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ブラコン魔王の婚活  作者: アネコユサギ
ブラコン魔王達の来歴
17/25

3


 覚えているのは僕は言葉というものすらも知らず、自分の身に何が起こっているのかすらも理解できなかった。

 全身に痛みが走り、火、水、風、岩、衝撃、重力、等思い返せば様々な攻撃を受けたような感覚が走っていた。

 ただ、とても怖い、全身を振るわせる風を全身に受けて目の前に迫った地面を見ていた。

 ベチャ!

 派手に僕は飛び散った。

 ズルズルズル。

 散った身体を集めて再構成した僕は落とされた場所を見た。

 とても大きな黒い城。その城の何処かから僕は落ちてしまった。

 ここは何処? わからない。けれどここから逃げなきゃいけないと一心不乱にその場を逃げ出した。

 次に気づいたのは緑の生い茂る森の中、だけど僕には初めての場所。


「――」


 声すら出せない僕は何を求めているのかすら自分でも分からなかった。

 誰か……誰か。


 教えてください。僕は何を求めているのですか?


 遠くで、遠吠えが聞こえた。僕は本能的に恐怖を覚えて走り出した。

 一歩跳ねるごとに全身が震える。自分の身体がどんな生き物なのかも理解せずに。

 どれぐらい彷徨っただろうか。

 当ても無く、何を求めているのかすらも分からず、ただ……何かを捜し求め僕は森を跳ね回っている。

 何を探しているのかすらもわからない。何も……。

 遠吠えの発信者らしき何かを見た。

 それが記憶の中で初めて見た魔物だ。狼男が月を見て咆えていたのだと後になって理解するけれど、その時の僕には理解できなかった。

 脅え、そして精神的な疲れに僕は木の根元で眠る。幾らでも寝れそうな気がした。

 しかし、何かを求める僕はずっと寝てなど居られない。

 ふと、パチパチと明るい光を見つけ、そこに行けば何かがある。

 這うように光の下へ行くと、様々な魔物が火を囲って談笑をしている所に辿り着いた。各々が飲み物や食べ物を持ちながら楽しそうにしている。


「おや? なんだスライムか?」


 巨漢で牛のような頭をしていて蝙蝠のような翼を持つ二足歩行の魔物、後に悪魔タイプと知る魔物が僕を見つけて話しかけてきた。


「――」


 僕はキョトンとしていた。どう反応すればよいのか分からない。


「ガラーズ隊長、どうしやした?」


 僕に話しかけてきた魔物よりも幾分小柄の蝙蝠みたいな魔物が隣に来る。


「いやな、ここにスライムがいるからどうしたのかと思ってな」

「へぇ、珍しいですね」

「――」


 僕はパクパクと彼等の真似をして口を動かしてみた。しかし声は出せない。そもそも何を言っているのかすらも僕は理解してなど居なかった。


「そうなのだ。魔王城近隣の森でジェリータイプのスライムが一人で居るなど」


 ずいっと巨漢の魔物は僕に手を伸ばした。

 ビクッと僕は恐れて逃げようとした。しかし巨漢の魔物は僕の逃げる先を予測したように手をのばして抱き上げる。


「怖がるなって、別にとって食おうという訳じゃないんだから」

「隊長を見れば誰だって脅えますって」

「あ、言ったなお前等!」


 ガハハハハハ、と魔物達はそれぞれ笑い声を出す。


「――」


 目を白黒させた僕は無意識にボッと小さな火の魔法を口から出してしまった。


「おわ!」


 実際、威力などまったく無いこの火に魔物も驚いて顔を逸らす。


「お! 隊長に一矢報いたぞコイツ」

「物騒な事を言うなって、しかしコイツ……迷子か?」

「大方、魔王領へ観光へ来た魔物でしょう。子供かどうかは測りかねますが」

「なんていうか、大人の魔物はこんな目をしていない」

「子供ですかね?」

「だろうな。まあ安心しろ、直ぐに両親へ会わせてやるからな」


