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夕食を終えた僕たちは各々くつろいでいた。
僕は食器の片付けをしているわけだけどね。
居間にはルードと琴音さんに麻奈、桜花さんがいる。
食器を片付け終えた辺りで何をしているのかと顔を出すと、みんなで一心不乱にテレビを見ている。
どうやら洋画が放映されているようなのだけど……。
背景には満月が映る都会、中年の女性が何かに怯えるように定期的に後ろを確認しながら走っている。
そして、電話ボックスを見つけるなり急いで中に入った。
どんな話なのだろうかと思っていたのだけど、突然の効果音と共に近くのマンホールから粘土状の何かが飛び出し、電話ボックスを包み込んだ。
カメラワークが電話ボックス内に移り、悲鳴を上げる女性。
僕を除く全員がビクリとその光景に驚きの混じった痙攣をしていた。
……これ、というか何を見ているのだろうかこの面子は。
電話ボックスのガラスが割れ、粘土は女性の叫びを飲み込むように包み込んで画面は暗転する。
次のシーンは主人公らしい俳優とヒロインらしい美女が異常事態に町からの逃亡を画策している所だった。敵の事を良く知っているようで人間性を語っている。
そこで桜花さんが僕の気配に気づいてギギギと怯えるような目を向けた。
「こんな技能があるのならどうして――」
「無いからね」
僕と桜花さんの会話にその場に居た他全員が僕に視線を向ける。
「何を見ているのかな?」
「兄さんが如何に強いかをプレゼンするかのような動画があったからね。みんなで見て居たんだ」
「幸長くんはこんなことが出来るのですか?」
「驚きなのだ。だからあの時麻奈の顔面を覆い隠そうとしたのだ?」
「やはり兄さん、過去に実験を」
「してないから! スライムを誤解しているような映画を見て本気にならない!」
そりゃあ、それに等しいくらい強酸性と同化性があるようなスライムも過去にはいたらしいけど適応能力が無く、淘汰され絶滅してしまったというのを魔物の歴史とかで聞いたことがある。
歴史は浅くても今では数が少ない。
それがスライムという種類だ。突然変異で一時期発生したって話らしいからね。
「やっぱそうなのだぁ……麻奈も竜殺しの勉強をしているからこういうのでドラゴンが敵役だと首を傾げる部分があるのだ」
とか言いつつ足がガクガクしてる麻奈は何を伝えたいのだろう。琴音さんが別の意味で震えてる。
「じゃあこのDVDのような虐げられていたスライムが特殊な毒物に汚染されて凶暴化し町を恐怖に落とすというのは」
「色々と誤解と偏見があって無理、スライムを勉強しなおして来い」
こんなDVDのように高速で動き、獲物を絡め取るような事は不可能。
先ほど言ったイメージに近い絶滅したタイプは動きがあまりにも緩慢で獲物を得る事は出来なかったとか。
ちなみに王妃様の家系は金属質の魔物からの分家で厳密にスライムと呼ぶには怪しい。
液状生命体というイメージのあるスライムだけど、悪魔系から派生したり植物系から派生したり、クラゲとかからの派生も存在した。
要するに同じような突然変異が集まって血脈を形成してスライム系と呼ばれだした。
有名になったもの70年程前、何でも魔王領近隣で大量繁殖した勢力が自らの命を顧みず冒険者達に特攻し、玉砕したというのだからなんとも悲しい末路だ。
僕の魔物時の姿はそれに酷似しているのだそうだ。
他に霧状生命体であるガストやクラウドという類の魔物の亜種だというのもあるとかなんとか。
「まったく、何処の科学国が作った映画かは知らないけど妄想も大概にしてほしいね」
「へぇ……」
「まあいいや、続きを見よう」
「「「うん!」」」
「その動画のどこが良いんだよ!」
僕の主張を無視して、みんな画面に視線を向けっぱなし。
