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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
西方領域攻防編
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発見

 ヴィリアの睡眠不足が慣れない土地だからと言う訳ではなく、またヴィリア自身も十分に睡眠をとったとの事なので、俺は再び大空へ飛び上がった。

 先ほどまでの快晴とは打って変わって、今は厚い雲が空を覆い尽くしている。


 普通の竜騎士(ドラグーン)が飛ぶのは地上約500メートル辺りであり、()俺達が飛んでいる地上1500メートルの位置は積層雲と被るか被らないかの位置だ。


 なぜそんな高い所を飛んでいるのかと言うと、さきほど別の竜騎士(ドラグーン)が近くを飛んでいたからだ。

 仲間かとも思ったけど、ヴィリアが言うには違うらしい。戦闘行動を始めるか、とも聞かれたけど、こちらは対竜騎士(ドラグーン)用の長槍を装備していないので、相手への攻撃方法がない。


 ヴィリアが直接攻撃しても良いんだけど、それだとヴィリアが怪我をする可能性が高いので却下した。避けられない戦いであれば仕方が無いかもしれないけど、避けられる戦いで怪我をするのはよろしくない。


 幸いな事に、向こうはこちらに気付いては居なかったので、高度を上げるだけで事なきを得た。


「それにしても、今日は暗くなるのが早いな」


 日が落ちるのが早くなっている上に、今日は雲が厚くかかっているので余計そう思うのかもしれない。


「雨は来ないと思うが、これは早めに寝床を探しておいた方がよさそうだな」

「おっかしいなぁ……。ミーシャの言っていたことが本当だったら、そろそろ蛮族に会っても良さそうな距離なんだけど」


 西へ行こうにも、途中で蛮族を追い抜かしては意味がないのでジグザグに飛び、そのせいもあって今日は時間の割に進めていない。

 右も左も前も後ろも平原で、遠くには山があるくらいだ。そんな土地でどれだけの人数かも分からない蛮族を探す方が無理な話かもしれないが。


「もしかしたら、帝国兵はすでに壊滅したのかもしれんな」

「マジか」


 見つからなさ過ぎて確かにそう言った考えも浮かんではいたけど、いざ他人から言われると一層現実味と言うか理解を迫られているような気がしてくる。

 今は曖昧な所を飛んでいるが、国境沿いまで飛んで行ったりそれを越えてしまえば面倒くさい事になる。向こうの監視所がどの程度あるのか分からないが、国境を監視するところくらいあるはずだ。


 そこに見つかって追いかけられでもしたら、今後の動きに支障をきたしてしまう。そろそろこの辺りで戻るか――。


「居たぞ」

「なに!?」


 ヴィリアの報告によって思考を中断された俺は、直ぐにバッグから単眼鏡を取り出してその先を見た。

 確かに居る。それも、蛮族ではない統一された鎧を身に着けた兵士だ。


「ヴィリア、あそこ嘶きながら近づいてくれ。その後は空中を旋回しながら着陸。なるべく相手を驚かせないようにゆっくりとな」

「分かった」


 夜に向けてか野営準備はすでに終わっており、また皆くつろいでいたので最近蛮族に襲われたと言った様子は無かった。

 それでも砦へ向かっているので、戦闘装備はそれなりに持っているだろう。さきほどの他国の竜騎士(ドラグーン)を警戒している可能性もある。


「クオォォォォ――」


 普段の野太い咆哮とは違い、フルートの様な木管楽器を思わせる澄んだ伸びのある鳴き声が空に響いた。

 野営地に着くまでに4回ほど同じ鳴き方をしてもらい、そのお蔭もあってか兵士達はこちらの存在に気付いた後も慌ただしく動くことなく何人かは手まで振っている。


 その野営地の端の方で、一人の兵士が松明を持ってこちらへ向けて振っている。

 そこは開けた場所で、四方向に篝火が焚かれておりそこが簡易の竜騎場であることが遠目でも分かった。


「ヴィリア、あそこに着けてくれ」

「分かった。もう旋回は良いのか?」

「向こうも、こちらが味方であると認識した。射られる事は無いだろう」

「そうか」


 本来であればもう少しだけ旋回する予定だったが、野営地の兵士がこちらの事を味方だと認識したようなので旋回を途中で止めて滑空へ入った。

 ヴィリアは大きく風を含ませるように広げていた翼を小さくすると、速度が増してほぼ落下と言って差支えが無いくらい速くなった。


 ぐんぐんと近づいてくる地面に少しだけ恐怖を覚えたが、ヴィリアは地上約300メートル、野営地まで500メートル辺りになったところで翼を再び広げ、今度は滑らかに着陸ポイントである竜騎場まですべるように飛んだ。


「なるべく、風を起こさないように気を付けてくれ」

「善処する」


 これが、政治家が言った言葉だったら信用ならないが、それがヴィリアであれば最大限の配慮をしてくれるはずだ。

 もう辺りは夜闇が支配しており、ここで眠ることができなかったら危険なナイトサファリの開始となるので、できればここの兵士とは(いさかい)いなしで行きたい。


「うぉっ――と……」


 竜騎場のすぐ手前でふわり(・・・)と小さく上昇(あが)ると、ダウンウォッシュを全く発生させることなく着地した。地面でバタつかせずに、こんなに綺麗に着陸できるものなのかと感心すると同時に、着陸の瞬間に聞こえたドンと言う重い音がどれほどヴィリアの足に負担をかけているのか恐くなった。


「よお! 何か忘れ物でもしたのか?」

「えっ?」


 兵士からかけられた意味の分からない言葉に、俺は一瞬だけ呆けてしまった。


 夕日の沈みかけの時間帯は逢魔が時と言うらしいですね。

 西日が強く辺りが見づらい時間帯でもあり、また沈んたあとの明かりのロスタイムのせいで人は油断しやすいとかなんとか。

 そのせいで交通事故が多いそうです。

 日本の場合は、車幅灯→+フォグランプ→ライトと言った感じで時間帯や周囲の明るさでライトの付け方を変えますが、海外の方はONかOFFしかないそうで。

 アメリカ・フランス・タイの人から「なんでライトをつけないのか」と言われた時は驚きましたw(車幅灯+フォグ)

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