 そう言って笑う、隊長に僕は安堵感を覚え、ウトウトと眠ってしまうのに時間は掛からなかった。


「お? 寝ちまった。可愛らしいな」

「あの隊長の腕の中で寝るなんて大物だコイツ!」

「だからどうしてお前等は俺を乱暴者にしたがる!」


 △


 僕は近隣に生息する魔物の集落の住民だろうという推察された。

 重度の記憶喪失で言葉すら理解できず、ジェリータイプのスライムでは平均的な大きさだった僕は年齢不明の記憶喪失だと思われた。

 魔王領では野生で生活している魔物も数多く居る。そのため、迷子の捜索にそこまで力を注いでなどいない。

 僕を知る魔物からの捜索願が無ければ打つ手が無かった。


「う~ん」


 隊長はキャンプ地のテーブルに座る僕を見ながら唸る。


「確かに不自然な場所に生息しているスライムですね」


 僕の扱いに魔物達は議論している。


「最弱に近いタイプのスライムだぞ、絶滅危惧に入るんじゃないか?」

「この種は人間との混ざりに躊躇いが無いですからね。なにぶん弱いので」

「まあ、ここで会ったのも何かの縁、下手に死なれると寝覚めが悪い、施設に輸送するまでは面倒を見ないとな」

「そうですねぇ。魔王様も同じ魔物は大切にと言っているしなぁ」

「……なぁ……」

「お? 何か喋ったぞ」


 隊長と呼ばれた魔物の口真似をし、僕は少しずつ受け答えが出来るようになって行った。

 基本的な受け答えの覚えは早かった。

 そして気が付いてから三日目、近隣の村にある配給所兼、宿泊施設に行った。隊長と一緒にお風呂に入ることになった。

 施設のある石造りの家の湯船に部隊のみんなが代わる代わる入って行き、僕と隊長の番になった。

 隊長の腕に抱かれて湯船に入る。


「どうだ、気持ちが良いか?」


 隊長は僕にお湯をかけて撫でてくれる。


「ふにゅ~……」


 けれど、僕はお湯に体がとろけて溶けてしまった。


「ぬ? おい! 大丈夫か!」


 デロデロデロとお風呂を僕の体の色に染め上げて、僕は意識を失った。

 次に気が付いた時は、ベッドの上で風を送られて涼んでいた。


「すまない。お湯に弱いなんて知らなかったんだ」


 申し訳なさそうに団扇で扇ぐ隊長に僕は全身を使って違うと意思表示をする。


「だい、じょ、ぶ」


 まだうまく言葉を喋れなかった僕が精一杯を振り絞って発した声だった。

 僕にとって、その人は世界の全てと同じ、それほど僕は何も知らなかった。だから僕はその人が謝ったのに対して大丈夫だと言いたかった。


「そうか……そう言ってもらえるとありがたい」


 無骨だけど、優しい顔で隊長は僕を撫でてくれた。


「お前、記憶喪失じゃなくて、本当に子供みたいな奴だな」


 だけど別れは直ぐにやってきた。

 湯当りから回復した僕は搬送用の車に乗せられた。


「この車が行く先の近くにスライムの集落があるそうだ。そこに行けばお前の事も少しは分かるだろう」

「い、っしょ、じゃな、いの?」


 僕は隊長が着いて来てくれるものだと思っていた。だけど、隊長は首を横に振る。


「すまないな。俺はこれから任務があって一緒に行けないんだ」

「……きて、くれ、ないの?」


 初めての別れに僕はポロポロと涙を流してしまっていたのに自分で気づかなかった。


「お、おい、泣くなよ」

「なく?」


 泣くことさえ僕は知らず、指摘されて我に返る。

 自分がどうして泣いているのか、それは別れたくないから。だけど隊長は僕が泣いてとても困っている。

 それも悲しくて、だけど悲しませたくなくて、耐えなければいけないのだと悟った。

 自分で言うのもなんだが理解力だけは高かったと思う。


「う、ん。俺は、我慢、する」

「あー……」


 この時、隊長は僕が部隊のみんなの口真似をして覚えた言葉を発しているのに危機感を覚えていた。

