良案妙案実行案
「今みなさんが話し合っているのは、物資を直で投下すると中身が壊れるから、それを防ぐために家とか木製の建築物にぶつけようって事ですよね?」
「その通りだ。今のところキースが言ったように一つを広場に落とし、そしてその意味に気付いたエクルースに指示を貰うというものだ」
そう答えたのは、キース隊長と言いあっていた恰幅の良い竜騎士だ。名前はバース隊長。校長に聞いたところ、山岳偵察部隊の隊長だそうだ。
初め「無理があるんじゃないか」と言われていた作戦も、他に良いものが無ければ良案になるんだな。
「そこで私が提案すのは、クッション式の箱を利用するというのです」
「どういうことだ? 藁でも巻き付けて投げ入れるのか?」
「なるほど、頭が良いな」「藁なら馬の餌にもなるし、邪魔になることは無いな」と、一瞬にして俺の提案したクッション式の箱が藁で固めた箱に置き換わってしまった。
「いやいや。藁も良いかもしれませんが、それでは重くなりすぎるので」
「違うのか?」
「そうですね。そこで、私が提案するのは箱の周りに衝撃吸収用の骨組みを作ると言う物です。落下、後の衝突時にこの骨組みを破壊することで中心に取り付けた箱を守ります」
「その骨組みを取り付けたとして、どうしてそれが壊れることで中身が無事なんだ?」
「地面と衝突した際に出た衝撃は骨組みを通ります。その骨組みが頑丈であれば直に箱へと衝撃が伝わりますが、その骨組みをある程度脆く作っておくことで落下時の衝撃をその骨組みを破壊する方へと分散させるのです」
クッソ。こういった解説は車の衝突実験とかで原理は分かっていても、それをいざ説明するとなると全くできないな。畑が違うのもあるが、良い言葉が全く浮かばない。
「すまないが、どういった理屈でその……衝撃か? その衝撃が骨組みに伝わるのも、衝撃のせいで骨組みが壊れるのは分かるが、それが壊れることで中身が無事な意味が分からない」
参加者の一人が申し訳なさそうに聞いてきた。その質問者には申し訳ないけど、俺自身もそんなに詳しく説明できないので、本当に申し訳ない。
――とその時、静かな会議室に凄まじい張り手の音が聞こえた。それと同時に椅子が倒れる音も響く。
「いってぇ!!」
四角いテーブルの端、俺から見て左斜め前の竜騎士から発せられた音だった。
竜騎士は、何の拍子か分からないが椅子ごと倒れてしまったようだ。
「ななっ、何すんじゃワリャア!!」
その倒れていた竜騎士は勢いよく起き上がると、その隣に座っていた竜騎士に掴みかかった。
「貴様等、何をしている! ここは遊び場ではないぞ!!」
あまりにも場に不釣り合いな行為を始めた為、バース隊長はこめかみに青筋を立てながら騒ぐ竜騎士を一喝した。
その迫力に気圧されてか、騒いだ若い竜騎士は「ヒッ」と小さな悲鳴を上げて静かに席へついた。
「落ち着けバース。こんな状況で騒ぐには何か理由があるはずだ。若いからと言って無意味に騒いでいると決めつけるでない」
「ハッ、申し訳ありません」
確かにその通りだ、と自分の非を認めたバース隊長は静かに頭を垂れた。
カショール大将は騒いだ――頬を赤く腫らした竜騎士を見つめた。
「それで、何が起こったか言ってみるが良い」
「はっ、はいっ! さきほど、そこに居るロベールの発言内容について隣に座るリッツハークに聞いた所、突然殴られました!」
「それは本当かリッツハーク?」
カショール大将に聞かれたリッツハークと呼ばれた、これまた若い竜騎士は自分が事の当事者と言われているにも関わらず飄々とした様子で語り出した。
「私はあの学生の言っている意味が分からないと言うフィーノに、その意味を、文字通り身を持って教えただけです」
「なぜ私が殴られねばならん!!」
激昂し怒りが収まらないフィーノと呼ばれた、殴られた方の竜騎士は怒鳴るが、すぐにバーズ隊長に睨まれると黙った。
「ならばリッツハークよ、私も未だ理解できんので教えてはくれまいか?」
カショール大将が問うと、フィーノはしめしめと言った顔でリッツハークをいやらしい笑みで見たが、当のリッツハークは何の問題も無いと言った様子で頷いただけだった。
「分かりました。あの学生の言った事を、私なりの解釈と共に説明します」
そしてリッツハークは、俺の言った内容を簡単に自分の顔を使って述べだした。
まずは自分の頬を軽くはたいたのだ。
「この様に何もせずに叩いてはとても痛いです。ですが、こうすれば――」
そして次は、頬にリスの餌袋の様に空気を含んだ状態で叩くと、叩く音と共に間抜けな空気の抜ける音がした。
「この様にある程度、衝撃を和らげることができます。あの学生が言っている、骨組みを壊すと言うのは今私の口から出た息の事を言っているのでしょう」
こういうことだろう? と声に出さずに問うてくるリッツハークに、俺は頷くことで答えた。
資料が無いので何とか口だけで説明しようとしていたけど、確かに自分の顔があるのだからそれを使って説明すればよかった。
今までこんな会議の場で、こんな自身の体を使った説明などしたことがなかったので思いつきもしなかったけど、他の竜騎士たちがリッツハークの説明に納得したように頷いている所を見ると別に悪い事ではないようだ。
「なるほど分かった」
リッツハークのアシストによってカショール大将にも理解が得られ、俺は役目を終えたので椅子に深く座りなおした。
パラシュートは面倒くさいので話さなかったが、骨組み緩衝材の話だけで十分だろう。
あとは当事者だけで何とかしてつかーさい。
「ロベールの言った内容を私は高く評価しているが、他の者はどうだ?」
カショール大将の問いに、他の竜騎士たちは口々に了の声をあげた。
良い案が見つからず、ちょっと無理矢理な案からもう少し先へ行った案を出した俺はこれから少しだけ評価されるだろう。
「では今回の件は、発案者のロベールとそれを一番理解しているリッツハークに任せる事とする」
「――うん?」
何か恐ろしい事が聞こえたぞ?
リッツハークとフィーノは凸凹コンビとして活躍させたいです。
ちなみにこの二人も、あんなやり取りをしていますがどこぞの隊長クラスです。
ただ、年齢も若くなりたてなのであんな事をしてしまうんですねw
10月16日 誤字修正しました。
11月17日 誤字修正しました。
5月19日 リュッツハークをリッツハークに改名しました。
6月30日 ラフィスをフィーノに改名しました。