見るのも苦痛なので僕は部屋に戻った。
△
今日は休日、夜は満月祭という満月の日に行われるイベントのある日だ。
次期魔王であるルードはその祭りの最高責任者として出席しなくてはいけないのだが、日本に来て日が浅いために今回の参加は見送ったそうだ。
代わりにルード達は桜花さんの鍛錬につき合わされていた。
まだ開始して二週間程度なのにルードは日に日にメキメキと上達しているのが遠目でも分かる。
さすがは次期魔王とでも言うのだろうか。
単純な能力で僕は既に負けているかもしれない。
「麻奈も訓練教官をしてやるのだー!」
と、訓練に参加表明したのは何日前だったか、今日も麻奈は訓練に参加している。
型に忠実の桜花さんと実戦的な戦い方の麻奈とは日々、教育方針でぶつかり合いを続けている。とはいえ、ルードも琴音さんも二人の良い部分を学ぶのが上手で頭角を現している。
桜花さんも麻奈も面白いように覚える二人に興味が放せない様子だ。
「今晩から私が魔法の手ほどきをしてあげます。重要なのは正確な詠唱です。それに魔力を乗せてイメージをすれば魔法となります」
で、今日は誓子さんも庭で一緒に訓練をしている。
事務手続きがある程度、一段落したらしい。
まだまだやる事はあるけれど、今日はルードの訓練に付き合うそうだ。
近接戦闘が得意な桜花さんと違って誓子さんは魔法が得意だ。
だから誓子さんはルードに魔法のいろはや短縮、圧縮の講義をしている。
僕はみんなが訓練をしている間に家の掃除に精を出していた。
手始めに……在庫が無くなった僕の下着をルードの部屋から奪還でもするかな。
風呂に入るたびに下着が消えていくのだ、間違いなくルードの部屋にあるはずだ。
△
しばらく見ない間にずいぶんと部屋が散らかっている。
定期的に桜花さんがルードに掃除するように言いつけているけれど、効果は薄いようだ。
まあ……魔王の息子に片づけを覚えさせるって金持ちとか貴族だったら使用人がすることとか返されそうだけど、こういう所は庶民的だよなぁ。
ともかく探さないと、僕の下着が無い。
「ふむ……」
色々と散らかり放題の部屋を整頓しながら物色する。
ちなみに僕の下着を上下一セットそれだけで発見した。他に押入れに二セット。
物色している最中、カピカピになったスライムを発見。これは桜花さんが作ったものかな?
何故か竹輪みたいな形のままカピカピになったスライムがあるけど……何に使ったのだろうか。
知ってはいけないと本能が囁くから無視しておこう。
魔王軍所属時に隊長の部下がその手のグッズを持っていた気もするけど……。
洋書や魔法書が本棚にある。何だかんだでルードは僕よりも成績が良い。スポーツ万能成績優秀、さらに美形と完璧超人かと言いたくなるくらい多芸だ。僕とは雲泥の差だ。
元々の資質に差があるからだろう。
良く考えてみるとこの家に人たちはみんな僕より成績優秀だ。
あの馬鹿そうに見える麻奈でさえ僕より勉強の成績が良い。
なんだか悲しくなってきたからこの考えはやめよう。
あ、でも……桜花さんの学校の成績は知らないや。
勉強している風には見えないけど、さすがに出来てるよね? エリートなんだし。
「あれ? 幸長くん、ルードさんの部屋から出てきてどうしたのですか?」
洗濯に部屋から出ると琴音さんと鉢合わせした。
「あ、うん。ルードが盗んだ下着を探していてね」
さすがに使用済みの下着を広げる訳には行かないので軽く見せる程度で前に出す。
「後数着あるはずなんだけど見つからないんだ」
「い、いけませんよ。ひ、人の部屋を勝手に掃除しては」
頬を引きつらせる琴音さん。優しい人だよね。
さすがに男物の下着を目の前に出されたら驚く、それでも優しくたしなめるとは。
「でもルードだし、魔王の息子と言ってもさ……」
「無断で取り返すのが悪いんですよ。何か理由があるのかもしれません」