 小さいうちに乱暴な言葉を覚えさせるわけにいかない。


「『俺』ではなく『僕』と自分を指す時には言いなさい」

「ん~?」


 意味がいまいち理解できなかった僕だけど、先ほどの言った台詞の部分を変えるように頭を働かせる。


「うん。僕、は、我慢、する、よ」

「そうか。それはよかった」


 たどたどしい喋り方だった。でも隊長は無骨だけど優しい笑みで僕の頭を撫でてくれた。


 △


 車で揺られること二日、僕は大きな城が殆ど見えなくなってしまった魔王領の北の地域にある村に預けられた。

 魔王領でも割と治安のよい辺境で、弱い魔物が生息する地域なのだそうだ。

 魔王領にある村や町で、人間と魔物、双方争ってはならないという法律があるそうだ。

 この法律を破った者は自らの所属する勢力に裁かれる。

 村には身寄りの無い子供とかを預かる教会、兼孤児院がある。

 宗教的観点から言えば人間の教会とは少し異なる。だけど差別をしない場所だと思ってくれれば良いだろう。

 子供達の中で僕は若干浮いていたのかもしれない。

 元々、ジェリータイプのスライムは大きさで大人か子供かを区別するらしい。

 記憶喪失の青年と思われていた僕は教会での数日間、この場所での決まりを教わった。

 喧嘩はご法度、仲良くするのが大切。

 次に出来る限りの手伝いをすること。

 これは村のボランティア活動に参加を義務付けられているためだ。

 働かざるもの食うべからず。

 子供であっても、この決まりは守るべきだと一から教えてくれた。

 シスターさんは狼男の女性……顔はゴールデンレトリバーだったけどね。


「では、スライムさん。食堂の掃除をしておいてね」

「はい」


 隊長に拾われてから7日目、応答が大分出来るようになった僕はシスターさんが指示した通りに仕事が出来るようになっていた。


「そうそう、近くのスライムの集落へ手紙を出しましたからもうしばらくの辛抱ですよ」

「はい。シスターさん」

「ほほほ、もしかしたらスライムさんも本当の名前がわかるかもしれませんね」


 記憶喪失の僕は、本当の名前が分からないから種族名で呼ばれていた。

 割とよくある呼び方らしい。もちろん、その場に同族がいる場合は名前で呼ぶのが正しいのだけど、この場には僕以外のスライムは居なかった。

 だからだとシスターさんは教えてくれる。

 近々本名がわかるかもしれないのに仮の名をつけるのもどうかと、話した結果だった。


「シスター様……意識が戻ったようです」


 そんな世間話をしている最中、村人が入ってきて説明する。


「そうですか、行きます」


 ピクリと不安そうな顔をしたシスターさんは静かに目を瞑ってから、村人の後ろについていく。

 僕は言われるまま、食堂の清掃に精を出していた。


 翌日

 村の仕事を終えた僕は、教会に保護された子供達と一緒に庭で遊んでいた。

 ここでは親を失った子供達が、それはもう一杯いた。

 なんでも勇者軍と呼ばれる人間が、無慈悲に無抵抗の魔物の住む村や町に来て虐殺をするのだとか。

 この魔王領と言う地はそんな危険な場所であるらしい。

 法律で罰せられるにも関わらず、違反するものが後を絶たない。

 と、シスターさんが嘆いていた。

 どうしてこんな危険な場所に住んでいるのかと言うと代々、この地に住む魔物はここ以外に住む場所が無い。

 もちろん、別の地に行く方法がないわけではないが、治安や戸籍など難しい問題が一杯あるそうなのだ。

 しかも魔王領から一歩でも外に出ると魔物は人間と言う生き物に変身してしまう。

 それはとても恐ろしいことなのだとシスターさんや村の人々は言っていた。


「スライムさん」

「なあに?」


 そんな中、僕には友達が一杯出来た。

 教会で一緒になった子供達。

 最初、みんなは僕を大人か子供かどちらの扱いにしようか困っていたけれど、僕の喋り方やキョロキョロする態度から子供として認識している。

