決闘へ
☆ブックマーク登録件数300突破!☆
拙い作品ではありますが、読んでいただき本当にありがとうございます。
感想や質問があればどしどしどうぞ! ガンガン答えさせていただきます。
そして、よろしければ評価もお願いします(やる気がUP↑UP↑しますので……)
それでは、ごゆっくりどうぞ。
「ハハッ。その騎馬騎士は、頭の中が腐っているのではないのか?」
「腐っているだけなら良かったんだがな。そこに貴族としての力も加わっているから始末に負えん」
「ふん……」
ヴィリアは鼻を鳴らして、俺の後を着いてくる。だが、その顔は静かではあるが凄味のある笑みを浮かべている。
竜騎士育成学校に戻ってから、放牧地と厩舎を行ったり来たりの生活なので、俺が決闘をする事になったと言う話に一番良い食いつきをしたのだ。
だが、その相手が騎馬だと聞いて、一気に意気消沈すると共に相手に対して悪態を吐きだしたのだ。それでも、ヴィリアの顔を見れば、絶対に手加減をするつもりはなさそうだ。
「ロロッ、ロベール様ッ!」
竜騎場で鞍などの最終点検を行っている俺へ、慌てた様子で駆けてくる二人が居た。
ドラゴンを引いているアムニットと素手のミシュベルだ。アムニットはいつも通りだが、ミシュベルはおっとり刀と言った様子で、豪奢な鎧にズレが生じている。
その後ろには、ミシュベルのドラゴンを引いた執事が走っていた。
「あのっ、ロベール様、決闘に行かれるとは本当ですか!?」
「ミナさんが攫われたと聞きましたが、本当ですの!?」
同時に心配事を口にするが、二人の声が重なり合って非常に聞こえづらい。
「あぁ、どちらも本当だ。だから、今から返してもらう為に行くんだよ」
辛うじて聞き取れた先の一言目にのみ返答し、二人が息を整えるのを待った。
遅れる事数十秒で、その後ろからはクラスメイトが何人かドラゴンを引き連れて駆けてきている。
「お一人では危険ですので、私も付いて行きます」
「そうですわ。それに、爵位持ちの数は多い方が良いかと思いますわ」
その爵位持ちは、駆けつけてくれたクラスメイトのほぼ全てだ。一番高い爵位で、ロベールの父親の侯爵で次いでクラスメイトの伯爵位だ。
他には――いや、止めておこう。折角駆けつけてくれたのに、爵位云々で考えるのは良くない。
「自らの力不足のせいで、皆の手を煩わせてしまって申し訳ない。ただ、今回は示威行為のみで頼む。相手は騎馬騎士であること以外分かっていないからだ」
相手の素性については、騎馬騎士でありミナの同級生以外本気で分かっていないので、そこは正直に話した。ここで適当な事を言って、いざ事となった時にこちらの手出しを最小限に抑えたいからだ。できれば逃げるのが一番の得策だが。
皆は俺の言った事を了解して頷いた。
「それじゃあ、これから頼む」
「「「おぉ!」」」
全員が手早く点検を終えると、各々のドラゴンに跨った。
「おいっ! これは、何の騒ぎだ!」
本日の竜騎場管理の生徒であろう上級生が、鎧を着こんでドラゴンに跨る俺達を見つけると怒鳴りながら近づいてきた。
「義は、我にあり!」
その上級生に負けない――それ以上の大声を張り上げてアバスは言った。同時にドラゴンの前足を上げさせて屈とうの様なポーズを決めさせた。
ドラゴンは、いつも伏せの状態で居ることが多くその状態でも威圧感がある。それが嘶きながら立ち上がるのだから、いくらドラゴンに慣れた上級生と言えども、突然やられては後ずさりするしかなかった。
「目的地は、キリッカ第三訓練場! 相手は何人で来るか分からないから、気を抜くなよ!」
一番体格の良いヴィリアが滑走して飛び立つに続き、後続がどんどんと空へと上がって行った。
★
「何てことだ……。まさか、あれしきの荒天で引き返してきたとは、ユスベル帝国騎馬隊の名が泣くぞ……」
竜騎士育成学校のとある一室から、仲間を引き連れて飛び立つストライカー侯爵の息子と呼ばれる人物をみやった。
「どうしますか? 今から急げば止める事もできますが……」
先ほど、呻くように呟いた男に対し、若い――まだ学生と言っても相違ない年頃の女性が言った。
帝国騎馬隊第103部隊に所属している、ヴァンデスと呼ばれる青年はストライカー家の息子であるロベールと面識がある。
だからこそ、あの日から第103部隊が西方遠征に行くまでロベールを謹慎処分と言う名の元に、竜騎士育成学校に半軟禁の様な状態にしておいたのだ。
そして謹慎明け――第103部隊が遠征後に謹慎を解いたのだが、さきほど聞いた話によると嵐が近づいていたらしく騎馬隊は引き返してきたのだそうだ。
ただ嵐と言ってもその余波の様な物なので、実際は雨風が強いだけで2~3日で治まる物がほとんどだ。今回の場合は森でやり過ごすことができたはずだった。
「いや、良い」
「良いのですか?」
「良くは無いが、今すぐ打てる手は無い。今回の騒動の切っ掛けは、リーオングラデイン家の息子がストライカー家の息子が所有している奴隷に興味を持った事が始まりだろう?」
「そのように聞いています」
男の言葉に女性は頷いた。ただその女性から言わせると、あれは興味を持ったのではなく好いているため、あのような先走った行動に走ったのだろうと考えている。
「ならば、やりようはある。何かあった時の為に、リーオングラデイン家に手紙を出す用意をしておいてくれ」
「分かりました」
この学校に通っているロベールは本物ではない。それが分かったのは、生徒としてこの学校へ入学を許可してからだった。
ストライカー侯爵家が何を考えて別人を送ったのか分からない――いや、この皇都まで聞こえてくる蛮行を聞けば外聞を気にして別人を送り込むのも分かる。
ただ、先の準統治領で行っている石鹸や紙の製造を行う知識の深さは驚嘆に値し、また先の仲間を連れて動ける求心力は竜騎士にとって必要な物だ。
ならば、100年後の未来の為に、あの偽物には活躍してもらわなければいけない。
そう、男は考えていた。
すでに、学校にもばれてーらw
学校側から何のアクションがなかったので、まだバレていないと思っていたのに……。
しかし、本人は知らないのでばれないように奮闘しますw
そして、あの謹慎は学校側の思惑によって起きた出来事でした。しかも、お酒回で西方に遠征した云々がありましたが、それに参加していたヴァンデス君は荒天の為に引き返したようです。
9月11日 あとがきを編集しました。
12月4日 爵位修正しました。




