準統治領3
「今日、君たちに集まってもらったのは、管理領地選択の為だ。これは、この学校で伝統となっている、地方国民も帝国民としての自覚を促し税収を上げると言う事を目的としている。そう言った任に着く人間が、ここに集められたと言うわけだ」
その後、延々と同じことを繰り返し説明されたせいで、途中から気を失っていたかのように空白期間があるけど要約すればこうだ。
――国民にカッコいいところを見せて、人気取りして、税収アップさせようぜ――
ま、こんなところ。
「そこで、君たちは管理領地を選ぶこととなる。この資料に書かれている町が、今回の管理領地となる」
そういってテーブルの上に置かれたのは、羊皮紙の束だった。
俺は、日本人的な思考から最後に残った物を取ろうと思っていたけど、待てど暮らせど誰も一枚目を取ろうとしない。
どういうこっちゃ、と周りを見てみると、なるほどと気付いた。皆、俺に遠慮して取るに取れないのだ。
まずは、侯爵ボーイに選ばせて、残り物から皆は選択するみたいだ。先生も言おうか言うまいか困った様子で俺を見ている。
「ふん」
気恥ずかしさから喉を鳴らそうと思ったら、鼻がなってしまった。これでは、周りの皆に「分かっているじゃないか下等生物ども」と暗に言っているように取られてしまう。
ほらほら、周りも心なしか勘弁してくれって顔をしてるし。
これは速く選んで他の人たちに羊皮紙を回さないと、この会議自体が終わらない。
しかし、俺はこの世界の知識と言うか地図は全く頭に入っていないので、地名と主要産業とかしか書いていない紙を見てもさっぱりなんだよね。
「ロベール様にお勧めの領地は……こちらがよろしいかと」
見かねた教師が一枚の羊皮紙を渡してきた。この町なら知ってる。この学校からドラゴンで3分の所にある町で、俺も何度か行った事がある。
でも、折角大手を振って遠乗りができるのだから、やっぱり遠くの町が良いよね。やりたいこともたくさんあるし。
「シュベール」
「なっ、何でしょう?」
クラスメイトに声をかけると、明らかに警戒した声が帰ってきた。
「君の妹は、確か病弱で良く見舞いに行っていたな?」
「えぇ……そうですが?」
「ここは、この学校からも近い。ここには、君が行け」
教師から渡された一番近い町の管理領地を、俺はシュベールに渡した。
彼の事だから、あまり遠い管理領地に行ってしまうと、妹の事で頭がいっぱいになってしまうだろう。そのせいで安全確認を怠って、死亡事故に繋がってしまうかもしれない。
戦争以外で竜騎士の死亡原因は、一番に安全確認の不備だ。安全帯をしっかりと付けていれば、簡単に防げる事故が多すぎるんだよ、この世界は。
「あっ、ありがとうございます」
一体何をたくらんでいるんだ、と言う視線を向けてきたが、俺は知らないふりをした。
さて次は……と。
安全帯の重要性を説いたときの話――。
「50cmの高さがあれば人は死にます」
って言っても、この世界の住人のアムニットには理解ができないようだ。
考えてもみてくれ。頭部だけ考えれば、身長140cm+50cmの台=190cmの高さからの落下だ。
大人ですら死んだり、麻痺する可能性があるのだ。そんな事を説明して、やっとアムニットにも理解してもらえた。
だから後日、安全帯をプレゼントした。とても喜んでいる。
実用的な物をプレゼントされて喜ぶなんて変な奴、と思ったけど、どうやら俺からのプレゼントだから喜んだようだ。
7月3日 文章を編集しました。