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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
ニカロ王国留学編
164/174

留学の真意

4月24日 文章を大幅に書き換えました。


アキバblog様で文庫版「竜騎士から始める国造り」が紹介されています!

よろしければ、ご覧ください。

http://blog.livedoor.jp/geek/archives/51521917.html


活動記事も更新しました。

アキバblogさんで紹介された、文庫の表紙やキャラデザを載せていますので、よろしければそちらもご覧ください。

 学校の授業の一環で野盗狩りをした、竜騎士(ドラグーン)育成学校の生徒達は未だ興奮冷めやらぬ、と言った様子で当時の状況を教室で話し合っている、

 アバスや他の一部の生徒達は、すでに実戦を経験しいているのでそのような会話に参加しないが、別段見下すようなこともしない。自分達も、実戦を経験した後、数日間は彼らと同じようになったからだ。


 そんな教室の片隅で、ロベールは死んだ魚のような目をしながら報告書を書いていた。

 珍しく学校へ出席しているのは、皇都の港にリットーリオ達が宿泊しているからだ。イスカンダル商会が保有する施設外へ出ることはできないが、ここで療養し体を回復させてから再度カグツチ国へ向けて出発となる。


 報告書の内容は、リットーリオの亡命関係についてではない。彼らに関してロベールは今後とも隠していく予定だ。

 そのカグツチ国だが、やむにやまれぬ事情で震撼している。

 野盗狩りを行ったのは良いが、ロベールの予想を超えて隣国が対岸に町を作り出した。これに対してユスベル帝国は、金を大目に出していたとはいえ今までカグツチ国を「町ができたら良いな」くらいにしか考えていなかったくせに、今回のことでこれ幸いと軍隊を駐屯させることにしたのだ。


 近くにカタン砦があるから、とのらりくらりと軍隊の駐屯をさせないようにしていたのだが、色々な人間の思惑が噛み合っての今の状況だ。

 リットーリオは商業街に住んでもらうつもりなので、兵士とかち合うことはないと思うが、竜騎士(ドラグーン)の訓練をやってもらわなければいけないので、引きこもってばかりとはいかない。


 兵士の移動範囲に制限をかけて、なるべく穏やかな生活を送ることができるように、とロベールは考えた。

 そして、ここが一番の問題だった――。



「なるほど、なるほど。つまり、私はスパイ(・・・)ということですね」


 今、俺が居る部屋は皇城からほど近い、アドゥラン第一皇子の住まいにある一室で、皇子と共に会食をしている。

 美味しい料理に舌鼓を打ちながら、これは何かあるなと思いながら食事をしていたらとんでもない話が来たものだ。


「身も蓋もない言い方をすれば、そうだな」


 しかし、アドゥラン第一皇子は悪いとも思っていない様子で答えた。

 まぁ、事実スパイとは言っても本職が動きやすいようにするための、いわば囮だ。

 さらに、ニカロ王国からも俺を留学生として招待したいとう申し出があるそうで、俺が行くことで今後の話し合い(・・・・)がやりやすくなるそうな。


 国――アドゥラン第一皇子的には、自分と入れ替わりで留学してくるアンネスリート王国の王子とも仲良くなってほしいんだそうだ。

 このアンネスリート王国というのは、ユスベル帝国と双璧をなすほどの大国だ。ユスベル帝国と違うのは、帝国は単一国家だがアンネスリート王国は何カ国かが集まってできた集合体――連合国だ。


 その中で一番大きく、また力を持っているのもアンネスリート王国なので、総称として国名を名乗っている。

 ユスベル帝国が軍事力に力を入れる中、アンネスリート王国は技術力に力を入れている。


 もちろん、武力が無くても良いと言っている訳ではない。その武力は、各国家が自前で持っており、アンネスリート王国としてはその武力に口を出せる代わりに、研究した技術を払い出すという方法をとっている。

 今回の留学は、技術ではなく貴族だけではなく国民をも幸せにできる文化を学ぶための留学だそうだ。


「面白そうではありますが、私が行ってどうしろ、というのが今のところの気持ちですね」

「どうもしない。ただ、君にはユスベル帝国の留学生として活躍(・・)してもらいたいだけだ。もちろん、国を代表するのだからそれなりに制限もあるが、君のように様々な技術に明るい人間であるならば、ニカロ王国は夢のような国だと思うが、どうだろうか? それに、アンネスリート王国も同じく技術国だ」


 きっと話も合うはずだ、と言われても、やはり魅力は少ないと思う。

 今はカグツチ国を拡大するのに力を入れたいし、技術に関してはイスカンダル商会がどんな些細な情報でも集めるようになっている。もちろん、他の商会も同じく。


 立場が立場なので、あからさまに軍事力の強化ができないのが難点だが、クロスボウも量産体制に入り、その内クロスボウ隊もできることだろう。

 軍馬に関しても、フレサンジュ家と提携することにより、大型の輓馬種を計画的に産出することにより荷物も多く運べる。それに重装騎馬兵へ転用することもできる。


 船もイスカンダル商会が舟問屋と提携して、ニカロ王国から貰った船を解体して研究している。型が古い物が来ているのだが、そこら辺は問題ないと思われる。


 ドラゴンは、ヴィリアとゴナーシャのお蔭で問題なく集まって――集めている。問題があるとすれば竜騎士(ドラグーン)だ。本来であれば貴族から採用しなければいけないが、そうすなると明らかな軍事力を保有することになる。それに、竜騎士(ドラグーン)になるなら、私塾ではなく竜騎士(ドラグーン)育成学校に入学するだろう。


