【01-Ⅱ】
あたしには、母親がいない。
いや、いないと言っていいのだろうか……。
正確には、7年前のあたしの誕生日に行方不明になった。
警察は、色々と調べたようだったけど……結局未だ手がかりは何もない。
生きているのかも、死んでいるのかも分からない状態がずっと続いている。
まぁ……生きている可能性は少ないと、警察の人間は言っていたが。
何故だか、中学生になったあたしはそれを悲しいとは思えなかった。
7年前のあの日、一生分の涙を流したせいだろうか。
今はもう、涙が涸れ果ててしまった。
(……ごめんね、母さん)
心中で母親に謝罪の意を伝える。
でも、きっと母さんはみじんにも気にしないんだろうなぁ……
笑って許しそうだ。
母親がいないのは……やっぱり少し寂しいが、あたしには
母親代わりの女性がいる。
その人のお陰で、ずいぶんと気持ちが楽になれた。
今や、「第二の母」と言ってもいいほど、実の母親の様だった。
着替えをしながら思い出に浸っていると、下の階からその
「第二の母」の声が聞こえてきた。
「梨乃ー!!準備して降りてきなー!」
今日も変わらず、お元気なことで。
「はーい!今行くー!!」
あたしもか。