開拓の町へ
太陽が地平線へと吸い込まれていく。
水平線に沈むのはたまに見る機会があったが、地平線自体が少なかった日本ではあまり見る事が無かった光景だ。ただこの光景はこちらへ来てから何度も見ているので、今さらと言った感じがある。
なのに、なぜそんなに感傷的になっているかと言うと――。
「今日はどこで寝ようかな」
「森以外ならどこでも良いだろ?」
ヴィリアが居れば野生の動物が襲ってくる事はほぼない。怪我=死と言うのが常識の自然では、力量差がどれほどあるのか考えなくては長生きができないのだ。
だがそんな自然であっても例外と言うのが存在しており、時折何を考えたのか襲ってくるのが居る。
そんなのはヴィリアが一捻りで殺すが、数が多かったり木の上から直下してくる奴らには対応しにくい。
その辺りを危惧すると、できれば町で眠りたい。それがダメなら二次元で戦闘ができる平原が良い。
「水場が近くにあって、寝ころべるくらい地面が平らな所がいいんだよ。できれば、乾物以外のご飯が食べたい」
「土が硬すぎなければ、私が均してやるよ。食事は――まぁ、何とかなるだろう」
そう言ってヴィリアは首を地面へ向けて、今夜の寝床を探し始めた。均してくれるのは嬉しいけれど、俺は町に行きたいと言う気持ちで一杯だ。
「日が沈んでからもまだロスタイムがあるから、そこまで飛んで何とか町へ行こう」
良い? と聞くとヴィリアは軽く笑うだけに留めた。答えるまでもない愚問である、と言いたいのだろう。
ドラゴンとはそれなりに夜目の利く生き物だ。そうであっても、夜間に飛ぶことは少ない。
理由は「眠い」と言うのが大半だが、夜目が利くとは言っても明かりが少なければそれだけ危険が増すと言う事で、地面との距離を見誤り激突する事故が発生している。
平時では稀だが、戦争中は帰還が遅れたせいで夜となり、自陣へ降りる時に仲間を巻き込みながら激突すると言うのがみられる。
「ならば、もう少し南西へ下るか」
「何で? 何か見えた?」
「食い物の臭いがする」
そうヴィリアは言うが、俺の鼻では何も感じない。マフラーを外して周囲の空気を嗅ぐが、秋の乾き始めの風が鼻腔をくすぐるだけだ。
その南西の方を見ても、視界に入る範囲では建築物を見つける事が出来なかった。
ドラゴンは目が良いとは知っているが、鼻がそこまで良いとは初耳だ。そりゃ、人間よりは良いと思うけどさ。
「よし、行先はヴィリアに任せる。暗くなって降りられなくなると困るから、降りる地点はヴィリアの判断で頼む」
「分かった。では、増速すぞ」
ブォオ! とヴィリアは風を殴りつけるように翼を大きく広げると、進行速度は加速度的に増した。
さきほどまでの、ゆったりとした飛行が嘘のように地面が流れていく。スピードメーターが無いのが悔やまれる。
★
「本当に町が在ったわ」
ヴィリアが言った通り、飛んで行った先には町が在った。それも、小さな町ではなく結構大きな住民が千単位で住んでいる町だ。
「こりゃ、確実に領主の住む町だな」
「グオ」
大通り――と言うほど大きくは無いが、通りをヴィリアに乗って町の中心部へ向かい歩を進める。
時間のかかる歩きでの移動は、町中に直接降りると事故が起きる可能性があるし、それ以外にも敵国竜騎士の奇襲と間違われて撃ち落とされる可能性があるからだ。
さすがに確認もせずに落とすことは無いと思うが、万が一を考えての着陸だ。
そして、なぜヴィリアが言葉を話さないのかと言うと、日が落ちたと言うのに畑で働いている人たちが居るからだ。
西へ進んでいたがヴィリアの考えで少しずつ南下していたようで、マシューや皇都ではあまり見なかった冬作用の畑作りをしているようだ。
その農民たちは竜騎士が珍しくないのか、体の大きなヴィリアに目を丸くしつつも、上に乗る俺に対して失礼にならないように軽く会釈をしてくる。
「グオガァ」
「ん?」
ヴィリアに促されて前方を見ると、鎧に身を包んだ騎馬兵士がこちらへ駆けてきた。
編成は3騎。槍は携えておらず帯剣のみで、先頭を走っている隊長と思われる兵士は頭に鳥のトサカの様な物を付けているので、誰何の為ではなく歓迎の為に派遣された兵士だろう。
町の近くまでは飛んでいたけど、それから降りているので町から見えたのはほんの僅かな時間だったはずだ。
そのわずかな時間で相手が誰なのか考慮し、そして歓迎の馬を走らせる行動力はこんな外れの町であるにも関わらず、さすがは領主住みの町だと唸らわざる負えない。……これで領主が居ない普通の町だったら恥ずかしいけど。
「竜騎士の方、ようこそバルシュピットへ!」
先頭を走っていた隊長は小さなちょび髭を付けた40代くらいの男性だった。夜の帳が降り周囲が静かになっているのもあるが、良く通る声だった。
「突然の来訪申し訳ない。西への任務の為に飛んでいたが、夜になったところでこの町を見つけた。できれば一晩休みたいのだが、領主様は御在領か?」
「はい。人の往来が少なく、屋敷まで道のりを不作法ではありますが案内させていただきます」
「こちらへ」と促され、隊長の後ろを着いて歩き出した。他の2人はヴィリアの後ろをいい感じに離れながら付いている。
馬がドラゴンの存在に臆していない所を見ると、この町にも竜騎士が存在しているのだろう。
地平線なり水平線なり、太陽の出入りってめちゃくちゃ早いですよね。
釣りをするときに夜明け前からやっている時が多いんですけど、東を向いて釣っていると太陽が出ると「眩しい! 目が、目がぁ!!」となります。
しかも、ちょうどナブラ(大型の魚が小型の魚を追う状態)が起きていると、そこにルアーを投げたいのに眩しすぎて目が開けられない酷い状況となりますww
9月18日 文章を少し変えました。脱字修正しました。
9月20日 タイトルを変更しました。
4月6日 誤字修正しました。




