれ以前からちくちくとやられていたのは確実だ。


 しかも、エルクースの話では補充の兵士もかなりの打撃を受けた状態で砦へ入っているのだから、その伝令が持ってきた報告は嘘だ。これはもうスパイが入っているとしか言いようが無かった。


「騎馬騎士本部では、この事を皇帝陛下に報告しようとする者とある程度捜査をしてから報告をしようとする者の二つの派閥に分かれるそうだ」

「まぁ、良くある派閥って言うか出来事だろうな」


 予定調和って訳じゃないけど、あの組織なら今頃分裂とまでは行かないまでも、かなりの確率で浮足立っていることだろう。


「そうなんだけどな。それで、カタン砦を取り返す為に騎馬200騎と歩兵400が編成される事になった」

「おい、それは本当か?」


 今まで静かにアバスの話を聞いていたリッツハークが、突然その話に食いついた。


「えっ、えぇ……そうですけど?」

「いつの話だ?」

「俺が――私が話を調べに行った時……それもちょうど帰ろうとしたときにロベリオン第二皇子が騎馬騎士本部へやってきて、その場でお決めになりました」


 ロベリオン第二皇子とは、皇帝陛下の正妻の子であり皇位継承権第二位である。第一位は、同じく正妻の子であるアドゥランだ。

 その後に2~3人続いた気がしたけど、今は必要のない話なので割愛しよう。


「他に何か言っていたか?」

「この数はアーサシュ大将がロベリオン第二皇子に、『今すぐだとどれくらい兵を出せるか』と問われた時に言ったそうなので、後続がいくつか続くはずです」

「そこに物資の話はあったか?」

「あ~……すみません。そこまでは、話を聞いていませんでした」

「ん……そうか。ありがとう」


 自分の担当している仕事を続けなければいけないのか、それとも別の任務に移動になるかと言う話なので食いついたようだが、アバスもその情報自体が新鮮過ぎてそれ以上扱えなかったようだ。


「でも、ロベリオン第二皇子が騎馬騎士本部に来たって事は、皇帝陛下にもある程度話が行ってるってことですわよね?」


 大好きなウルシェルツの料理に舌鼓を打っていたミシュベルだが、アバスの報告に違和感を覚えたのか口を挟んできた。


「それもそうなんだけどな。ただ今は皇帝陛下がお体を崩されているせいで、直接こういった話が耳に入らないように配慮しているのもあってのロベリオン第二皇子のようだ」


 今までそう言った話に耳を傾ける機会が無かったので知らなかったが、どうやら皇帝陛下の体調がすぐれないらしい。

 ただ、俺は興味が無いので全く気にしていなかったが、そういった事に詳しそうなミシュベルも知らなかったので、秘匿とまでは行かないまでも余計な騒ぎを起こさせないようにと元老院からの指示だろう。


 だが、皇子であろうともあの癖のある騎馬騎士本部の連中相手にどれほどの事ができると言うのか。


「とりあえず、騎馬騎士本部からの物資輸送の要請があるなしに関わらず、私たちがやっている投下用の箱は用意しておいた方がよさそうですね」

「そうだな。騎馬騎士本部が必要ないと言っても、正面切っての戦闘となればそれを行っている最中は物資を届ける事ができんからな。もしかしたら、その時に突然頼まれるかもしれないからな」


 やっとウルシェルツの雰囲気に慣れてきたフィーノが言うが、面白くなさそうにそれを見ていたリッツハークは自分のフォークをオイルランプで炙り、その熱々になったところをフィーノの手に当てた。


「熱っつぃ!! って、何すんじゃワレくそ!」

「おい、ここは酒場じゃないんだぞ。大声出したら他の客の迷惑になるだろ」

「あっ、おっ、すまん……」


 再び雰囲気に呑みこまれたフィーノは、赤くフォークの痕が残った手を擦った。

 アバスとミシュベルは全く気にした風では無かったが、アムニットの気持ちの悪い生き物を見るような目が印象的だった。ゾクゾクはしないよ?



 次の日、物資投下用の箱の一部ができあがった報告と共に、俺は騎馬騎士本部へと呼ばれた。

 あのおっさん`S()から蛮族に関して小言を言われるのかと思ったがそうではなく、全く知らない輜重隊をまとめ上げる会計科の人間から、物資投下の内容物と投下日時の話し合いがあっただけだった。


 この話は俺だけではなく、竜騎士本部のジェナス氏(こちらが本命だろう)も聞いていたので、あとで詳しく本部へ報告しなくても良いだろう。

 ウルシェルツでの投下云々の話は杞憂に終わり、投下物資と日時が決まった。あとはその日までに必要な物を作り、掻き集めるだけだ。


リ「奢ってもらって悪いな」

主「いえいえ。あっ、領収書ください」

リ「なんだ、それは?」

主「交際費として、あとあと必要経費として計上します」

リ「なんじゃそりゃ?」


 う~ん……、これから多く動き出すつもりですけど、なんだかダル重な進行具合ですね。

 もう少しさっさか話を進めていきたいです。


10月21日 誤字修正しました。

6月30日 ラフィスをフィーノに改名しました。

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