 一般人から公募しようと思っても、そうすると貴族から反発があるだろう。

 今のところ、ハングリー精神旺盛で俺に――カグツチ国に忠誠を誓える人材を必要としているので、貴族よりも一般人から集めたいが、難しいことになるだろう。


「やはり、私には荷が勝ちすぎているようですね。他を当たっていただいた方が、国益に沿うと思います」

「臣民としてではなく、()としての頼みでもダメだろうか……?」

「ただの人であれば問題ない発言ですが、貴方の立場で、その言葉は何を意味するか分かっていらっしゃるのでしょうか?」


 ヤバい。今、俺の心臓がドキドキしている。嬉しいとか、そういった意味じゃなくて、ふざけんな的な意味で。

 それに、アドゥラン第一皇子は友人ハードルが低すぎやしないかい?

 俺の怪しい噂くらい入って来ているはずだし、そもそも貴族であっても王族が友人になることなど在りえない。この人は、一体何を考えているのだろうか?


「君くらいの先見性があり常識に囚われない人間というのはこの国には珍しい。ストライカー侯爵も素晴らしい人だが、その血を色濃く(・・・・・)受けている君は(・・・・・・・)若さもあり吸収も速く、なにより見識が広く物事を噛み砕いて見る事ができる。私の手元に、そんな人材は居ない」

「買い被り過ぎですよ。私は、取り繕って(・・・・・)生きる事に必死です」

「確かにそうだな。だが、私もやるからには本気だ」


 何を、と聞いてはいけない気がする。聞けば最後だ。


「私の願いを聞き入れてくれた暁には、君の願いを叶えよう」


 ほらきた。恐ろしい言葉。明らかに罠じゃないですか……。

 そうは疑っても、アドゥラン第一皇子は本気なのか、熱い視線を俺に向けている。

 どうすれば……どうするか……。


 考えるが良い考えが浮かばない。俺の所属はロベリオン第二皇子の天駆ける矢(ロッコ・ソプラノ)だ。最近は単独行動が多く、華やかな戦果を挙げているという部隊と違い、我がロベール竜騎士(ドラグーン)隊は地味な感じだ。直近の活躍と言えば、カグツチ国周辺での野盗退治。しかも、学生の引率みたいな感じだ。


 アドゥラン第一皇子の傘下に入る様な素振りを見せて、ロベール竜騎士(ドラグーン)隊の皆に出て行かれても困るしね。

 ならば――と。


「そうですね。どのような願いが聞き入れて頂けるのか、お話をお聞きしたいのですが」


 とりあえず、尻尾でも振っておきましょうか。



 リットーリオやその身内をカグツチ国へ見送り、ニカロ王国へ留学する為に人員を選んだ。

 選ぶといっても、俺の知り合いはそれほど多いもんじゃない。いつも通り、アムニット・ミシュベル・アバスは竜騎士(ドラグーン)候補生として連れて行き、ロベール竜騎士(ドラグーン)隊からはアシュリー・ルーシーのペアを選んだ。


 フォポールを連れて行きたかったのだが、数が少ないとはいえ一軍を預けるにはアシュリーは身分的に格落ちするので、伯爵家の長男であり侯爵家の令嬢と結婚する予定で箔が付いたフォポールに任せた。

 塩村についてもそうだが、なかなか融通の利く人間になっているようなので、安心して留守を任せることができる。


 身の回りの世話をするのにはミナを連れて行く。すでにメイドなのか騎士なのか分からない立ち位置となっているが、俺としては兼任してくれるのが一番いいのでメイド騎士とでもしておこうと思う。そこに付属品として、レレナとその護衛にミーシャも連れて行く。

 身内で固めた完全なる仕様である。アドゥラン第一皇子が口出しをしなかったら、またよく分からない人を付けられただろう。


 まぁ、その代わりアドゥラン第一皇子から人を付けられたけどね。結果的には何も変わらないよ。やったねロベちゃん、仲間が増えるよ。

 こんな馬鹿なことを考えていると、あるところから使者がきた。何を隠そう、本物のロベールの実家であるストライカー侯爵家だ。


 磁器の即売会をやった時に、妹のルイスに半ば脅される形でストライカー侯爵家に農業技術を教えに行ったのだ。

 春までに土づくりは行われており、伝播も特に問題なく、何も教えることはなかったのでさっさと戻って来たのだが、なぜかまたやってきたのだ。


 今回は前回と違いメイドちゃんではなく、黒服だったので急ぎの用件かもしれない。

 この間のスパイ要請があってから色々とやることが増え、人に会っている暇などないのだが、ストライカー家からとなると無下に扱うことができないのが困りものだ。


登場人物・用語


リットーリオ=ユーングラント王国の公爵だった人。ロベールが建国する、カグツチ国へ移住。


アドゥラン第一皇子=ユスベル帝国の第一皇子。ニカロ王国の留学から帰ってきた。


アンネスリート王国=ニカロ王国よりもっと東にある大王国。技術が進んでいるもよう。


4月18日 誤字脱字を修正しました。

4月25日 誤字脱字修正しました。

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