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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
西方領域攻防編
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本部へ報告

 竜騎士(ドラグーン)育成学校へ戻って来たのが昨夜の夕方で、今は次の日の夕食を終えたところなので報告をしてからまるっと一日経った。

 帰還後、すぐに学校へ蛮族が居なかった事と砦が敵に包囲されている事を報告したのだが、学校が竜騎士本部と騎馬騎士本部に早馬を出したにも関わらず、騎馬騎士本部はその対策案が出ることなく今に至っている。


 痺れを切らした竜騎士本部は、相手のプライドを傷つけないようにそれとなく物資を運びいれに竜騎士(ドラグーン)を使ってはどうか、と案を出したそうだが、それにも反応は無かったそうだ。


 余りにも騎馬騎士本部にアクションが無さ過ぎる為、俺が見間違えたんじゃないかとの話も出はじめている。

 あれだけ命がけで侵入したにも関わらず、余りにも酷い言われ様だ。しかし、穴の開いた毛布は砦へ残してきたし、矢が刺さりまくったヴィリアは特に怪我をしていない。


 結果だけ見れば、そう思われても仕方が無いのかもしれない。

 夕食後の談話室で紅茶を飲みながら、俺はあの夜の出来事を思い出した。



「えっ……? 今、なんて……?」


 エクルースは、鳩が豆鉄砲を喰らったようなポカンとした顔でロベールに聞き返した。


「俺は、伝令でも何でもない。ただ蛮族を追ってこんな果ての地まで来ただけだ」


 再度、一言一句違わない言葉を言うと、エクルースは空気の抜けた浮き輪の様に背中を曲げてため息を吐いた。


「では……貴方は何の為に、危険を冒してまでこの砦に入ってきたんですか?」

「俺を伝令だと間違えて陽動を出した可能性があったからだ。実際もそうなんだろ?」

「そうです。そうですが……。援軍はどうなっていますか?」


 すがる様な声ではない、ただの事実確認の様な声色にロベールにはエクルースが相当参っているように思えた。

 貴族にしては粗野な感じがするので、たぶんたたき上げの百人隊長だろうとロベールは踏んだ。どれだけの武功を上げたのか分からないが、敵に囲まれた砦の防衛を味方がなかなか来ない中、士気を維持したまま過ごすのはかなりの重圧なんだろう。


「一週間くらい前に、騎馬騎士を中心とした援軍が西方遠征に向かったって聞いたが?」


 その騎馬騎士に居たヴァンデスは強風の為に帰還したが、それでも歩兵は西方――というか、この砦へ向かったはずだ。


「かなり損耗した状態で来ました」

「あぁ、そう」


 どれだけの兵が西方遠征へ行ったのか知らないが、かなりと言うんだから結構な数が死んだんだろう。

 なんとも惨い話である。


(こちら)から出した伝令が皇都へ着いた、と言った話を聞いたことはありませんか?」

「残念ながら、そう言った情報は聞いていないな。騎馬騎士と仲良く話し合う仲じゃないから、もしかしたら入れ違いだったのかもしれない。いつごろ伝令を出したんだ?」

「一昨日です。騎馬兵3人一組で、3ルートから放ちました」


 先の話から、囲まれたのは一週間近く前からだと言うのが分かる。見える範囲を囲っている敵兵を注意するのは良いが、俺が初めに突入してしまった敵はどうだろうか?

 敵は目の前に居るだけとは思っていないだろうが……。


「あの敵の後方――皇都の方にも敵は陣を敷いていたが、それは大丈夫そうか?」

「やはり、そうでしたか……」


 伝令を討つためなのか、それとも援軍を止めておく為の部隊か分からないが、敵は用意周到に布陣している。

 ならば、もうここで俺にできる事はないだろう。……いや、一つはあるか。


「では、夜が明ける前に俺は出る」

「そうですか。分かりました」


 はた迷惑な、伝令でもなければ援軍でも何でもない竜騎士(ドラグーン)は居ようが居まいが関係ないと言った様子で、少しだけ面倒臭そうに言った。


「今から全力で飛べば、皇都には夕方か日が落ちたくらいには着くと思う。伝令が無事かどうか分からないから、すぐにこの砦の現状を竜騎士本部と騎馬騎士本部に報告するつもりだ」

「お願いできますか?」

「俺だって無駄な人員損耗は嫌だからな。しかし、俺には何の権限もないから直ぐにどうのこうのできる訳じゃないから、そこだけは理解しておいてほしい」

「いえ、ありがとうございます。手は多い方がいいので、よろしくお願いします」

「分かった」


  そして、俺はヴィリアに跨ると砦を出た。



「ロベール様、お代わりはいかがですか?」


 唇を濡らす程度で飲んでいたつもりだったが、いつの間にか紅茶を飲み干していたようだ。


「ありがとう。貰うよ」

「はいっ」


 アムニットは元気よく返事すると、俺のカップへ紅茶を注ぎ始めた。


「あっ、私もぉ~」

「僕も」

「俺も貰ってもいいか?」

「私も頂きますわ」


 俺と同じく談話室でアムニットの淹れる紅茶を飲んでいた、ブロッサム先生と弟のヘリオン。アバスに続いてミシュベルもカップを出した。

 でぶっちょで大き目なポットだけど、5人分のカップに入れるほど容量は無いので、誰かは我慢することになるだろう……あっ、アバスが我慢組みか。


 アバスは男だから仕方が無いだろうけど、実はヘリオンも男なんだ。ブロッサム先生と似て体が小さく同い年に見えないけど。


「ロベール・シュタイフ・ドゥ・ストライカーは居るか?」


 と、まったりとした談話室の空気に似合わない硬質な声が聞こえた。


「なんでしょう?」

「本部に召喚された。すぐに来てもらえるか?」

「分かりました」


 席を立つ前に、折角淹れてもらった紅茶を一気飲み――は熱すぎてできないので、少し飲むだけでとどめた。


10月10日 ブロッサムの弟の名前を、カナン→ヘリオンに変えました。

       入れて→淹れてへ誤字修正しました。

       本文の初めの部分を書き足しました。

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