表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
西方領域攻防編
52/174

戦いの前に(ヴァンデス陣営)

「ねぇ、ヴァンデス。お願いだから、こんなバカな事はもう止めて」


 ミナは、何回目になるか数え疲れてしまった、自分の主とクラスメイトのヴァンデスの一騎打ちを辞める言葉を言った。


「何を言っている! これは、騎士の本懐を忘れた者に対する正義の鉄槌だ!」


 鼻息を荒く息まく元同級生(・・・・)を見て、ミナは重々しくため息を()いた。

 前々から独断専行的な面はチラホラと散見され、その度にチームメイトとも衝突していたヴァンデスだが、兵士学校を卒業してからその傾向が強くなった気がした。

 ミナは主のロベールから貸してもらったナイフ(・・・)を胸に強く抱いた。


「それよりも、寒くは無いか? 夏が過ぎて、最近は涼しいと言うより少し寒い風が吹くからな」

「大丈夫よ。でも、久しぶりに訓練服を着たけど結構粗い作りなのね」


 ヴァンデス経由で借りた兵士学校時代の訓練服は、当時は頑丈で動きやすく良い服だと思っていたが、今着てみるとゴワゴワとしていて縫製が粗い部分が多い。


 消耗品の量産品なので、奴隷になってから着せられていたメイド服と比べるだけ無意味だが、それでもどれだけ良い物を着せてもらっていたのか、この服を着ることで良くわかった。


「ヴァンデス様。ローエンヌの奴は、本当に来るのでしょうか?」


 ヴァンデスのやや後ろに控えていた騎士が、耳打ちするように言った。

 帝国騎馬隊第103部隊の副隊長を務める騎士で、部隊運営にまだ慣れていないヴァンデスの補佐役として存在している。


「来る。あいつは自己顕示欲が強く、自分の物は絶対に他人に渡さない。それに、金に物を言わせて傭兵を大量に連れてくる可能性があるからな」


 それらを考慮して、ヴァンデス達の後ろには第103部隊から15騎ほど連れてきている。

 これで戦をするのであれば見劣りしてしまうが、一騎打ちで連れてくる数としては多いくらいだ。手出しをさせるつもりは無いが、相手の士気を崩すのに十分な迫力はある。


 勇ましい言葉を言ってはいるが、ヴァンデスとしてもできれば交渉で済ませたいと思っていた。小競合いに発展させてしまっては、皇帝陛下より貸与されている騎馬騎士隊を私用で動かすことになるからだ。


「はぁ……」


 ロベールが、自分が竜騎士(ドラグーン)であると言う事を隠したがっていたのがミナの目から見ても明らかだったので、今までミナの口からヴァンデス達にその事を話していない。


 ただ、この一騎打ちでロベールが本気になれば、ここに居る騎兵だけではまず勝てないのが火を見るより明らかだった。その様な結果を出した理由は、ロベールとロベールが駆るドラゴン――ヴィリアの信頼度だ。


 ロベールはヴィリアを思い遣り、ヴィリアはそんなロベールを慈しむようにみているのだ。

 そして、互いに会話をしているのではないのだろうか、と思わせるほど意思の疎通は完璧と言っても良いほどだ。


 かの有名な騎馬騎士であるガリーナ・レバイヨットは「私と愛馬は、口は利けないが心は()ける。心の通えていない騎馬騎士百騎と相対しても、私は愛馬とであれば切り抜ける自信がある」と言っている。


 それほど、主獣(・・)の信頼関係とは戦場において大切な物であり、ある意味武器なのだ。

 だからこそ、あの一人と一頭――いや、二人(・・)は強い。


「ドラゴンが飛んできます!」


 騎士の言葉に、ミナの思考が中断された。

 その声を発した騎士が指さす方を見ると、ドラゴンが飛んでいる。それも、一頭ではない。


「何だ、あの数は? キリッカ第三訓練場(ここ)で演習でもする気か!?」


 キリッカ第三訓練場は、騎馬の為に作られた訓練場だ。運用方法が違う竜騎士(ドラグーン)が来ることはまずない。あったとしても、竜騎士と騎馬隊の連携訓練くらいなもので、そう言った訓練がある場合、事前に申し渡しがされている。


「(あぁ、来てしまった……)」


 自分が蒔いた種のせいで、主であるロベールに迷惑をかけてしまった。そう思うと、ミナの胸は締め付けられるようにシクシク(・・・・)と痛んだ。


 前回は、主人公が偽物と実は各方面にばれていたという話ですが、なかなか好評だったようでw

 この私闘(・・)が、今後の大きな出来事の引鉄に……。


 そして、騎馬騎士と竜騎士(ドラグーン)の運用方法についてですが、騎馬騎士は戦場の花形としてその機動力を生かして敵陣に切り込んだり、と通常通りです。

 竜騎士(ドラグーン)は、ドラゴンが馬のように計画的に産出することができないので絶対数がたりません。

 なので、少数での空中からの奇襲(一撃離脱)やその頑丈さを利用しての前線から情報を集めてくる。

 そして、こう着状態になった時の一騎打ちなどがあります。


 歴史書にも、いつごろからドラゴンが人によって飼いならせるようになったか書かれていないので詳しくは分かりませんが、昔話には正義の騎馬騎士(当時は『騎士』表記)と悪のドラゴンと言った話が多数存在します。

 寝物語が多数存在する騎馬騎士と空を飛び目立つドラゴンを駆る竜騎士(ドラグーン)……。互いに、良いなぁと思っている部分がありそうです。

 だからこそ、仲も悪そうw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