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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
西方領域攻防編
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河原の少女

 学校から許可が下りた蛮族の捜索日数はとりあえず4日だった。

 その4日までの間で捜索し、発見しても発見できなくてもとりあえずは帰ってくるように、との事だ。


 本来であれば従者と言うか護衛が学校から派遣されて俺に付くはずだったけど、俺が固辞した為つけられることは無かった。

 それにしても、侯爵家の長男であるロベールと言うのに、学校は護衛の件をあっさりと引き下がったものだ。


ヴィリアと話をし難くなるので護衛など居ない方が良いんだけど、こんなにもあっさりと引き下がられては()と言う存在――と言うか、侯爵家長男としてのロベールがそれほど重要じゃないんじゃないかと思える。


 それと、インベート準男爵が言っていた「帝国兵が国境(くにざかい)に砦を作る」と言った時には思い出さなかったけど、確か騎馬騎士本部で話を聞いた気がする。


 その時の内容では、ヴァンデスは蛮族の調査へ行くと言う任務を負い、他の兵士(・・)はその砦へ向かって行ったと言う話だ。

 規模はどれほどか忘れたけど、砦を築くと言うくらいなのだから結構な人数が行っているんだろう。


「ところで――」


 時刻は昼の少し前。場所は河原。そこで、俺――と言うかヴィリアが「喉が渇いた」と言ったので給水を兼ねて休憩を取っているんだけど、ヴィリアが昼寝に入ってしまったので足止めを喰らっている。


 昨日はほとんど飛んでいたので疲労も溜まっていたのだろう。それに、慣れない場所で寝たもんだから、疲れもとりきれていないのかもしれない。

 ガサツそうな外見をしているけど、ヴィリアは繊細なんだよ。――きっと。


 それでさっきの疑問に戻るけど、俺の眼の前の河原で水浴びをしている少女が居る。


「いや~、健康的だなぁ……」


 オヤジ的な発言で申し訳ないけれど、小麦色の肌と言うのか夏によく見るカラーリングの少女が水浴びをしているのだから、秋も半ばだと言うのに夏を感じずにはいられない。


 ってか、日焼けの痕とは水着の痕であり、そのコントラストが綺麗なはずなのに目の前の少女にはコントラストと言うか白い部分が無い。なるほど、痴女か。でも、お尻は色が淡いのでパンツを履く習慣はあるのだろう。


 そもそも、少女も周りに人が居ないか確認してから水浴びをするべきだ。俺は逃げも隠れもせずに、呼吸に合わせて上下する横たわるヴィリアの腹を枕にしてくつろいでいるだけなのだから。


 そうだと言うのに、少女は河原へやってくるなりポンチョの様な服を脱ぐ――と言うより、もはやパージと表現した方が良いくらいの勢いで脱ぐと、そのまま川へ突入したのだ。


 日差しは柔らかく、風は涼しいので川の水はさぞ冷たいだろうに、少女はそんな事を微塵も感じさせることなく楽しそうだ。


「まぁ、それにしても楽しそうで何よりです」


 誰に言うでもなく小さく呟き身じろぎをした。ヴィリアの背中にかけられたマフラーを取る為だが、やや長いマフラーを固い鱗を持つドラゴンの背を這わす事は出来ないので勢いよく引っ張ったらヴィリアの顔に当たった。


「ブェッシュ」


 マフラーの端が上手い具合に鼻を擦ったのか、ヴィリアはその姿に似合わない可愛らしいくしゃみをした。

 状況としては違うけれど、そんなベタな展開によって少女に俺の存在が露見した。


「おっ、おぉ!?」

「おっ?」

「おまっ、オマー!」

「おいおい、落ち着けって。いったい、どうしたんだよ?」


 最早、コントとしか思えないこのやり取り。しかし、俺はヴィリアの腹枕で横たわり、少女は両腕で胸を隠しつるんつるんの下は丸出しだった。


「何、覗いてんのさ! ってか、いつから覗いてたのさ!」

「覗いてないし、今も丸出しなのはお前の意志だろ?」

「だってだって、そこに座って見てるじゃん!」

「その前に、頭隠して尻隠さず状態のその姿を何とかした方が良いと思うぞ?」

「うん?」


 そう唸って、少女はノーガード戦法を取る自らの下半身へ目をやった。


「ぶわっぽ!?」


 少女はその可愛らしい顔に似合わない、悲鳴とも唸りとも取れる声を上げて川へと沈んだ。

 水の中から出された顔は水面を見つめ、恥ずかしさからか雄牛の鳴き声のような声を上げている。恥ずかしさを飲み込もうとしているだけのようだから、すぐにでも元に戻るだろうと少女の様子を眺めつつ時が経つのを待った。


 そして、その時はすぐに訪れる。川の中で呻く少女を、陸地からドラゴンに寝そべって見ているのだから、傍から見れば悪い貴族の他ない。

 そんな事に今更ながら気づいたくらいに少女が動いてくれたので、それはそれで良かったのだろう。


「服! 服を着るから、向こう向いてて!」

「うぃ~」


 寝そべっているので向こうとやらを見る事が叶わないので、俺は無理のないように上を見上げた。

 空には柔らかそうな雲がちらほらと点在しており、その合間を縫うように鷹だかトンビだかが飛んでいる。


 知らない土地で見ず知らずの相手から視線を逸らすのは危険だろうけど、先ほどまで大きく動いていたヴィリアの腹の動きがいつも通りの小さな動きになったのでたぶん大丈夫だろう。


「良いよ。もう、こっち向いても!」

「うぃ~」


 若干怒った風だったけど、こちらに落ち度は無いのであくまでも普通に返事をしなくてはならない。ここで上ずった声を上げては、各方面からバッシングがあるかも知れないからな。


 あぁ、今は異世界だからそこら辺は大丈夫か。なんたって、10歳で娶られる事だってある世の中だしな!


 大きく息を吸い込む=リラックス

 小さく息をする=平時

 ヴィリアの危険察知能力はたかそうです。だがしかしムカデ、テメェはダメだ。

 自分から向かってきて、道を塞いでいる(寝ている)から噛むとかありえんだろう。

 まだ自分は噛まれた事がないけど、噛まれた人はめちゃくちゃ痛そうだった……。

 しかも、頭を切っても半日以上動いてるとか、もはや生き物とかそんなカテゴリーじゃないでしょ……。


9月21日 誤字修正しました。

12月15日 誤表記を修正しました。

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