入隊
「くそ、あんなのありかよ!」
唐突だが俺は今戦場にいる、そして窮地に立っている。
「こんな鉄の塊じゃ歯が立たねぇ!」
アメリカもロシアも落ちた、たったひとつの軍隊に、そして日本もやがて落とされるだろう・・・
俺が戦っているのは人じゃない、比喩表現でもなんでもない
本当に人じゃない
かといってゾンビや化け物、はたまた宇宙人でもない
敵は神なんだ
俺は思った、こんなときの敵がゾンビや宇宙人ならどんなによかっただろうと
祈る相手も、すがる相手も、願うのもすべて神なのだから
「弾丸も砲丸もあのバリアみたいなので防がれて・・・一方的にもほどがあるだろ」
そう、我々人類の生み出した科学では相手にならない
奴らは科学を越えた、まるで魔法を扱っている
「刀やナイフならくらうんじゃねえか!?」
「やろうとしたやつがいたが切る前に死んでいったよ!」
「くそ!日本人の誇り日本刀もただのなまくらか・・・」
俺たちはなす術なくただただ死ぬのを待つばかりだ
そんなときだった、彼に出会ったのは
完全に敗北を確信し士気がうせ皆戦意を失っていた
そして一人また一人と自決をし死に始めた
俺も同じくして頭に銃口を向け引き金を引こうとしたとき全身に衝撃が走った
「バカ野郎!なに死のうとしてんだ!」
こんな時に何をバカなことをいってんだ、そう思った
「お前はまだ生きてるんだ、もっと醜く生にしがみつけ!」
そう言って彼は俺を線上から連れ出した。
逃げられるわけがないと思った、奴等には目眩ましは効かない、すぐに殺されると
だが、なぜだか、そのときは、奴ら神は俺と彼を殺さなかった。
奇跡が起こったと、そう思った。
その後俺は彼の隠れ家に招かれた
「少年ここが私たちの基地だ。基地とはまだ言いがたいが、私たちにとってはこれ以上にない基地なんだ」
本当に彼の言う通りだ
基地と言うには面積は狭く、コンピューターや武器はほとんどない、人数も俺を含め6人しかいない
「ところで少年名を聞こうか」
「そう言うのってまず自分から名乗るのが普通じゃないんですかね」
ちなみに俺は命を救われたからといってこいつを信用したわけではない
不振な点が多すぎるからだ
「ははは、死のうとしたわりにはしっかりしているな、失礼した。私は清水泉、清らかな水に泉とかく、年は17だ。よろしく頼む」
「俺は神道卓夢、年はあんたと同じ17だ」
「うむ、では神道くん。この基地を見てどう思った」
いきなりな質問に正直驚いた。
「お世辞にも立派な基地とは言いがたい。この基地を作ったリーダーの顔が見てみたいね」
俺は皮肉を込めて言った。
ただムカついていたそれだけの理由で
その時頬を何かがかすめた
「てめぇ、言いてぇことはそれだけか?」
奥から喧嘩腰の男がハンドガンをもって前に出てきた
「言いてぇことがねぇなら、安心して死にやがれ。今度は当てる」
「やめろ!大上くん」
「でもよ、泉さん、こいついきなりなまいきすぎるんじゃねぇか!?」
「質問したのは私だ、神道くんはそれに答えただけだ」
清水がそういうと、大上と呼ばれていた男はチッと舌打ちをして下がっていった
「気を悪くしないでくれ、彼も悪気があった訳じゃないんだ。」
「いや、俺も生意気だったからお互い様で」
「そうか、ありがとう神道くん。君は優しいな」
「そんなんじゃないんで」
なんだか小バカにされているような気がしてあまり嬉しくない
「ははは、おっと、話がそれてしまったな。君の言う通りこの基地は立派とは言えない。だが、それでも我々にとっては立派な基地でね」
そう言って清水はぐるッと基地を見回した
「ところで話は変わるが神道くん。君に頼みがある」
「頼み?」
「あぁ、君の力をかしてほしい」
はぁ?そう思った
「悪いけど、ここより正式な軍隊の方が生きのこる確率はあるよ。武器も豊富だしな」
「その軍隊に戻っても君は死ぬんだがな」
死ぬ?何をいってるのかわからない
こんなおんぼろなんか比べもんにならないだろ。
「君は今、戦線からの逃亡と言うことで軍法で、重罪になっている」
「あんた・・・死にたくなかったら入れってことか」
清水泉、あなどれないな
「そういうことだ」
先程まで見えた笑顔が悪魔の微笑みに見えた