表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
マシュー改革編
28/174

徴税官

「イワナの塩焼きうめー」


 今までは薪で焼いていたけど、レンガを焼く窯を借りて炭作りを行い、このイワナはそこで作られた炭で焼いたものだ。

 薪とは違う、キャンプ的な風味が出ていて美味い。


「あとは煮込むだけなので、お夕食はもう少しお待ちください」


 最早、俺専属のコックになってしまった町の食堂の料理人が、厨房から顔を覗かせて言った。

 静かな食堂とは対照的に、外では千歯扱きで脱穀作業の最中で、楽しそうな声が聞こえてくる。


 夕食には早いのになぜ塩焼きを食っているのかと言うと、簡単な事だ。腹が減ったから。

 しかし、楽しい時ほど長くは続かないと言うのが、世の中の仕組みと言う物なのか……。


「ロベール様。徴税官様がお見えになりました」


 食堂に入ってきたファナが、開口一番に何だか嫌な響きのする職名を述べた。


「何それ?」

「えっと……、()()様に出す税を取りに来た人です?」


 読んで字の如くの人でしたか。


「領主? この町に、領主なんていたの?」


 それよりも驚いたことが、この町に領主が居たと言う事だ。あれっ? 俺は領主にならないの? ただの管理人?


「はっ、はい。ここは、フィルドー男爵様の領地内でして、徴税官様はそこからいらっしゃってます」


 フィルドーなる人物は、どういった人だっけ、と思い出していると、目の前に座っているアムニットが話しかけてきた。


「ロベール様がこの町に来た時に、管理統治の御挨拶にはいかれなかったのですか?」

「行かれてませんが?」


 そもそも、ご挨拶どころか、そんな人が元々この町を管理していたなんて初耳だ。

 でも、どこの土地も誰かしらの領地なのだから、領主が居るのは当たり前だ。もうノリノリで改革することだけ考えてきたから、領主に挨拶なんて1mmも考えなかった。


「どうしましょうか? 先に、お部屋にご案内をしておいた方がよろしいでしょうか?」


 行動を決めかねている俺に、ファナは助け舟を出してくれた。でも、問題の先送りは良くない。

 先にあって、先方が怒っているかどうか確かめるのが先決だろう。


「いや、応接室に。俺もすぐに行くから、お茶も用意しておいてくれ」

「畏まりました」


 ファナが出て行くのを確認したあと、カーテンの影から外を窺うと、外には質素ではあるがあるていど細工のされた馬車が止まっており、その隣には学士然とした女性が立っていた。


「フィルドー男爵って、どんな人か知ってる?」


 隣で、俺と同じように外を窺っていたアムニットに聞いた。


「私は、お茶会に参加したことが無いので、一般的な人物像しかわかりませんが、ラザール・フィルドー男爵は、このマシューが存在するフィルドー領の領主です」


 ユスベルを日本に例えると、このマシューはフィルドー県マシュー市と言う事になる。ちなみにラザール氏の場合は、フィルドー県フィルドー市になる。

 奴隷出身のために、周囲の地理には疎い。なるべく調べようと思って、学校の図書館を漁ってみたのだが、領地を書き出した地図が存在しなかったのだ。

 これは、地図屋の怠慢ではなかろうか? ゼ○リン呼んで来い、ゼ○リン。


「性格は穏やかで、農地の開墾にもそれに見合った生産ができれば構わないと言う姿勢を保っています。ですが、広げた分だけ初年度から税が多くなるので、領地の広さの割には、あまり開墾は進んでいないそうです。それと――」


 そこで、少し言いにくそうな表情をして、続ける。


「あまり大きな声では言えませんが、奴隷推奨派の人物です」


 天候不順によって決められた税が払えない場合は、その領地の方針によって若干変わるが、足りない分は公共事業に従事することで仮支払ができる。

 仮払いと言う時点で怪しいが、このラザール男爵は税が払えないその家の人間を奴隷として足りない分を補填しているそうだ。


 税が払えないのなら代替えが必要だが、人材の流出は国力の低下につながる。

 目先の金しか見ていない、農民は地面から生えると勘違いしている貴族にありがちな思考の持ち主の様だ。


 事実、マシューは今まで酷い災害――とは言っても、人も少なく農作物も少ないうえに、元々が皇都だったと言う事もあり税自体が低いようだけど――が無かったので、そう言った奴隷として連れて行かれる人は居なかったそうだが。

 ラザール氏の人物像と領地の運営方法を話し合っていると、再び扉がノックされファナが入ってきた。


「ロベール様、徴税官様を応接室へお通ししました」

「分かった。すぐに行く」


 すっく、と立ち上がると、前に座っていたアムニットがさも当たり前のように立ち上がった。


「えっ?」

「えっ?」


 二人して驚いた。ナニコレ?


「何で、お前まで立ってんの?」

「私も、このマシューの改革に汗水を垂らしているロベール様の下で働くものとして、やはり税収に関して後学の為に話を聞いておいた方が良いと思って」

「あぁ、はい……」


 最近、グイグイ来るんだよね、この子。なんだろう、あのおどおどしていた時が懐かしい。

 いや、おどおどされるとイライラするから、こっちの方が良いんだけどね。


新キャラ? 登場です。(ただし、徴税官とは言っていない)

3連休も最後ですね。みなさんは、どう過ごされたのでしょうか?


7月22日 誤字修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