「理由って言ってもなー……」
兄の下着を盗むのに何の理由があるのだろうか。
「下着が全部無くなってるから僕も困るよ」
「大丈夫ですよ」
何が大丈夫なのだろうか。
「パンツがなければフンドシを着用すれば良いと思います」
琴音さんは何処の悪政を布く女王様なのだろうか。
あ、将来は王妃か……。
「それもどうかと……」
「幸長くんはフンドシも似合うと思います」
ダメだ。会話が成立していない。
琴音さんフンドシフェチの疑惑が浮上している。どうにか方向性を変えねば。
「所でどうしたの?」
咄嗟に出た言葉だったが、話題を変えるには十分の効果があった。
みんな訓練をしている最中のはず、なのに琴音さんが来るというのはどうしたのだろう。
「誓子さんが私に幸長くんがお風呂へ入浴するように言ってきて下さいと頼まれまして」
「え? もう?」
まだ夕方に差し掛かったくらいの時刻だ。風呂に入るには少し早い。
「はい。みんな訓練が終わる頃にはすぐに入浴したいと言い出すでしょうから、今のうちにと沸かしていたそうです。それで訓練に参加していない幸長くんが早め入浴して食事の準備をしていただきたいそうです」
「なるほどね」
部屋の掃除もある程度済んだし、そろそろ夕食の準備をするかと考えていた頃だ。ならばお言葉に甘えるとしよう。
「私は訓練に戻りますね」
「うん。じゃあ先に入って夕食の準備をしておくから」
「はい、楽しみにしていますね」
僕はそのまま風呂に入りに行った。
服を脱ぎ、身体を洗ってから湯船に浸かる。
ちょうどその時だった。
バアァ! っとルードが魔王の領域を発動させたのに気がついた。
魔法の授業が終わったから実践に入ったんだろうか。
「やば――」
ドクン!
言い終わる前に僕はスライムに変異して湯船に落ちた。
「急いで出ないとア――」
ただでさえ温まっている身体に追い討ちのように湯船が染みる。
ドロドロドロ……僕のお湯とスライムボディの境界線が解けて行く……ち、力が入らない。
「だ――」
だ、誰か助けて……。
湯船に沈んだまま、僕は動く事が出来なくなってしまった。
△
朦朧とした意識の中、時間だけが進んでいく。浴室のドアを開ける音で意識が少しだけ戻る。
「はぁ……疲れました」
「中々の動きでしたよ」
「逆に桜花は弛んでいるのだ」
「う、うるさいです! 貴方と一緒にされては困ります」
事もあろうに家の女性陣が三人揃って浴室に入ってきた。
湯気で辛うじて見えないけど、服を着ているのはありえないだろう。
「た――」
必死に声を出すが音に出来ない。
「え?」
琴音さんが僕の声を聞いて振り返る。
「どうしたのだ?」
「今何か聞こえませんでした?」
「気のせいじゃないのだ?」
「そうですよ」
気のせいじゃないって! お願いだから助けて!
「そうですかねぇ……」
お願い、それ以上浴槽に近づかないで!
湯気の中から琴音さんが顔を出した。
浴槽から見えるのは琴音さんのふくよかな四肢と艶のある髪、そしてタオルで隠されているが隠し切れない豊満な胸であった。
モチよりも弾力のありそうな肌、掛け湯をするとさらに煌びやかさを纏って、色っぽさに拍車が掛かる。
抜群のスタイルに僕の意識が遠のく。
「一番乗りなのだ!」
ザッバーン!
へぐう!!
麻奈が湯船に飛び込んだ。浴槽内が混ぜられ身体をシェイクされる。
視界が浴槽内に移り、麻奈の肢体が確認出来た。
年齢不相応の幼児体形、胸はぺったんこだが、幼さ独特の肌の張りが未だに残っている。
よくよく見れば麻奈の顔は美少女に値する。
「キャ!」
「子供ですか貴方は!」
ゆっくりと桜花さんが湯船に入る。
三人の中で一番大人らしい体格の桜花さん。琴音さん程、巨乳では無いが整った作りは好む男性が多いと思う。
さらしでも巻いているのだろうか?
