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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
西方領域攻防編
45/174

本日は荒天なり

富士山山頂から日の出と共に更新です!!

 謹慎が解けてから数日後、俺とミナは飲食街を歩いていた。

 夜――とりわけ門限まで時間があるので、前回のようなへまをする事はないだろう。フラグじゃないよ?


「やはり、この辺りはいつ来ても活気がありますね」


 髪をブロンドピンクに染め、訓練用の(ボロ)を着たミナが楽しそうに言った。


「そうだな。衛生概念に不安を感じる店舗が多いけど、またそれも良し……。ってか、今は姉弟(きょうだい)って設定なんだから敬語を使うなよ」


 俺も、ミナと同じように髪を染めており、オレンジ色と言う日本では結構目立つ色であるが、この世界ではポピュラーな色に染めており、ミナと同じくボロを纏っている。


「そっ、そうで――そうだね。うん。じゃあ、ロンくん。どこに行こっか?」


 すぐに意識をメイドから姉へと切り替えたミナは、俺の名をロンにして跳ねるように聞いてきた。


「いつもの飲み屋は、そろそろ飽きてきたからなぁ。新しく聞いた所にも行きたいけど、そこは結構臭いがキツイって言ってたし……」


 口コミで教えてもらった豚肉を使った料理が自慢の店なのだが、そこは美味い代わりに調理時の油臭さが服に強く移るらしい。

 ただの労働者だったら気にしないだろうけど、俺もミナも食った後は学校に戻らないといけない。

 謹慎が明けてすぐに、酒やそう言った類の臭いをさせて帰るのはさすがに体裁が悪すぎる。


「そうさなぁ……」


 こういう時は、男がビシッと決めたいところだけど、生憎とこの世界にはそういった文化が無い。のんびりと決めるのが、相手の事を思いやっていると言う文化なのだ。それに、レディーファーストと言った文化も存在しない。


 現に、隣に居るミナはニコニコと満面の笑みで俺が店を選ぶのを待っている

 思考がそれてしまったけど、どこの店にしようか選んでいると、後ろから柔らか重いクッションがのしかかってきた。


「だ~れだっ♪」

「うごぁ重いたたたたぁあ!?」


 メキゴキと背骨から嫌音を出しつつも、俺は後ろからのグラビティに屈することなく、何とか立っている。

 じんわりと、首筋の内側が熱くなる気持ち悪さを堪え、俺は首だけで後ろを振り返った。


「だっ、誰……?」


 俺に圧し掛かっていたのは、歳の頃20代半ばから20代後半の女性だった。トーガの様な肌の露出がほとんどない服を着ており、かなり濃い目の化粧をしている。

 誰コレ? こんな人、見たことないよ……。


「あら、酷いわ。この間は、あんなに熱い抱擁をしてくれたのに」


 頬ずりをするように耳元で話す女性の仕草に、そこでやっと気づいた。この女性は、あの時、貴族を口で負かした時に俺を支えていた娼婦だ。

 あの時は、周囲はすでに暗く光源は松明の明かりだけだった。その為に、娼婦の顔は見えにくくあまり視界に入って来なかった。まさか、こんなにも化粧が濃かったとは……。


 決して、胸にばかり意識が行って顔を見ていなかった、なんて事は絶対にない。絶対に、だ。


「ちょちょっ、ちょっと! 何してるんですか、止めてください! ロンくんの首の骨が折れたらどうするんですか!」


 苦しんでいる俺を助けようとミナが俺の腕を引っ張ると、コペン、と間抜けな音が俺の方から聞こえた。なお、脱臼ではないもよう。


「おまっ、お前ら、ふざけんなよ……。マジで痛いんだからよ……」


 訓練場にも行っていないのに、外に出てきただけでもうボロボロだ。特に背骨が。


「本当に、あなたは何をするんですか! まったく!」

「ふふっ、ごめんね。でも二人で何をしているのか気になっちゃって」


 自分の事は棚に上げて相手を問い詰めるミナに、娼婦は軽く笑って受け流した。

 さすが客商売と言うべきか、それともミナが苦手意識を持っているから突っ込めないだけなのか、娼婦はニコニコとした表情で俺達を見ている。


「それで、二人とも何をしてたの? まだ明るいのに、お酒を飲みにきたの?」


 クイックイッ、と娼婦はジェスチャーでコップを傾ける仕草をした。


「あぁ、この間は夜だったから大変な事になったからな」

「あの貴族()ね。ちょっと前まで良く見てたけど、最近見なくなったわね」


 俺は、謹慎処分の事を言い、娼婦は俺と言いあった貴族をそれぞれ大変な事と理解したようだった。

 そして、娼婦の話によると、あの貴族は俺と舌戦を繰り広げてから数日間、時間帯はバラバラだが飲み屋街をうろついていたらしい。


 そこで飲んでいる人たちは「きっと、あの子供(オレ)を探しているのだろう」と考え、俺が飲み屋街に来た時はすぐに知らせようとしてくれていたらしいが、謹慎中の俺が飲み屋街に来ることもなく、少々拍子抜けしたらしい。


「でも、いつ来るか分からないから注意してね」

「分かった。それじゃっ」

「あっ、ちょっと待って!」

「ぐぎゃぁ!?」


 再び飲み屋を探して歩き出そうとすると、また娼婦に止められた。しかも、声だけではなく腕を掴んでの引き止めだったので、俺の前進と娼婦の引き止めの合わせ技で腕の骨が折れ――てはいないのが不幸中の幸いだ。


「お前、マジでふざけんなよ! 俺の体は、そんなに頑丈じゃないんだよ!」


 奴隷時代から、俺は筋肉じゃなくて頭で喧嘩するタイプだったんだよ。それなのに、寄ってたかってボコスカと滅茶苦茶やってくれる。


「ごめんね~。でも、この間のお礼がしたくって」


 本当に謝っているのか分からない――ってか、そんなに悪いとは思っていないから、ウィンクしながら謝罪をしたのだろう。

 娼婦は、先の舌戦で娼婦と言う仕事を庇ってくれた俺に対して、飲み屋を奢ってくれるらしい。


 金には困っていないので、別に奢りだろうとそれほど嬉しくないのだが、それでも俺が奢られないと娼婦が離れてくれそうになかった。

 諦めが肝心、と視線だけでミナを見ると、ミナも諦めた様子で頷いた。


「あぁ、分かった。ありがたく奢ってもらうよ」

「そうそう! そうこなくっちゃ!」


 娼婦は、そのまま俺の腕を組み、その奢ってくれる飲み屋がある方向へ向かって歩き出した――その時。


「オラァ! 危ねぇだろ!」


 背後からの怒声に驚いて振り向き、ミナは怒声方へ俺を背に隠すようにして前に出た。

 しかし、その怒声も一瞬のことで、辺りはいつもの事なのか直ぐに普段通りの喧騒を取り戻していた。その声を上げたであろう人物も、ぶつぶつと何か呟いているが普通に歩いているだけだった。


「なんだ、なんだ?」

「喧嘩――では、なさそうですね」

「なら良いけど。とっととここから離れるか」

「それが、良いですね」


 相談するのも少しの事で、娼婦が「早く、早く」と腕を引っ張るのでそれ以上の詮索は止めて歩き出した。


 さすがDoCoMo!

 ぼったくり料金を徴収しているだけあって、富士山山頂でもバリ3だぜぇ!!

 

 それでは、今から下山します……(´・ω・`) モウツカレタヨ……


 次回の更新は、木曜日を予定しています。


8月18日 誤字を修正しました。

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