学校へ潜入する
ロベールが死んだ場所から竜騎士育成学校に辿り着くまで、徒歩と行商馬車に乗せてもらい2週間ちょっとかかった。
その間に、ロベールが出席する入学式も終わってしまったらしく、あと少し学校への到着が遅ければロベールの実家に連絡が行っていたそうだ。
学校に着いたら着いたで、俺の姿を見た教師陣は上へ下への大騒ぎとなった。
なんせ、ロベールを除く全員が無事に入学を果たした後に血汚れが激しく、ボロボロの飛行服を着た見知らぬ生徒が現れたのだから。
それが誰なのか、教師ではなくてもクラスメイトであればすぐに検討がついた。
すぐに傷の治療と風呂に入れてもらい、今に至るわけだ。
俺の隣を歩くでっぷりとした男性に、今までの事をたくさんの真実と、少しの嘘を織り交ぜて話した。
「それは、大変でしたね」
「えぇ、全くです。おかげで、ここまで歩く羽目になりました」
脂汗を出しながら前を歩く男性は、この竜騎士育成学校で共用ドラゴンを育てている育成員らしい。
ここに来るまでの出来事を話しているだけだったのだが、なぜか脂汗を流しちょっと震えながら会話をしている。
そんな事は置いといて、笑える話であるがこの学校で、俺はロベール・シュタイフ・ドゥ・ストライカーとして認められた。今は、途中で野良ドラゴンに襲われたと言う設定の俺の為にドラゴンを仕立ててくれるらしい。
さすが、侯爵。どれだけ偉いのかは知らないけど、さすが侯爵!
育成員の後ろを歩く俺を見て、一部の生徒がヒソヒソと噂話をしている。これは、俺を怪しんでいる訳ではなく、血だらけの飛行服を着て学校へ入ったため色々な噂が流れての結果だ。
疑われた事は今のところ一度もない。
ここら辺は上手い事いったとしか言いようがないが、ストライカー侯爵の領地からこの学校はかなり離れており、またロベールと言う俺と入れ替わった奴もかなりの問題児だったらしく、夜会などには参加していなかったのも大きい。
それに、疑ったとしてもそれが本人なのかすぐに確かめる術もなく、そもそも疑うと言う事は侯爵家に喧嘩を売るということなので、おいそれと口に出すことはできないのだ。
ここまでが、この学校に来てから俺が小耳に挟むか、教師陣との会話の中から抜き出した情報である。
「こちらです」
重厚な扉の向こうには原っぱと、その向こうに山があり、ドラゴンが7頭くつろいでいた。
今までドラゴンの世話をしたことはあるが、さすが竜騎士の学校と言うのか、形が綺麗だ。
「この中から、選んでもいいんですか?」
「えっ、えぇ……。代わりのドラゴンがご実家から来るまで、こちらのドラゴンをお使いください」
ご実家に知り合いは居ないので、連絡は勘弁してください。
「実家には迷惑をかけたくないので、このドラゴンを貰う事は可能ですか?」
結構無理なお願いだったのか、育成員は目を泳がしながらしばし黙考し、諦めたように息を吐いた。
「上には何とか言っておきます。どうぞ、こちらから好きなドラゴンをお選びください」
侯爵家バンザイ。
次は、3日後と書きましたが連日投稿です。
できれば、明日も投稿したいです。
内政云々の話になるのは、16話あたりからを予定しています。
6月18日
補足的な意味も込めて、前半の部分少しを書き足しました。