そして三人の中で整った体形をしていて、グラビアアイドルのようだ。
あ……やばい。意識が……――。
安堵したのかがっかりしたのか自分でも分からないけど……僕の意識は遠のいて行くのだった。
△
「ふー……今日の風呂はとても良かったのだ」
「なんていうか凄く艶が出たというか、疲れが吹き飛ぶような不思議な入浴剤でしたね」
「そうですね。あのブルースカイの入浴剤は何処の製品なんでしょう?」
本当に良い入浴剤だった。入るだけで疲れが取れるのもさることながら肌の張りが良くなり魔力が回復したのを感じる。
後で幸長さんに尋ねてみましょう。
髪を乾かしてから居間へ行く、するとルード様がなにやらガサ入れをしていました。
誓子も一緒に何かを探している。
「どうしたのですかルード様」
するとルード様は緊迫した表情で私の肩を掴みます。
「桜花!」
「ど、どうしたのですか?」
一体何が起こっているというのでしょう。
「兄さんが」
「はい?」
「兄さんが何処にも居ないんだ!!」
「はぁ?」
何を言うかと思えば……幸長さんとて子供ではないのですから、いえ、幸長さんこそ子供ではないのですから何処かへ出かけることもあるでしょう。
「それは大変なのだ!」
「ええ、是非探しましょう!」
「は!?」
何故か麻奈と琴音さんがルード様と一緒に騒ぎ出し、家の中を物色しだしました。
「ホラ! 桜花も探すんだ!」
「は、はぁ……」
何故こんな事に? そもそもルード様を始め我が家の方々はどうして幸長さんを自由にさせてあげないのでしょう。
と言うのも憚られるので私も捜索に協力をします。
1時間経過。
脱衣所に着替えがあるのを見つけましたが結局、何処へ行ったのかは不明のままでした。
夕食の準備すらも手付かずで……確かにおかしい。
「これは……きっと兄さんは誘拐されたに違いない!」
「そうです!」
「違いないのだ!」
「待ってください、どうして誘拐された事になるのですか」
三人とも目つきが変になってきています。このまま制止しなければどんどんエスカレートしていくのは目に見えています。
「そうです。皆さん落ち着いて」
私と一緒に誓子も三人を宥める。
「ボクを呼ぶ為に兄さんを人知れず誘拐、きっともう少ししたら電話が掛かってくるはずだ!」
「なんて卑怯な奴なのだ!」
「ええ、幸長くんを誘拐するなんて、相手は知能犯に違いありません!」
「皆さん落ち着いてください!」
悪い考えに捕らわれすぎています。一旦冷静になってもらわないと対処のしようがありません。
「ルード様。心を静めください。ささ、私達にお譲りになった入浴を済ましてから話を続けましょう」
誓子がルード様に懇願する。そうです、ここは冷静になって頂かないと対応に遅れが出る危険性も出てきます。
「で、でも……」
「幸長さんから救助の電話が掛かってくるかもしれないのですよ。その時、汗臭いままルード様はお助けに行くのですか?」
ルード様はハッとした顔をして頷きました。
「そうだね。助けに行った時、汗臭かったら兄さんに嫌われてしまうかもしれない」
それもどうかと……ズジャ!
