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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
ニカロ王国留学編
166/174

留学準備

遅れてすみませんでした。


書籍化について、活動記事を更新しました。

 アドゥラン第一皇子が約束を守ると言っていたのは本当のようで、近い内に国議会を開くことになったらしい。

 皇位を継承していないので、第一皇子にはその権限が無いのだがそこは父皇である皇帝陛下に直訴して開催にこぎつけたようだ。無茶をしたのではないかと心配になったが、、皇帝陛下も留学から帰って来た第一皇子の成長ぶりを見たかったのか、概ねやりたいようにやらせるようである。


 そこで問題になるのがロベリオン第二皇子だ。本人の気質もあるだろうが、武闘派の皇帝陛下が好む新軍を作り順次成果をあげているにも関わらず、兄に先に国議会を開かれてしまったのだ。

 このことから次期皇帝はアドゥラン第一皇子だろう、との声がチラホラと上がっているとか上がっていないとか……。そんな話を、アガレスト右丞相から聞いた。


 なぜそんなことを話してくれるのかというと、今回の国議会開催について皇帝陛下が許可をした理由に、俺の存在があったかららしい。

 芸術方面ではニカロ王国に一歩どころか三歩近く離されていたにもかかわらず、磁器に関してそれを縮めるどころかユスベル帝国(・・・・・・)が大きく引き離すことになったのが愉快だったらしい。


 特に、皇帝陛下の顔を浮き上がらせた大皿が気に入ったようで、現在は皇城の食事する間に飾っているらしい。即売会の後に兵士に持って行かれた後は行方不明になっていたが、そんなところにあるとは驚きだ。

 話を元に戻すが、俺の活躍が良かったのにも拘らず、なぜかアドゥラン第一皇子が俺に指示をして良い作品を提出させたことになっているらしい。そう。全てはアドゥラン第一皇子の力だったのだ!


 納得がいかないが、まぁそこは皇族である。できるだけ、自分の力だと言うことを示したいのだろう。

 俺はそれなりに良い子なので、そこらへんのことは言われずとも理解しているつもりだ。後で何らかの形で返してもらえれば、とりあえずは大人しくしておく。



 ニカロ王国に留学する準備を進めなければいけないが、準備といったものが俺には無い。

 貴族なのだから、それなりに用意する物が本当はあるんだろうが、そういった物に頓着しないからか、服に関してはマフェスト商会が用意をしてくれるらしく、その他の道具についてはストライカー家が用意してくれることになった。


 さすがに、普段着ている麻の服ではマシューでは良くてもニカロ王国では――というかストライカー侯爵家として許せないそうだ。

 今まで放っておいたくせに、今さらそんなことをいうなんてな。

 そんな風に忙しく動いている周囲を何気なく見ていると、ミシュベルからさりげないアドバイスを頂いた。


 アムニット・ミシュベル・アバス達は自分で留学に必要な物を用意するが、そば仕えのミナやレレナ、それの護衛として連れて行くミーシャは俺が物を買っておかないといけないらしい。

 そりゃそうだ。ミナは俺が飼っており、レレナは俺が雇っているのだ。ミーシャは適当に何とかするから良いだろうけど。


 ミナには給料が支払われており、仕事で必要な物は申請すれば別途支給するような方法をとっている。もちろん、申請できる物とできない物があるので、分からない場合は要相談だが、基本的には無駄な物を買うような人間ではないので今のところ問題は起きていない。


 そんなミナだが、持っている騎馬用の鎧はブレイフォクサ公爵戦から使っている物で、初めは白を基調とした綺麗な鎧だったが、今ではフレサンジュ家での訓練から野盗退治まで幅広く使っている為に、大分くたびれている。

 ボロボロとまではいっていないので、使えるといえばつかえるのだが、式典などがあった時にそばに立たせる時には格好としてよろしくない。


 式典用の物を用意すれば良いのだが、その場合は、ミナはメイド服で良いと言うだろう。だって、元は知識奴隷として買って来てメイドとして使っているのだから。

 そもそも、もうそろそろ奴隷とか関係なくっているから、メイド服を着せなくても良いかもしれない。ほとんど、俺の趣味だし……。


 または、鎧でなくても軍服を作っても良いかもしれない。俺みたいな学ランみたいな軍服ではなく、ドラグーンつながりで竜騎兵的な服装でも良いかもしれない。上をドルマンにして、ちょっと派手にしても良いだろう。


