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竜騎士から始める国造り  作者: いぬのふぐり
西国境建領編
109/174

幕間 竜騎士育成学校にて――


「何をボケッとしているんですの?」

「えっ!?」


 外を眺めていたアムニットは声をかけてきた生徒を見た。

 ミシュベル・ドゥ・ベルツノズ。彼女はベルツノズ家の次女で、クラスメイトだ。

 初めて会った時は名誉士爵の父と共に、名誉士爵の偽貴族の娘として何かと辛く当たってきたのだが、最近――と言うか、ロベールとアムニットが行動を共にするようになってからつらく当たる回数は減った。


 ミシュベルの家は男爵家でありながら商にすぐれており、現当主のダッヒェナン・ドゥ・ベルツノズも類に漏れず優れている。

 それでも、他の貴族と比べてと言った状態で、商に関してはマフェスト家の足元にも及ばない。マフェストは、だてに行商から成り上がってない。そう思えば多少の溜飲は降りる物だ。


「ロベール様の事が心配ですの?」

「はっ、はい……まぁ……」


 まぁ……、何て心にもない事を言ってしまってから、アムニットはグッと奥歯を噛んだ。本当なら今すぐにでもロベールの居る戦場に飛んでいきたいくらいなのに、そんな気持ちを「まぁ」なんて軽々しく言えない。

 クラスメイトでロベールと共に行っているのは、騎馬騎士を父に持つアバスだった。


 ロベールはドラゴンの扱いが神がかり的と言って良いほど的確で、ドラゴンのヴィリアもその巨体に見合わない俊敏性を発揮すると共に、相手が誰であれ気合負けすることが一度も無かった。

 ドラゴンの扱いでは中堅クラスだが、幼いころから騎馬騎士になるために鍛えられ育ってきたアバスの剣技は凄まじいの一言で、今回の戦争には信頼でき、また腕の立つ兵士が必要と言う事で13歳と言うアムニットと同い年ながら戦場へと旅立って行った。


 アムニットとミシュベルはそう言った荒事に向いておらず、またドラゴンの操作についても普通の学生程度なので戦争にいったところで足手まといにしかならない。それを言ってしまえば、竜騎士(ドラグーン)育成学校の1~3年はほとんど使い物にならないので、ロベールとアバスが別格なだけだが。

 だから、今回は留守番だ。


「でも、今回は大きな戦闘は行われないと言う話でしたので、危険は少ないと思いますわよ」

「そうなんですか? 誰が言っていたんですか?」

「ロベール様から聞いたに決まっているじゃないですの? 今回の作戦では死傷者を最小にすることを第一目的としているので、ロベール様も大丈夫と言ってましたわ」

「そっ、そうですか……」

「どうかしまして?」

「私は……ロベール様から何も知らされていなかったので……」


 最近は何かと忙しいのか学校自体に来ることが少なくなっていたロベールだが、アムニットはそんなロベールが登校する度に何かと気にかけて一緒に居る事が多い。


 それは、何かに強要されたり権力者のそばに居た方が都合が良いから、と言った馬鹿な理由ではなく自分が居たいからだった。

 確かに初めはミシュベルが上位爵位のロベールに近づく為にけしかけ、それに従う形で出会った。


 その後は貴族らしからぬ言動や、貴族から見ればお金を集める道具程度の存在の平民に対しても穏やかで優しく、ただ命令するだけではなく同じ視線に立って同じ様に働く姿を見て好きになったのだ。

 分不相応な事は分かっている。しかし、それは強い感情となり心を締め付け、気付いたときには諦めようにも諦められなくなってしまったのだ。


(わたくし)だって、ロベール様から教えられた蒸留酒が無ければあなたと同じその他大勢と一緒でしたわ。前回同様、蒸留酒の使い道について聞いたら答えていただいただけですのよ」

「そうでしたか」


 ミシュベルはロベールから教わった蒸留酒と言う強みがある。それを通すことによって、間接的にではあるがロベールの力になっている。

 なら、自分は何ができるのだろうか、とアムニットは思う。

 そんな消沈するアムニットを見て哀れに思ったのか、ミシュベルはため息を吐きながら言った。


「言っておきますけど、お酒を造っていてもロベール様には近づけませんわよ。あの方は、色々な意味で真面な人間(・・)とは一線を画し、真面な人間では隣に立つ事すら叶いませんわよ」


 「そうでないと、あんな危ない事できるわけありませんわ……」と言うミシュベルの小さな呟きはアムニットの耳にも届いたが、それが何を意味するかまで理解できなかった。

 それでも、ミシュベルが不器用ながらもアムニットを元気づけようとしているのが理解できた。


「こんな所でグジグジ悩んでいる時点で、ロベール様が例え対等な位置(・・・・・)まで来たとしても今の状況は変わりませんわよ」

「はい……心します」


 何かを含む言い方に疑問があったが、それ以上ミシュベルは何も言わなかったので、アムニットも聞くことは無かった。

 それから数日後、ロベールとアバスは学校へ戻ってきた。

 いつもと変わらない様子で。


アムニット=マフェスト名誉士爵の娘。入学当初ボッチだった主人公に何かと世話を焼き、現在はマシューでの経理等を手伝うまでになっている。

ミシュベル=呑兵衛。お酒の妖精。最近、主人公から蒸留酒の作り方を学び、酒を蒸留してはせっせと樽詰めする放課後を送っている。



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