聞き覚えの無い足音が庭の方から響きました。
「何奴!」
私と誓子、そして麻奈が同時に庭へ目を向ける。
するとそこには十数人の武装した勇者志望が立っていました。
「次期魔王シュレイルード! ここで死んでもらう!」
剣を前に一人の勇者志望が言い放つ。
ゆらりとルード様を始め、琴音さんに麻奈が相手に向けて殺気を放ちだしました。
「お前らなのだ」
「ええ、そうです……この方々でしょう……」
「ああ、絶対にそうだ……」
殺気に押されて勇者志望たちは一歩後ずさりました。
「な、なんだ?」
「「「幸長(兄さん)くんを帰せーーーーーー!」」」
「う、うわぁあああああああああああああああああああ!」
なんとタイミングの悪い……疑いの目が一番掛かる所に勇者志望達は現れたのでした。
不利を悟った勇者志望達はルード様たちの殺気に押されて逃げてしまいました。
なんという逃げ足、勇気が無いのに勇者になりたいとは身の程知らずもいい所です。
呆然としていた私と誓子は敵が逃げ出してから我に返り、追跡を開始しましたが奴らの逃げ足も並大抵のものではありませんでした。
辛うじて捕まえた勇者志望を尋問したのですが幸長さんの事は知らない模様でした。
誓子がパトカーへと連行させ、我が組織で白状するまで待つとしましょう。
△
イライラと居間を行ったり来たりするルード様、時刻は7時半となっています。
幸長さんの行方が分からなくなったのが5時半ですからまだ2時間しか経っていません。
なのに何故でしょうか、まるで一日以上が経過しているような重苦しい空気は。
私は幸長さんがなぜここまでルード様を含めてこの方々に大事にされているのか理解することが出来ずに居ます。
昔からルード様は幸長さんに懐いているのはわかっていますが……一体どこにあの方にここまでのカリスマがあるのでしょうか?
本人は小市民とばかりに目立たない様にしているように見える……凡庸としか思えない人物なのですが。
ですが……そうですね、この前のジムへの襲撃事件時の手慣れた動きは中々のものでした。
過去に魔王軍で働いていたという経歴は知ってましたがその時の経験から来るものでしょうか。
とはいえ……所詮はスライム、おそらく雑用係だったくらいだとは思いますが。
私所か父上さえも凌駕した四天王のあの子が所属していた部隊で昔、戦死したというスライムの話が脳裏を過りますがまさかね。
確か……誓子も一般上がりではありますが……。
今はともかく幸長さんの行方でしょうかね。
どさくさに紛れて山奥に送り飛ばして行方知れずとかにさせようものならルード様たちが何をしでかすかわかりません。
全く……ボケっとしているので高圧的になってしまいますが、居ないと困るとは難儀な方です。
「誓子、兄さんの行方はまだ分からないのか?」
「はい……いまだに掴めていません」
そこで琴音さんがワッと顔を手で抑えました。
「私が悪かったんです。幸長くんがお風呂に一人で入るのを黙って見届けて居たから!」
……そこでふと、何か引っかかるものを私は感じた。
今日の風呂はブルースカイの不思議な入浴剤が使われていました。
今まで一度もあのような入浴剤が使われた事はない。そもそも幸長さんもそんな事を言っていなかった。
「それです!」
「へ?」
私は脱衣所を抜けて浴室に入り、お湯を確認します。
良く見るとこの入浴剤はゼリー状でした。
キッチンまで走り、氷を持って風呂に投入しました。
「どうしたんだい桜花」
ルード様を始め、誓子、麻奈、琴音さんは私の行いに首を傾げています。
「少々お待ちを」
そして止めとばかりに水を風呂に注ぎ込みます。
「それじゃあ風呂がぬるくなるよ?」
「いいから黙ってみていてください」
私の推測が正しければ……ブクっと音がしたかと思うとゼリーが固まり、スライム姿の幸長さんがうつ伏せで浴槽に現れました。
「に、兄さん!?」
「「幸長くん!?」」
驚いた表情を浮かべた三人。
ルード様が幸長さんを湯船から出し、息があるのを確認しました。
「状況証拠からこれは覗きと見て間違いありませんね」
誓子の分析に私も納得します。
「覗きですか……ほう……」
……さて、どうしてあげましょうかフフフフフフフフフウフフフフフフ。
「桜花? ちょっと怖いのだけど」
「そうなのだ……怖いのだぁ」