「そこで、ミナの装備が古くなっているから、そろそろ一新しようと思うんだ」


 どうだろう? とミナに聞くと、周りにいるレレナやミーシャを見渡した。二人よりも立場が劣る自分が買ってもらっても良いだろうか、とか考えているのかもしれない。


「他の二人は別にいいんだ。まずは、ミナの装備が一番時間がかかるから、手始めに聞いただけだ」

「そっ、それでしたら……もしよろしければ、そろそろ部品ごとに交換していきたいな……と思っていたので」


 あくまでも、ミナの意志としては今使っている装備の部品交換の様だ。でも、それだと今度は俺の体裁が悪くなる。


「いや、装備は一新する。これは決まっていることだ。店は前回の所と一緒で良いなら、今度は俺の名前を使って作らせる事にしよう」


 前回は、自分で見繕ってくるように言ったので、貴族ではなく騎士扱いで作られたようだ。

 別に騎士だから手抜きで作られると言う訳ではなく、ただ単に製作速度に違いが出て来る程度だ。やはり、貴族の方が早めに仕上がる。


「あっ、ありがとうございます……。製作所は前回と同じ所で問題はありません」

「分かった。後で手紙を書いておくから、それを持って行くように」

「はい」


 ついでに、剣の方も新調するように言っておいた。綺麗な鎧に古い剣では見た目が悪かろう。

 剣の方は、俺が授爵し皇都で帯剣の許可を貰った時に、ミナがいのいちで貯金を全額叩いて作って来た物だ。

 嫌がるか、と思ったが、命を預ける物なのでこちらもすぐに受け入れた。古い物は、記念に取って置くか訓練用にするのだろう。


「ロベールよー」

「なんだよ?」


 ミナの装備品について話し合いが終わると、レレナを抱きかかえていたミーシャが声を上げた。


「留学? に行くにあたって、レレナがドレス欲しいって」

「えー! 私、そんなこと言っ――ムゴム!?」


 心外だ! といわんばかりに声を上げたレレナだったが、言い終える前にミーシャが拷問器具のヘッドクラッシャーのようにレレナの頭と顎を押さえ喋れないようにした。

 初めて会った時よりも成長しているレレナだが、ミーシャに力で敵う訳がなく、初めは抗議のためにジタバタ暴れていたが、すぐに諦め力尽きたように動かなくなった。


「そうか、そうか。レレナはいつも頑張っているからな。それに、何かあった時の為に一張羅の一つくらい用意しておいた方が良いだろうしな」


 なおも、「そんなこと言ってませんぜ、旦那」と言いたげな目で俺を見てくるレレナ。

 給料を渡しているといっても、食事や住むところはこちらで用意しているので、それほど多くない。しかし、レレナがお金を使うのはほとんどミーシャと一緒に行く食べ歩きくらいで、この歳の女の子が興味を持つアクセサリーや服といった物にはトンと興味を示さない。


 ミーシャは自分の欲望に忠実なので、貰った金は即使う。おかげで、月給ではなく日給で支払うことを余儀なくされている。


「じゃぁさ、じゃぁさ! ついでに、私のドレスも買ってくれよ!」

「お前は自分で買えよ。それだけ給料も払っているだろ?」

「んっだよ! それくらい買ってくれてもいいじゃねぇかよ~! 留学に行くんだろ~? 絶対にドレス要るじゃんかよ~!」

「いや、要らねぇよ。いつもの民族衣装でいいじゃねぇか」


 何を基準にドレスが要るのか分からないが、ミーシャ基準では留学はドレス必須らしい。

 留学するにあたり、多少なりとも良い恰好をしなければいけないが、ミーシャに関しては大鹿(ゴナーシャ)の民族衣装があるので問題はないと思った。元々、それほど目立つような服では無かったが、外貨が稼げるようになってから少しずつ派手になってきていた。


 今では宝石なども散りばめられて、ちょっとしたアラブのお姫様的な服になっている。 

 しかし、その対応が気に入らないのか、ミーシャはほっぺたを膨らませながらブーブーとぶー垂れている。


「まぁ、そんなことよりレレナもそろそろ一張羅の一枚は用意しておかないといけないから――」


 話している途中で、ドアがノックされた。

 その音に部屋に居た全員が反応したが、一番に動いたのはレレナだった。ブレイフォクサ公爵邸での来客の対応はいつもレレナがやっているので、(ここ)でも自然とこの様な体制となっている。


 レレナの仕事の邪魔にならない様に、というわけではないが、部屋にいる全員が息を潜める様に静かにしている。その中でも、ミーシャは口を半分開けてポケッとした顔をしているが、これは物音に一番注意している時の様子なので油断できない。


 初めはレレナについて接客をしていたのだが、レレナから「一人で大丈夫」と言われてから部屋で大人しくするようになっている。しかし、問題があればいの一に飛び出し、相手を殲滅するだろう。


ロベール様(・・・・・)、騎馬騎士のお客様がいらっしゃってます」


 戻ってきたレレナは、俺に対しこう言った。つまり、本当のお客さんだ。

 今来る人間と言えば、留学関係かカグツチ国の軍隊に対してだ。騎馬騎士との事なので、カグツチ国に行く予定の騎馬騎士なのかもしれない。


「すぐ行く」


 立ち上がり、レレナと入れ違いでドアの方へ向かうと軍服に身を包んだ騎馬騎士が三人立っていた。

 その中央。隊長格だと思われる人物は良く知っていた。


「どうも、こんにちは。お久しぶりですね、ヴァンデス様」


 カタン砦に危機を知るきっかけとなったあの小競り合い。そこで、敵対した騎馬騎士のヴァンデスが居た。

 彼には、感謝してもしきれないほどの思いがある。


登場人物


アガレスト右丞相=ユスベル帝国で、ブレイン的な立ち位置に居る。釣り好き。


ヴァンデス=ミナを奴隷から解放しようとして暴れちゃった人。

      元騎馬騎士隊長。カタン砦防衛戦では、いち騎馬騎士をやっていたが今は……。


5月24日 言い回しを変えました。      

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