表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
マシュー改革編
27/174

金色の恵み

 いつも通りに学校が終わり、俺は寮に帰ることなくヴィリアにまたがると、そのまま空の人となった。

 片道2時間30分。週末マシューの時間です。


 ……とまあ、そこいらの話は置いておいて。今日は、アムニットにも付いてきてもらっているので3時間くらいを見なければいけない。

 季節は晩夏――とは言え、まだまだ気温は高い。飛行服の温度調節が難しい時期だ。


 眼下に広がる小麦畑は黄金色に輝き、収穫を今か今かと待ちわび、農民はその声に応えるように朝早くから夜遅くまで収穫作業に勤しんでいる。

 マシューでも例外ではなく、山越えをしたあと初めに見える黄金色の絨毯を目指して飛べば町にたどり着ける。



「お兄ちゃん!」


 厩舎にヴィリアと、アムニットのドラゴンのマーハンを預けると、ファナの妹のレレナが抱きついてきた。

 最近はそうでも無くなってきたが、この町の人間は俺の肩書のせいで余り話しかけてこなかった。そんな中でも、父親に諌められても構うことなく、レレナはこの様に俺にじゃれ付いてくるのだ。


 普通であれば、平民が貴族に対して兄呼ばわりなどあり得ない話で、そこから政敵に攻撃される可能性がある。

 俺には、そんな敵は居ないから別に構わないけど、他の――アムニット以外の――貴族が居る場合は名前で呼ぶように躾けてあるから大丈夫だろう。


「お土産! お土産ある!?」


 そして、この現金さである。ヴィリアとマーハンに付けられた大きな荷物から、その中にお土産が入っていると当たりを付けたのだろうけど、そうは問屋がおろさんよ。


「そうだな。お土産(・・・)だ。皆の所へ持って行ってくれ」

「分かった!」

「落とすなよ」


 そう言って、ヴィリアから下した薄い荷物をレレナへ持たせた。俺ですらギリギリ持てるくらいの重量なのだから、さらに年齢も体格も下のレレナとなれば――。


「んぎぎぎ!!」


 総重量50キロくらいかな? 案の定、レレナは顔を真っ赤にしながらあっちへフラフラ、こっちへフラフラしている。


「危ないから、誰か呼んで来い」

「だっ……大丈……夫……」

「大丈夫じゃないだろ。それを落っことしたら、お前は炭鉱行きだぞ?」

「ぐはー……」


 諦めたように背中に乗せた荷物を静かに地面に下すと、レレナは大人たちが居るであろうガナン邸へと走って行った。



 話は変わるが、今は小麦の収穫時期である。そこで行われるのは、小麦の脱穀作業だ。

 この世界での脱穀方法は、当たり前だが人力で、しかも穂から麦を取る方法は、刃の無いナイフと親指で穂を挟み、麦を削るように取ると言う方法を取っている。


 人件費が無いこの世界だからできる、人海戦術作戦と言っても過言ではない。俺も奴隷の時はやっていたので分かるのだが、見た目に反してかなりキツイ。罪人の罰としてもこの仕事があるくらいだ。


 さっきレレナに持たせたのは、千歯扱きの歯の部分だ。3枚――つまり3機分の歯なわけだが、土台も含めて結構な重さになるうえかさ張るので一度の運搬では、これで一杯だった。


 本当は、足踏み式脱穀機を作りたかったんだけど、歯車が綺麗に作ることができずに、今後の課題となった。

 そこまで精度は求めていないつもりだったけど、歯の数が多いから綺麗に回すのは困難なのだろうか? この辺りは、製造技術者ではないので俺にも分からないけど……。


 とにかく、今迄の手で取る方法では4束/時だったけど、この千歯扱きでは60~70束/時になった。

 なるほど。これが、未亡人殺しの異名を取る千歯扱きの力か。


「これは、素晴らしい道具ですね! 特別な物は使われていない、何処の鍛冶屋でも作れる物だけで構成されているのに、脱穀がこんなに短時間で終わるなんて」


 これは隠すつもりはないので、一緒に荷物を運んでくれたアムニットも俺の横で観察している。

 ガンブール鍛冶屋で試作を計画した時点で、すでにグレイスには話が通っているので、そのうち帝国全土に広がる事だろう。


 始めは千歯扱きだけを販売し、良い具合に売れたら、足踏み脱穀機に移行するのも良いかもしれない。

 ただ、ガンブール鍛冶屋は手動ポンプの製造に追われているので、千歯扱きはガンブールの鍛冶仲間の所で作ってもらっている。

 技術的に信頼がおけるそうなので、まあ大丈夫だろう。


 その過酷な手脱穀を行っていた人たちから神の如く感謝をされ、幾人からはお礼として猪や活きの良いイワナの様な川魚を貰った。

 これ以降の作業は無いそうで、保存の為に(のぎ)が付いた状態で麻袋にいれて半地下の倉庫にしまわれるそうだ。

 くるり棒や唐箕(とうみ)の出番は、もう少し先みたいだ。唐箕は、まだ試作段階でここに到着するのはもう少し先になるから、ちょうどいいかもしれない。


千歯扱きは使ったことがありませんが、足踏み脱穀機は使ったことがあります。

ちょっと踏むだけで、あれだけ回転数があがるんだから、当時はかなり脱穀作業が改善されたんでしょうね。

もっと凄いのは、コンバインですけどw


3月2日 ルビを変更しました。


7月20日 誤字・脱字修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