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アリ

作者: 鶏もも肉

アリっているじゃないですか。蟻。黒くてちっちゃいあの虫。潰したことあります? アリ。あ、手で、ですよ。手で、ええ。

僕はありますよ。手でつまんでみるじゃないですか。で、潰すじゃないですか。

え? それだけですよ? ええ、それだけ。


もう少し話しましょうか。あれって潰す時、若干の硬質な抵抗を伴って潰れますよね、アリ。ええ。

擬音で表すならパキ、かな。いや、パキャ、かも。ペキョ?

夕焼けの色を真実伝えようとすれば夕焼けの色としか表現できないように、知人だと思って声をかけたら全然知らない人だった時の気持ちを真実伝えようとすれば知人だと思って声をかけたら全然知らない人だった時の気持ちとしか表現できないように、アリを潰した時の感触を真実伝えようとすればアリを潰した時の感触としか表現できませんね、間違いありません。

今は公園などでしか見れなくなった舗装されてない地面を見ると巣がありますね。アリの巣。あれの穴にね、こう、小枝を突っ込んでみるんですよ。

そうすると当然の帰結としてあわてたアリたちがわらわらと這い出てきますよね。ああそこ、踏んじゃだめですよ。踏んだら手で潰せませんからね。ええ。

その中の一匹をひょいとつまんでみます。

あ、そうそう、アリってどんな高さから落としても潰れないんですって。すごいですよね。つまんだアリを自分が成し得る文字通り最高の高度から落としてみるという試みも有意義ですね。

まぁそれだけですけどね、ええ。

つまんだアリをよく見てみるのもいいですし、つまんだらすぐに潰してアリを潰した時の感触としか表現できない感触を体験するのもいいでしょう。

せっかくなんでよく見てみましょうか。

逃げようと六肢を必死になって動かしているのがわかりましたか? 時折アゴでかみついてきたりもします。大概は皮膚で止まりますが、大きめのアリだとかまれると痛いこともあります。

それから頭部、胸部、腹部がワキワキと蠢いているのがわかると思います。全身黒で統一された体はなかなか機能的観点から美しく見えます。

それを潰します。それで終わり。それだけ。

別に僕はアリを潰すのが好きなわけじゃありませんよ、断じて、ええ。

でも潰れましたね。アリは潰れました。黒くてちっちゃい虫は潰れましたね。

覚えました? 何ってアリを潰した時の感触をですよ。覚えてない? それはいけない。もう一度潰しましょう。

ほら、見当たらなかったら巣を探してください。そして小枝でほじくってみるんです。あわてて出てきたアリの一匹をひょいとつまむんです。いいですか?

では潰してください。あ、その前にアリをよく見るのも手ですよ。

潰せましたか? はい、それで終わりです。終わりました。

感触ですか? 覚えた? はぁ、よかったじゃないですか、ええ。

でもアリは潰れましたよ。

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