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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
西方領域攻防編
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ミーシャのワイバーン 2

「お~いっ! 降りてこぉ~い、ナハクックゥ~!!」


 (ミーシャ)に名前を呼ばれ、ナハクックは体勢を崩して滑空を始めようとしたが、ヴィリアの存在にビビってかまた直ぐに上昇していった。


「ナハ――」

「グォオオオオオオ!!」


 再度、ミーシャがナハクックの名を叫ぼうとしたとき、ナハクックの行こうか行くまいかと言った態度が気に入らなかったのか、ヴィリアが咆哮(さけ)んだ。


「うっはー!!」


 真後ろから咆哮を受けたミーシャは目の前がバチバチするするのか、両耳を押さえながらおかしな叫び声をあげ、ヴィリアにもたれ掛っている俺はその手に守られていたので、直接咆哮の被害に遭う事は無かった。


「おっ、降りてきた」

「おー! 降りてきた!」


 耳が遠くなっているからか、ミーシャは大声でナハクックが降りてきた事に反応した。

 接地まであと数秒となったところでいつでも動けるように、ヴィリアに助けてもらいながら立ち上がる。それと共に、ヴィリアも寝そべった体勢から半身を起こしたような格好をした。


 袖で口と鼻を隠してワイバーンが起こすダウンウォッシュに備えたが、ワイバーンは軽やかに空気を含むように降りてくると、ドラゴンとは違い強力なダウンウォッシュを発生させることなく着陸した。


「おかえりー! 全く、どこ行ってたんだよー!」


 ミーシャは、「よしよし」と戻ってきたナハクックを労いながら、その細い頭を撫でた。

 降りてくる途中から思っていたけど、ワイバーンと言う生き物は全体的にスリム――と言うか、骨と皮だけのように見える。


 飛行速度がどのくらいか分からないけど、ドラゴンとは違い小回りがかなり利きそうだ。

 そう考えるとドラゴンとは違い、ワイバーンが谷を好んで巣を作るのが理解できる。


「ナハクックも帰ってきたから、私も帰るねー」

「おぉ、気を付けて帰れよ」


 もう帰るのか、と思ったけどミーシャはこの川に沐浴に来ただけで、ヴィリアに驚いたナハクックに置いて行かれていただけだったので、その置いて行った張本人(張本羽竜(ワイバーン)?)が戻ってきたので、もうここに居る理由もないんだろう。


 ミーシャはナハクックの背中を駆けあがり、斜めになっていて乗りにくいであろう鞍に軽々と跨ると、鞍から伸びたロープを腰に巻きつけた。

 俺がつけている安全帯よりも強度的にだいぶ恐いが、それでも滑落の危険性が大きく減る。しかし、こう言った事故予防策を見るとミーシャやその一族と言えば良いのだろうか、その一族が素晴らしい人たちに見える。


 一方ユスベル帝国の竜騎士(ドラグーン)はと言うと、一部の竜騎士(ドラグーン)を除いて、そのほとんどが格好悪いと言う理由でイスカンダル商会の売っている安全帯を装着していない。


 そんな先見性のない、格好悪いからと言うアホな理由で自分の命を軽く見ている竜騎士(ドラグーン)はみんな死んでしまえ。


「よーっし! じゃあ、行くよー!」

「おうおう、早く行ってやれ」


 じゃないと、ヴィリアの存在にビビっているナハクックが可哀想すぎる。

 ヴィリアと目を合わせないように下を向いて、ときおり様子と言うか機嫌を窺うようにチラ見しては下を向く、と言った行動を繰り返しているのだ。


「飛べッ!!」


 ミーシャの号令で、ナハクックは空中へ飛び上がった。

 着陸時のダウンウォッシュはほとんど無かったけど、飛び上がる時は結構砂煙が舞うんだな。


 降りてくる時が大丈夫だったから、ちょっと油断してしまった。おかげて顔面に砂や草が大量についてしまった。


「まだ寝る?」

「いや、もうだいぶ寝た」


 二人になったのでヴィリアに話しかけると、ヴィリアは可愛らしく欠伸(あくび)をしながら答えた。


「慣れない土地で眠れなかった?」

「いや、昨日は友に会いに行っていて、それが原因だ」

「マジで!? 友達居るの!?」

「失礼だな。私にも友くらいは居る」


 ヴィリアの様に話すことができるドラゴンが近くに居るのか、と言う意味で聞いたつもりだったけど、ヴィリアは別の意味で捉えてしまったようだ。


「悪い、悪い。ヴィリアみたいに言葉を話せる奴が他にも居るのかってことだ」

「前にも言ったが、言葉を話せるドラゴンは私以外にも居る。たまたま近くに来たから、昨日は会いに行っただけだ」

「会う事は出来る?」


 ヴィリア以外の話せるドラゴンがどんな奴なのかかなり気になる。できれば、ヴィリアと同じように俺のそばに居て欲しい。これは、俺の我が儘だけどさ。

 そんな俺の気持ちを読んではいないだろうが、ヴィリアは俺の願いに首を振った。


「時期が来たら会せよう。ただ今は会すことができん」

「何で?」

「色々と面倒臭い理由があるんだ」

「そっか」


 申し訳なさがにじみ出るヴィリアの口調に、ただの意地悪で会わせないようにしているのではない事が分かる。それだけで十分だ。


「それに、奴は引きこもりだ。もう長い事、外へ出ていない」

「それは色んな意味で会すことはできんな」

「理解が早くて助かる」


 まさか異世界の、それもドラゴンが引きこもりになっているとはな!


 引きこもりの波がついに異世界へ……その上、ドラゴンにまで……。

 ヴィリアはドライな感じだけど、結構情に厚いので昔人間の子供を助けて、それが冒険者になって未来自分の所に会いに来る――と言った状況にもなるやもしれませんw


9月27日 誤字修正しました。



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