 スライムの中では平均的な大きさではあるけど他の種族からすると小さいのは変わらないからね。

 僕に話しかけてきた子は、魔アリクイの女の子。みんなより少し年上で面倒見のよい魔物だ。


「雛ちゃんがもう直ぐ起きるよ」

「もうそんな時間?」

「うん」


 雛ちゃんとは僕が来る二週間前に保護された鳥類魔物の雛の子だ。

 何の雛か、保護された状態ではわからなかったから、雛ちゃんと命名された。

 大きさは僕の五分の一くらいの本当に小さな子。

 生まれて数日くらい、巣から落ちたのかと保護した魔物は辺りを調べたが、そんなものは無かったそうだ。

 大きさから見てそんなに大きな鳥の魔物では無い。

 だけど、応答は少し出来るので動物では無いそうだ。

 ポヨンポヨンと跳ねながら僕は、雛ちゃんがお昼寝しているベッドに行った。


「ん~……」


 目を覚ました雛ちゃんは何度も瞬きしながら僕をキョロキョロと探す。


「起きた?」

「オキタオキタ!」


 僕が顔を覗かせると元気に跳ねながら僕の頭に飛び乗る。


「プニンプニン!」


 僕が始めて教会に来た日、雛ちゃんは僕を見るなり頭に飛び乗り、スライムボディの僕を相当気に入ったそうだ。

 それまでは、よく泣く子で、両親はどこかに行っちゃったのかとか、自分は捨てられたと騒ぐ子だったらしい。

 だけど、僕を気に入ってから泣かなくなった。

 その結果、僕の頭の上から寝る時以外は離れず、僕が居なくなると泣き出すようになってしまった。


「じゃあ、今日も遊びに行こうか」

「イコウカ、イコウカ!」


 雛ちゃんは僕に乗っているのが相当お気に入りで片時も離れたがらない子だ。

 自然と僕も懐いてくれる子がいると嬉しくなり、教会の子たちと打ち解けた。

 教会は様々な魔物の子が居る。数字を覚えた僕でも何人いるか把握しきれない。

 小柄な僕からしたら見上げるような魔物でも、子供であるのだからすごいと感心した。

 元々、この辺境の村はそんな子供達が大人になって出来た場所なのだ。

 シスターさんはそんな子達を、嫌な顔一つせず受け入れて様々なことを教えてくれる。

 僕は雛ちゃんを連れて、庭で遊び始めた。

 そんな中、僕たちの中で一匹、ぽつんと端のほうで大人しくしている子がいた。

 角ウサギという種類の魔物の子だ。


「遊ばないの?」

「!?」


 ビクッと角ウサギちゃんは話しかけられたことに怯えたように振り向く。


「アソバナイ、アソバナイ?」

「……」


 僕が雛ちゃんを頭に乗せて話しかけると角ウサギちゃんは頭をブンブンと振るった。


「いい……」


 他人を受け入れない。そんな空気を纏わせた子だ。

 瞳には、計り知れない何かを宿しているのを僕は感じ取る。


「無理強いはしないけど……」

「うん、いいの……」


 庭から外をボーっと眺める角ウサギちゃん。一体何が見えているのだろうか。


「スライムちゃん! 遊ばないの?」

「あ、ごめーん!」


 僕はみんなの元の戻り、角ウサギちゃんの方に目を向ける。


「あの子、目の前でお母さんと兄弟が殺されちゃったんだって」


 魔アリクイちゃんが小声で教えてくれた。


「そう、だったんだ」


 この村にいる魔物の大半がそのような経験をした者達で構成されている。境遇が同じだからか、傷が癒えるまで放っていて欲しい気持ちを察するそうだ。

 僕は……どうなのだろう。記憶喪失だから、その気持ちをいまいち理解出来なかった。


 △


 復讐はすべきではない。シスターさんは村や教会の魔物達に言い続けている。

 この集落は行き過ぎた正義によって居場所を失った魔物達が集まって暮らしているらしい。

 みんなの居場所を奪った存在は人間の殺戮者が原因なのだとか。

