メニフィレスという人物
ちょっと短いですが、ご容赦を。
「ようこそいらっしゃいました、徴税官様。私は、竜騎士育成学校から派遣されたロベールと申します」
「初めまして。フィルドーから派遣された、徴税官のメニフィレス・ブラストです」
しっかりとした堅苦しい口調で、メニフィレスは自己紹介をした。互いに立ち、テーブル越しに握手を交わす。
20歳を越えるか越えないかくらいの年齢で、ショコラブラウンの髪の毛を後ろでまとめて仕事ができるOL然とした容姿だ。顔は、切れ目が特徴的で冷たい印象を放っている。
知識奴隷のミナも、似たような堅苦しさがあるけど、あれはどちらかと言うと奴隷として作ったような感じだしな。これは、本当の根っからの真面目さんだ。
お掛けになってください、と言ってから互いに座った。アムニットは、俺の後ろに控えさせている。
「この度は、遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます」
「ありがとうございます。ですが、これも仕事ですので」
固いなー……。もっとフランクに行きたいぜ。普通なら天気の話や出身地の話でもして緊張を解きほぐすところだけど、今からフィルドーの話をしたらおかしいしな。
遠路はるばるとか行っちゃったし。お疲れ様と言う思いはあるけど、フィルドーがどこにあるのか分からないので、そこが遠路かどうかも分から無いしな。
「えっと、ラザール様からお手紙を預かっています」
「拝見します」
蝋で封をされた羊皮紙をメニフィレスから受け取ると、ペーパーナイフで封を剥がし、中を見た。
内容は、簡単な挨拶に始まり、挨拶に行かなかったことに対しての遠まわしの皮肉を込めた話、そして俺の眼の前に居るメニフィレスを好きに扱っても良いと言う内容だ。
好きに、と言う意味は、手紙に彼女が処女だと書かれている事から、人材としてではないと言うのが見て取れる。
「ふむ……」
可哀想にな、とメニフィレスをチラ見すると、何を書かれているのか気になったのか表情がやや不安そうに曇った。
「あの……手紙には、どういった内容が?」
「別に、君はまだ仕事に慣れていないから良くしてやってくれ、と書いてあるだけだ」
俺の嘘に、メニフィレスは故意ではないだろうが、あからさまな安堵のため息を吐いた。
その様子から察するに、向こうで何らかの打診的な話はあったのかもしれない。
そもそも、アムニット評価では、ラザール男爵は穏やかな人だと評していたが、それは人に会う時の性格で実際はキツイ性格なのかもしれないな。
「こちらには、どのくらいご滞在を?」
徴税官の役割は、その名の通り税の支払い監視のためだ。でも、この世界ではどういった、またはどの程度の時間でできるのか分からない。
「はい。ラザール男爵様からは、ロベール様が『良し』と言うまでと伺っております」
これはまた異なことを。仕事が終わったら帰るんじゃないんかい?
あっ、俺がメニフィレスの体に満足したら返却してくれって事か。そういうことか。
「それにしても、今回は急な話でしたね。徴税官様が来られると言う話を伺っていなかったもので、歓迎のご用意も何もしておりません」
「いえ、その様な物は私の身に余ります。私は、徴税官になってから日が浅く、上司の後ろに付き勉強する身です。本来であれば、一人で徴税監査などあり得ない話なのですが、ロベール様にご迷惑をかけないよう努力する次第です」
俺が襲って、そのショックで辞めても痛手の少ない新人さんの物語か。笑えんな。
18時に投稿したはずが、なぜか投稿されていなかった件について。
どこでおかしくなったのか……。
7月24日 誤字修正しました。