奴隷
「知識奴隷は、現在のこの5人となっています」
奴隷商から紹介されたのは、左から40歳男、28歳女、19歳女、17歳女、12歳女だ。
そして、知識奴隷と言ってもその知識は様々で、40歳男を例にとって言えば、礼儀作法及びその教育、事務一般。家令としての能力を有した奴隷だ。
男であろうが女であろうが、今一番欲しいのは能力を持った人間だ。
ただし、クソ高い。まぁ、礼儀作法やその教育なんて能力はいらないので、欲しいのは文字や計算の一般教養を持っている程度の奴隷で良い。それを教育できる能力があればなお良いが、それはどうとでもなるので今は考えない事とする。
そう考えれば、19歳と17歳の2人になる。えっ? 12歳が良いって? 知識はあっても、詩だしな。
「19歳と17歳は、それぞれ幾らだ?」
「19歳の方は、元伯爵家の出でしたので血筋も良く、文字の読み書きも当然ですができます。ただ、一度婚姻をしており処女ではないので金貨140枚です。17歳の方は、こちらも元貴族ですが成り上がりの騎士貴族の出です。ですが、昨年まで学校へ通っていたので文字の読み書きも、計算も問題なく行えます。こちらは処女ですが、出が出なので金貨125枚です」
政略結婚の道具として育てられたのであれば、文字は教育されても計算までは教育されていない時があるからな。この奴隷商が言及しなかったのがその証左だ。
「別に、血筋にはこだわらないから、もう少し安い知識奴隷を引っ張って来れないか?」
「そうですね。時間を頂ければご用意することは可能ですが、ここ最近奴隷の需要も上がり気味ですからね。急ぎであれば、あまり期待しない方が……」
戦争と言うか小競り合いで、元から居た貴族が言うには成り上がりが結構出たらしい。
その成り上がりが、屋敷の世話をさせる為に奴隷を購入する。ある程度知識があって安い奴を。まさに俺の欲しい奴隷と被るのだ。
「仕方が無い。では、17歳の奴隷を買おう」
「ありがとうございます。では、こちらへ、サインをお願いします」
差し出された書類にサインをしてから、金貨125枚を出す。貴族が大きな買い物をする場合は、後で家の方へ奴隷商自らが取りに来るのが通例なので、商人も驚いていた。
「それと、3日分の服を用意してくれ。適当な物で良い。用意できたら、町はずれの粉ひき小屋の近くまで連れて行ってくれ」
奴隷の料金とは別に金貨一枚を支払う。初めは何か言おうとしていた商人だが、その一枚で商人は「分かりました」と全部引き受けた。
服を用意して、徒歩20分くらいの所へ案内するだけで金貨1枚なのだから美味い話なのだ。
「では、後は頼んだぞ」
「畏まりました。すぐにご用意しますので」
奴隷商に見送られ、商館の外へでる。すると、商館の前で見知った顔に出会った――。
異世界物の醍醐味、奴隷購入です。
この世界では、また後で書くつもりなので深く言及しませんが、この間まで戦争をしていました。
ロベールが言っていた、敵国の17歳の青年は戦勝奴隷ですね。返してほしければ身代金を払え。払ったら返してやろう、と言う感じです。
こうして返してもらえる命もあれば、帰って来ない命もあり、当主が帰って来ないと家が立ち行かなくなり消滅することもあります。
その代わり、戦争で武勲を上げた者(特に騎士)が多く貴族になりました。
7月6日 誤字、文章修正しました。