 人間とはどんな生き物なのか、魔物とはどんな生き物なのか、動物とはなんなのか。

 この違いを僕は理解できていなかった。


「――では――いずれ――」

「はい――まだ――」


 医務室で苦しんでいる魔物とシスターさんの会話を僕は通りかかった時に聞こえてしまった。

 部屋から出てきたシスターさんは複雑な顔で僕と目が合う。


「どうしたのですか?」

「いえ、偶然通りかかっただけですけど……」


 なにやら不穏な空気を感じた。妙に胸のどこかがざわめく様な。

 角ウサギちゃんがどうして外を見続けているのかという、心当たりがパチリと組み合わさるような、そんな予感。


「そうそう、スライムの村からの手紙ですが、どうやら遅れているようです」

「そうなのですか?」

「ソウナノデス? ソウナノデス?」


 あれから数日、何時まで経っても僕の引き取り手が来ないので、不安になっていた所だった。


「ええ、もうしばらくはここでゆっくりしていてください」

「はい」

「ハイハイ」

「ふふ、スライムさんがきたお陰で皆さんが楽しそうにしてますよ」


 僕を呼ぶ子供達の声にシスターさんは微笑む。


「そんな……」

「あら? みんな言ってますよ、スライムちゃんに教えるのが楽しいって」


 コテっと僕は雛ちゃんを落としかけた。


「ウワ!」

「あはは……」

「雛ちゃんもそうよね」

「ソウヨネ! ソウヨネ!」


 雛ちゃんは全身を使って僕と一緒に居るのが楽しいとアピールする。


「なんでもそつなくこなせるのがスライムさんの凄い所ですよね」

「そう、なのでしょうか……?」


 僕は自分が何なのかを理解できない。

 言葉も覚え、文字の読み書きも、魔法の使い方も色々と学んでいる。

 簡単な火の魔法は使えるし疲れもあまり無い。けれど、その先がまったく使えない。


「僕は、何か……みんなと自分が違うのではないかと思うのです。シスターさんは何か……知りませんか?」


 スライムと言う魔物はこういった特徴を持っているの?

 僕だけが違うのか、スライム全てがそうなのか、僕には分からない事だらけだ。


「正直に話してよいですか?」

「はい」


 言葉を選んで教えてくれるシスターさんが険しい顔で僕に問う。だから二つ返事で頷いた。


「私が知るスライムという種族は……正直な話で言いますと、弱い種族です。上位種となると話は別ですがスライムさんの同族は、か弱い」

「そう、ですか……」

「ですがここには同じくらい弱い種族の子が沢山いますよ」


 雛ちゃんや魔アリクイちゃんに角ウサギちゃんを思い出す。

 なんていうか、隊長やシスターさんや村の魔物たちと比べてあまり強そうじゃない。


「そもそも強さとは魔力の高さですか? 腕力の高さ? 空を飛べる? 足が速い?」


 シスターさんは次々と僕に疑問を投げかける。


「確かにスライムさんは私の知るスライムの中では群を抜いて有能ですよ。ですがそれが強さとは結びつきません」

「違うのですか?」

「ええ、スライムさんはもしかしたら人一倍努力しないと伸びないのかもしれません。ですが強さは別の所にあるのです。どんなに体を鍛え、魔力を上げたとしても本当の強さではありません」

「本当の強さ? どうしたらその強さが手に入るのですか?」


 シスターさんは首を振った。

 シスターさんは僕の頬を撫でながら優しく微笑む。


「急ぐ必要は無いのです。今は少しずつ……そう、一歩ずつ確実に学びましょう。努力は必ず身になります。魔法だって徐々に覚えていけば良いのです」

「……はい」


 シスターさんは僕に道を教えてくれていたのだと今にしてみれば思う。

 この時の僕もみんなと一緒に自分を磨いていけば良いのだと確信していた。


 △


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